年頭コラム2022年、自然エネルギー拡大を更に加速し、産業の脱炭素化へ向かう年に

大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事

2022年1月1日

明けましておめでとうございます。

 昨年、2021年は、日本における自然エネルギー拡大が、新たな段階に入った年でした。改訂されたエネルギー基本計画では、2030年度の再生可能エネルギー電力目標は36~38%への引き上げにとどまりましたが、「この水準はキャップではなく、更なる高みを目指す」とする「再生可能エネルギー最優先の原則」が初めて明記されました。

 より明確に自然エネルギー拡大に向けた新しい動きを示したのは、企業や自治体です。企業が利用する電力を自ら調達する「コーポレートPPA」プロジェクトは、小売り・流通、製造業、IT、不動産、建設、金融など多くの業界に一気に広がっています。この手法を活用し、2030年までに使用電力の50%、100%を自然エネルギー電力でまかなうことを具体的に計画する企業も増えています。

 地方自治体で注目されるのは、建築物の新設にあたって太陽光発電の設置を義務付ける政策の導入が始まったことです。先鞭をつけたのは京都府・京都市ですが、東京都は住宅にまで対象を広げた義務付け制度の導入を進めています。

 年末、12月24日には日本で初めての洋上風力発電プロジェクト事業者選定の結果も公表されました。これからの自然エネルギー拡大に大きな役割を果たす洋上風力発電が本格的に開始されることになります。

 今年、必要なのは、これらの積極的な動きを更に加速することです。欧州では既に多くの国が、電力の40~50%以上を自然エネルギーで供給しています。昨年末に発足したドイツの新たな連立政権は、2030年の自然エネルギー電力目標を80%にまで引き上げました。

 欧州では、こうした自然エネルギー拡大の実績の上に立ち、グリーン水素の導入を進め、これによって鉄鋼業をはじめとする重化学工業の脱炭素でも世界をリードしようする動きが進んでいます。鉄は「産業のコメ」です。グリーンスティールの実現で後れをとれば、自動車を含め日本の工業製品は、脱炭素性能が問われる世界市場で劣位に立つことになります。

 岸田総理は、年末の会見で「気候変動問題は新しい資本主義の中心に位置する問題である」との認識を示しました。自然エネルギー拡大とエネルギー効率化を加速し、これを産業の脱炭素化に結びつけることこそ、排出ゼロが市場のルールとなる世界で日本経済の新たな成長を可能にする道です。

 国の省庁では、CCSの利用やアンモニア混焼などで、石炭火力を含む化石燃料発電を延命しようとする動きが進んでいます。回収しても国内では貯留できない大量の二酸化炭素を、東南アジア各国に輸出する目論見まで行われています。希少な財源と時間をこうした現実的な展望のない試みに費やすべきではありません。

 自然エネルギー財団は、自然エネルギーを中心とするエネルギー転換をさらに加速するとともに、産業の脱炭素化をめざす調査研究と政策提言を進めていきます。また、脱炭素社会の実現をめざす企業、自治体、NGOなどとの協働を深めていきます。

 本年も引き続きご支援、ご協力をいただけることをお願いいたします。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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