自然エネルギー100%への道を進もう
-気候変動の危機を回避する最も確実な選択-
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昨年末のCOP21で採択された気候変動対策の新たな国際的な枠組み、「パリ協定」は、今世紀の後半には、世界が「脱化石燃料」の時代に入るべきことを国際的な合意として定めた。気候変動の危機回避のためには、二酸化炭素を排出する化石燃料を燃やし続けるわけにはいかない。
COP21が開催される2,3年前から、世界では、一方で化石燃料投資からの撤退を進める「ダイベストメント」の動きが広がり、他方で自然エネルギーによって100%のエネルギーをまかなおうという主張が強まってきた。「パリ協定」は、環境NGOや先進的な企業、自治体などが進めてきた、こうした動きが国際的に認知され、世界全体でめざすべき方向として確認されたことを意味する、と言って間違いではないだろう。
もちろん、「脱化石燃料のためには、原子力の活用もあるし、火力発電からの排出ガスを地中に封じ込めるCCSもある」、という議論も存在する。しかしこれらの技術は、安全性の確立、最終処分地・貯蔵場所の確保という点で未解決の課題を抱え、コスト高という弱点からも逃れられない。
これに対して自然エネルギーは、安全安心の資源であることに加え、そのコストはますます安価になってきている。自然エネルギー財団のパンフレット「やっぱり自然エネルギー!」などの中で紹介しているので、ここでは繰り返さないが、自然エネルギーが火力発電よりも安くなってきていることは、最近ではようやく日本の主要なメディアでも報道されるようになってきた。
日本でもアジアや世界の多くの国々でも、もちろん今すぐ自然エネルギーで全てのエネルギーを供給することはできない。電力供給に占める自然エネルギーのシェアを確実に速やかに増やし、熱や燃料も化石燃料からの転換を進める移行過程の戦略を確立することが必要だ。
自然エネルギー100%への道筋の中では、エネルギー効率化を徹底し、必要な消費量を減らすことも重要だ。日本でも、工場のボイラー配管などの断熱が老朽化で劣化し、製造部門のエネルギー消費の10%が失われている、というような無駄が放置されている。
二酸化炭素排出量の多い石炭火力などから自然エネルギーへの転換を進めるためには、排出量に応じて「炭素価格」をつけるカーボンプライシングを導入することも必要だ。地球環境を破壊する人為的な二酸化炭素の排出には、汚染者負担原則(PPP)が適用されるべきだ。
自然エネルギー100%への移行戦略を明確にし、その一つの手段として「炭素価格」を設定することは、低炭素・脱炭素技術の開発を促進し、新たな経済成長を可能にするだろう。
欧米では、国や地域全体の自然エネルギー100%を牽引する取り組みとして、社会的な影響力のある有力企業が、企業活動で使う電力全てを自然エネルギーに転換する動きも広がっている。こうした取り組みは日本でもアジアでも広がっていく必要がある。
2015年末にようやく成立した「パリ協定」を受け、2016年は自然エネルギー100%への道を確実に歩み始める年にしなければならない。