公益財団法人 自然エネルギー財団は本日、「ソーラーシェアリングで農業を再生:太陽光のエネルギーで地方創生へ」を発行しました。
日本の国土の約12%を占める農地のうち、農作物を栽培していない耕作放棄地が全国で拡大して、すでに1割近くに達しています。農業従事者の高齢化に伴って、今後ますます耕作放棄地が増えていく見通しです。放置されたままの耕作放棄地の増加は、地域の荒廃につながりかねません。国を挙げて抜本的な対策に取り組む必要があります。農地で太陽光発電を実施して農業を再生する手段が「ソーラーシェアリング」です。農地の上部に太陽光パネルを設置して、その下で農作物を栽培します。自然の恵みである太陽光を農業と発電の両方に利用することから、ソーラーシェアリングと呼びます。
実際にソーラーシェアリングで成果を上げる地域が全国で増えています。代表的な事例は千葉県の匝瑳市(そうさし)です。すでに40カ所の農地でソーラーシェアリングを実施しています。このほかにも北海道から沖縄県まで、地域の特性を生かして、さまざまな種類の農作物を栽培する事例が広がってきました。先行して取り組んでいる事業者は、太陽光パネルの下で栽培する農作物の品質向上に取り組み、農作物の販売方法を含めて新しい事業モデルを構築し、地域とも連携を図り、農作物の栽培に適した太陽光発電設備の導入方法に工夫をこらしています。太陽光パネルが夏に直射日光を遮ることによって、農作物の日焼けを防ぐ効果も見られます。
本レポートでは、匝瑳市をはじめ全国各地のプロジェクトを現地で調査して、ソーラーシェアリングによる農業の再生に必要な4つの対策をまとめました。さらに事業者の声をもとに今後の導入拡大に向けた課題を明らかにするとともに、その解決策を提言します。ソーラーシェアリングは太陽光発電で地域の脱炭素化を促進するだけではなく、縮小を続ける日本の農業を再生するうえで重要な役割を果たします。自然エネルギーを活用して地方創生を実現する有効な手段になります。
<目次>
第1章 発電よりも農業を重視する匝瑳市のプロジェクト
市民が主導して40カ所の農地に展開
ソーラーシェアリングを拡大できた要因
今後の開発計画と主な課題
第2章 縮小する日本の農業、ソーラーシェアリングが増加
日本の農業の現状と課題
ソーラーシェアリングのための農地一時転用
膨大にある導入ポテンシャル
第3章 全国各地の先行事例に見る効果的な対策
対策1:栽培する農作物の価値を高める
対策2:持続可能な農業経営モデルを作り上げる
対策3:地域と連携を図り、新規就農者を増やす
対策4:農地に適した発電方法を工夫する
第4章 ソーラーシェアリングの拡大に向けた課題と提言
課題1:農地の一時転用許可に地域差がある
課題2:実証データやノウハウを共有できていない
課題3:国の推進策が不足している
参考事例