再エネ発電は高いのか:サプライチェーンの視点
再エネは国産、環境、産業創造等多くの価値がある。一方で、コストが高いと言われ、主力の風力・太陽光は出力が変動するという課題がある。コストについては、海外では急激な普及を背景に顕著に低下している。風力は火力並かそれ以下、太陽光も家庭用電気料金に伍する程度に下がった国は多い。
しかし、日本では相変わらず高コストの印象が強い。推進策である固定価格買取制度の不適切な運用もあり、下がる前のタリフに太陽光事業が殺到して将来負担は確かに膨らむが、一方で、普及によりコストは下がっている(タリフ:42円→27円)。いずれにしても、太陽光は、再エネは高いという印象操作に利用されている。
今回行われた発電コスト試算では、再エネは、世界のトレンドとは逆に、2011年の試算よりも高くなった。支援費用、出力調整に要する費用、インフラ負担等コストに含めるべきか議論を要する点が悉くコストと見做された。特に出力が変動し賦存量に偏りのある風力は、大きく数値を上げたが、これは象徴的である。
北海道や東北から首都圏への連系線建設について、風力のコストとしての試算が出された。送電線のようなネットワーク型インフラの費用は、通常は利用者(消費者)が負担する。少なくともだれが負担すべきかについては大きな論争となる。
サプライチェーンの視点から考えてみる。既存大規模電源である原子力や火力(石油、天然ガス、石炭)は、海外の山元から国内の消費者に届けられるまで、膨大な投資と距離・時間を要する。これの整備に際しては、累積的に巨額の投資と政策支援が行われている。再エネのサプライチェーンは国内の送配電網(だけ)であり、既に整備されている。北海道は中東よりは近い。
再エネ普及のために送電線を増強する面があることは否定しないが、既存資源のサプライチェーン整備に比べれば特に強調されるものではない。シーレーン防衛に要する費用は、セキュリティ上重要との理由でコストに含まれていない。再エネは純国産資源である。