世界の自然エネルギー発電コスト:陸上風力は6セント/kWhに低下
自然エネルギーの普及を世界規模で推進するIRENA(International Renewable Energy Agency)が最新レポート「自然エネルギーの発電コスト2017年」を公表した(2018年1月13日付)。自然エネルギーの発電コストが世界全体で低下を続けて、すでに火力発電や原子力発電と比べて十分な競争力があることをデータで示している。
世界全体で加重平均した自然エネルギーの発電コストを種別に見ると、2017年に新たに運転を開始した水力発電では5セント/kWh(キロワット時)だった。陸上風力は6セント/kWh、バイオエネルギーと地熱は7セント/kWhで、いずれの発電方法でも化石燃料による火力発電のコスト(5~17セント/kWh)と比べて同等か低い水準になっている。
太陽光発電のコストも急速に低下して、2010年の36セント/kWhから2017年には10セント/kWhへ、実に73%も減少した。他の自然エネルギーと同様に、火力発電に対して十分にコスト競争力があり、発展途上国における原子力発電のコストよりも低い。
世界の自然エネルギー発電コスト(事業用の均等化発電コスト)
自然エネルギーの発電コストが低下している主な要因として、IRENAのレポートでは3つの点を挙げている。第1に技術の改善がある。陸上風力の場合には累積の導入容量が2倍になると投資コストが9%低下して、発電コストが15%低下する。いわゆる“学習曲線“の効果だ。
第2に市場競争による調達が拡大してきた。2016年から2017年にかけて、世界各地で陸上風力と太陽光の入札が実施されて、多くの国では3セント/kWh前後の低価格で電力が取り引きされるようになった。背景には、自然エネルギーを後押しする政策がある。そうした動きに伴う第3の要因として、経験豊富な発電事業者による国際的な競争が進んだ。
IRENAのレポートでは将来の明るい見通しも示している。「すでに商用段階にある自然エネルギーの発電コストは方法の違いにかかわらず、2020年までには化石燃料による火力発電と同等になるだろう。しかも大半は火力発電の中でも最低水準のケースに匹敵する」。具体的には、陸上風力は5セント/kWhに、太陽光は6セント/kWhに、集光型の太陽熱発電(Concentrating solar power)と洋上風力は6~10セント/kWhになると予測している。