日本も「静かなる風力発電革命」の恩恵を受けるべき
今、世界では「静かなる風力発電革命」[1]が起こりつつある。非常に高い設備利用率を実現できる新型風力発電機が商用化され、低風速地域でも洋上風力発電にひけをとらない利用率が得られるようになってきたのだ。
新型風力発電機を使うと、さまざまなメリットが生まれる。
- 目標となる導入量(GW)当たりの年間発電量(TWh)が増える。逆に言えば、年間発電量(TWh/年)の目標を達成するために必要な導入量(GW)が少なくなるため、現地に新設・増設する送電網も少なくて済む。
- 新たな陸上風力発電事業を開発できる場所が、日本でも大幅に増える。この新型風力発電機が優れた発電性能を発揮できるのは、ハブ(3枚のブレードの連結部)の高さにおける年間平均風速が5~6 m/sから7.5 m/sの場合である。このような条件を満たす場所は、電力消費地域の近くにも多く、農家や協同組合、地域社会からの投資も集めやすくなる。
- 高風速地域向けに最適化された従来の風力発電機と比べて、低風速地域向けはコストや固定買取価格を低く抑えることができる。
- 従来の風力発電機より全負荷相当運転時間がはるかに長いため、風力を電力系統に導入しやすくなる。
主な風力発電市場は、既にこの革命の恩恵を受けている。中国、欧州、米国では、いまや高風速地域より中・低風速地域に設置された風力発電機のほうが多い。また、主要な風力発電機メーカー各社は、すべて新型機を販売している。そのうち一社は、日本の環境で高利用率を得るために設計された特別仕様品を、既に東京で発表した。台風、地震、雷といった日本特有の条件にも強く、標準的な国際仕様を上回る製品である。[2]に示す予備的経済分析によると、その発電コスト(kWh)は日本市場で大きな強みになりそうだ。
自然エネルギーによる発電については、各国が野心的かつ現実的な目標を設定し、実行に移している。このような国々ではあらゆる自然エネルギー源を網羅する方針や施策を掲げ、とりわけ陸上風力と太陽光に関しては、意欲的で無理がなくバランスのとれた組み合わせを追求している。日本もこうした方針や施策を見習って、新型風力発電機の追い風となる市場規制やインセンティブ(例:進化版の固定価格買取制度など)を採用し、「静かなる風力発電革命」の恩恵を受けてはどうだろうか?
[1]「『静かなる風力発電革命』の分析および大規模展開シナリオのもと恩恵を受けるための提案」、2014年6月発行 世界風力エネルギー協会季刊報第2号。
http://wwindea.org/webimages/WWEA-QB-2-20140805.pdfからダウンロード可。
[2]「静かなる陸上風力発電革命は日本に上陸するのか?日本特有の環境向けに設計された新型風力発電機の技術的・経済的潜在能力の分析」、2014年3月3日発行。
www.renewablesinternational.net/silent-wind-revolution-in-japan/150/537/77257/からダウンロード可。