提言ソーラーシェアリングの規制緩和を、新たな農業の成功事例を増やすために

2026年3月5日

 日本の農業を発展させる期待が大きいソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に対して、政府が規制を強化しようとしている。ソーラーシェアリングは農地の上部に太陽光パネルを設置して、発電しながら農作物を栽培する新しいスタイルの農業である。農業者の高齢化と農業収入の低迷によって農作物を栽培しない農地(耕作放棄地)が全国で増え続けている状況を改善する有効な手段になる。それにもかかわらず、政府は推進よりも規制を強化する方針だ。規制の内容は実際のソーラーシェアリングの状況を反映しておらず、新しい農業の芽をつみかねない。実態に合わせた最低限の規制にとどめるべきで、規制よりも推進策に注力することが日本の農業の発展に資する。

政府の規制案:遮光率30%未満に制限、米・麦・大豆を推奨

 農林水産省は2026年1月下旬に「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」を公表した。ソーラーシェアリングを実践する農業者や学識者で構成する検討会の議論をもとに取りまとめたものだ。検討会では主要な論点に関して意見が分かれたが、公表した案では規制を強化する内容が盛り込まれた(図1)。

 図1 農林水産省の「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」

出典:農林水産省「営農型太陽光発電について」(2026年1月)から抜粋

 ソーラーシェアリングの拡大に向けて、特に影響が大きい点は2つある。1つは太陽光パネルが農地の上部を覆う比率「遮光率」を制限することだ。遮光率は通常、農地の上部から見て、農地に対して太陽光パネルが占める面積の比率で表す。農林水産省は遮光率を30%未満に制限する案を提示した。もう1つは栽培する農作物として、米・麦・大豆を推奨する点だ。

 この2つの規制はソーラーシェアリングの実態から大きくかけ離れていると言わざるを得ない。自然エネルギー財団が1月30日に開催した「シンポジウム:実践者が語る、ソーラーシェアリングの価値」では、全国12カ所の成功事例を当事者が紹介した。米・麦・大豆のほかに、さつまいもやマコモダケといった野菜、ぶどうやブルーベリーなどの果物、さらに緑茶やコーヒーまで、多彩な農作物が太陽光パネルの下で、しかも高い品質で作られている。

 たとえば沖縄県の名護市では、遮光率51%の状態で、無農薬でコーヒーを生産できる(写真1)。コーヒーは半日陰を好むため、太陽光パネルが適度に日射量を抑えることで生育を促す。沖縄産のコーヒーは100グラムあたり5000円以上の価格で取引されるほど人気が高く、沖縄の新たな産業として発展する期待がある。温暖化の影響で世界全体では2050年までにコーヒーの生産量が半減するという予測もある。ソーラーシェアリングで国産のコーヒーを生産できる価値は大きい。しかし遮光率30%未満の制限が設けられると、コーヒーの生産を拡大することがむずかしくなってしまう。

写真1 沖縄県名護市のソーラーシェアリングによるコーヒー農園

出典:Ripple沖縄

 コーヒー以外の農作物でも、遮光率30%以上で生育する農作物は数多くある。千葉県の匝瑳市では、土壌などの条件が良くない耕作放棄地を活用して、麦や大豆を遮光率30%以上で栽培している。全国各地を見れば、野菜や果物を遮光率30%以上で栽培している事例が大半だ。日射量が必要な米の場合でも、垂直設置型の太陽光パネルを採用したり、太陽光パネルの傾斜を季節によって変えたりする方法で、十分な日射量を確保して生産に取り組んでいる事例がある。そうした創意工夫がソーラーシェアリングを発展させるうえで極めて重要になる。過剰な規制は農業者の創意工夫の可能性を狭める結果になりかねない。

 農林水産省が遮光率30%未満の制限を検討する根拠の1つになったのは、東京大学大学院農学生命科学研究科の加藤洋一郎教授らによる研究グループが実施したフィールド実験の結果である。茨城県の筑西市にある低地の水田で2018年から2023年まで6年間にわたって実施した。太陽光パネルを設置した区域と設置していない区域に分けて、米の収量や品質を比較している。太陽光パネルによる遮光率は平均27%である(季節に合わせて変更)。米の品種は2種類を年によって選別して栽培した。太陽光パネルを設置した区域の米の収量は平均で23%(8~35%)少なかった。特に降水量が少ない年で差が大きくなった。品質面でも未成熟の米粒が増えたほか、玄米に含まれるタンパク質などの含有量が増加して食味(食べた時に感じるおいしさ)が低下する結果になった。

 このフィールド実験では温度や日射量を測定するセンサー類と気象データのほか、粒の状態や食味を測定する機器を使って、綿密な分析を実施している。信頼性の高い実験結果と言える。ただし特定の2品種を対象に実施したものである。いずれも関東を中心に栽培されている品種で、日射量の減少に強い品種ではない。農作物は品種によって栽培の適性が異なる。北海道や東北では、低温で日射量が少なくても生育できる米を栽培している。ソーラーシェアリングに適した品種や栽培方法を採用すれば、十分な収量と品質を確保することは可能だろう。そうした対策を率先して広めていくことも国や自治体の役割だ。遮光率30%未満が重要な指標になるのかを含めて、地域や品種を変えて検証する必要がある。

求められる推進策:農地の一時転用許可の簡素化など

 農林水産省がソーラーシェアリングに対する規制を強化する背景には、農作物の収量や品質に問題がある事例が増えていることに対する懸念がある。同省の農林振興局が2023年度末(令和5年度末)の実績をもとに、営農に支障が生じた件数と内容を集計した。全国で5167件のソーラーシェアリングの24%で営農に支障があったと報告されている(図2)。そのうち71%は営農者の栽培管理などが不適切だったことが原因で、面積あたりの収量(単収)が地域の平均と比べて2割以上減少した、作物の生育状況が不良だった、といった内容である。ただし、この統計では不適切な状況が詳しくわからない。

図2 ソーラーシェアリングによる営農への支障

出典:農林水産省「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和5年度末現在)」(2025年12月)から抜粋

 ソーラーシェアリングの多くは、農作物を栽培していなかった耕作放棄地で実施している。耕作放棄地になった理由の中には、もともと農作物の栽培に適していない場所で、収量や品質を十分に確保できず、安定した収入を得られなかったことがある。耕作放棄地は2015年の時点で全国の農地の10%近くに拡大した。農林水産省は以降の統計では耕作放棄地(農家による自主申告)を集計の対象から除外したため、その後の状況は不明である。現在の統計では、耕作を放棄したために荒廃した状態の農地(荒廃農地)を市町村の農業委員会が現地調査で集計している。2024年3月末の時点で荒廃農地の面積は全国で25万7000ヘクタール(1ヘクタール=1万平方メートル)にのぼり、農地全体の約6%を占める。いずれの統計を見ても、農作物を栽培していない農地が全国各地に広がっている。

 荒廃農地を活用してソーラーシェアリングを実施すれば、農地を再生して農作物の栽培を再開できる。太陽光発電を通じて農業者の収入を安定させる効果がある。新規の農業者を増やせる期待も大きい。日射量が減る環境で農作物の収量と品質を確保することは簡単ではないが、試行錯誤を続けて改善している事例は数多くある。たとえ開始当初に営農に支障が生じたとしても、新たな農業に挑戦するソーラーシェアリングでは許容すべきだろう。改善の取り組みが進捗しない場合に限って、厳しく規制することが望ましい。

 ソーラーシェアリングには現在でも厳しい要件がある。農地に太陽光発電設備を設置するためには、農地の一時転用許可が必要になる(図3)。申請には営農計画書や収支計画書など複数の書類を市町村の農業委員会に提出しなくてはならない。すべての書類を合わせると膨大なページ数になり、申請にかかる時間と労力は大きい。このうち営農計画書には農作物の作付面積や単収の見込みなどを記載する必要がある。地域内で栽培している同じ作物の平均的な単収と比較して、2割以上の減収にならないように求められる。地域内で同じ作物を栽培していない場合や、ソーラーシェアリングで栽培した前例がない場合には、許可を得ることがむずかしくなる。

図3 農地の一時転用許可の要件

出典:農林水産省「営農型太陽光発電について」(2026年1月)から抜粋

 一時転用許可を受けてソーラーシェアリングを開始して以降も、農作物の生産状況を年に1回、市町村の農業委員会に報告する必要がある。地域の平均と比べて単収が2割以上減少していると、「営農に支障あり」とみなされて、現地調査を受けることになる。改善措置に従わない場合には、勧告を受けたのちに、許可の取り消しや原状回復命令などの措置を受ける。設備を撤去して、ソーラーシェアリングを終了しなくてはならない。

 一時転用許可の期間は通常で3年、認定を受けた農業者が営農する場合などは10年である。それぞれ期間終了後に更新が必要になる。太陽光設備の投資回収には15年程度かかる。特にソーラーシェアリングでは支柱などで追加のコストが必要になり、投資回収期間が長くなる。一時転用許可の更新・継続が確実ではないことから、事業者は金融機関などから資金を調達するうえで不利になる。

 以上のようにソーラーシェアリングを開始して継続するには、さまざまな制約が設けられている。当然ながら農地の乱用を防止する必要はあるが、もっと障壁を低くして、新規の農業者にも取り組みやすい制度に見直すべきではないか。明らかに農業を軽視している事例があれば、農業委員会の現地調査で把握できる。農地の一部でしか農作物を栽培していない、農地が荒れた状態のままになっている、単収が異常に少ない、といった場合に限って、一時転用許可を取り消す措置を講ずれば、ソーラーシェアリングによる農地の乱用を防げるはずだ。

 一時転用許可の手続きを簡素化すること(提出書類の削減、営農要件の緩和など)によって、ソーラーシェアリングに挑戦する新規の農業者を増やすことができる。農業委員会の手間が大幅に減って、改善指導や乱用防止のための現地調査に十分な時間をかけられるようになる。現在は市町村ごとに許可の判断が異なり、農業者を悩ませている。手続きを簡素化すれば、市町村ごとの差も生まれにくくなる。

 政府は農業の振興と地域の活性化のために、ソーラーシェアリングを拡大する政策を強力に推進すべきである。現在の規制を緩和するとともに、経済的・技術的な支援を含めて成功事例を広げることに重点を置くことが望まれる。ソーラーシェアリングを拡大するために必要な主な政策を以下に挙げる。

・農地の一時転用許可の簡素化
・不適切な事例の要件を限定
・栽培実績に関するデータベースの構築
・FIT/FIP(固定価格買取制度/フィードインプレミアム)の適用
・金融機関と連携した資金援助
・大学や高校を対象にした実習プログラム支援

 ソーラーシェアリングの事業者で構成する「ソーラーシェアリング推進連盟」も、農林水産省の規制案に懸念を表明している。案が公表された直後の2月上旬に、幅広い関係者を集めて検討会を開催した。当日は農林水産省の担当部門から現在の案に関する説明があり、事業者の意見を聞いて指針をとりまとめる姿勢を示した。推進連盟は検討会の議論をもとに政府の案に対する提言をまとめて、3月下旬をめどに農林水産省に提出する方針だ。遮光率や収量で一律に規制するのではなく、地域との連携などを含めて複数の指標で事例を評価する「総合得点評価制度」を提案する見込みである。

 さまざまな事業者が全国各地でソーラーシェアリングに意欲的に挑戦できる環境を国や自治体が率先して整備すれば、新たな農業の可能性を切り開き、地域の農業の再生と脱炭素社会の構築につながっていく。

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[参考文献]
農林水産省:営農型太陽光発電について(2026年1月)
東京大学:食料生産とエネルギー生産両立のための営農型太陽光発電水田設計(2025年6月)
農林水産省:営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和5年度末現在)(2025年12月)
ソーラーシェアリング推進連盟:拡大検討会報告書(2026年2月)

[関連情報]
報告書:  ソーラーシェアリングで農業を再生:太陽光のエネルギーで地方創生へ(2025年3月)
シンポジウム: 実践者が語る、ソーラーシェアリングの価値(2026年1月)
ケーススタディ「 ソーラーシェアリング最前線」:
 (1)神奈川県相模原市「さがみこファーム」:ブルーベリーを栽培、観光農園で地域交流(2025年4月)
 (2)石川県白山市「吉田酒造店」:酒米を栽培、雪国で垂直型の太陽光パネル(2025年7月)
 (3)山形県米沢市「みつばち発電所」:可動式の太陽光パネルで1等米を収穫(2025年9月)

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织