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九州エリアにおける太陽光・風力発電の出力抑制に関する分析結果と出力抑制電力量率の低減策(2020年版)出力抑制電力量率をさらに低減することができる

斉藤 哲夫 自然エネルギー財団 特任研究員

2020年7月22日

九州エリアでは、2018年10月から電力需要が少なく自然エネルギーが多く発電する日時に出力抑制が行われており、2019年度の出力抑制電力量率は4.0%であった。地域間連系線の活用量増加や出力抑制指令値の配信時刻を前日夕刻のみから、通信・制御装置を装備しているオンライン制御対象発電所へは当日朝の配信とすることなどにより、出力抑制電力量率の低減に向けた運用が行われてることがうかがえるが、出力抑制電力量率は、さらに低減することが可能である。

九州エリアの状況:2019年と2020年の導入設備容量と発電電力量

 九州エリアは、自然エネルギー、特に太陽光発電の導入が進んでいる。2019年3月末時点における太陽光発電と風力発電の導入設備容量は、太陽光が8,530MW、風力が510MW1であった。また、2020年3月末時点における設備容量は、それぞれ9,440MWと580MWであり、両者合計で1年間に980MW増加2し、発電電力量も増加 している(図1)。系統に接続済みの設備容量に、発電事業者が系統連系にかかわる接続契約を申込中、系統連系にかかわる接続検討を申込中の発電所設備容量を加えると、2020年3月末時点では、それぞれ16,060MW、13,740MWであり、2019年度の電力需要(6,329MW~15,733MW)に匹敵する(図2)。

【左】図1:太陽光発電と風力発電の設備容量と発電電力量  【右】図2:太陽光発電と風力発電の接続・申し込機状況と電力需要

九州エリアの状況:出力抑制の実績値とスポット市場価格

 2020年3月~5月は、2019年3月~5月に比して太陽光発電や風力発電の設備容量増加と、外出自粛などによる需要電力量の減少および1日間の電力需要パターン変化にともない、出力抑制日数が増加しスポット市場価格が0.01円/kWhの発生日数と発生時間数も増加している。(図3、表1)

【左】図3: 出力抑制実施日と0.01円/kWh発生日  【右】表1: エリア需要、出力抑制状況とスポット市場価格

九州エリアの状況:電力供給構成

 2020年3月~5月は、2019年3月~5月に比して太陽光発電と風力発電の設備容量増加にともない発電出力が増加している。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にともなう外出自粛などの影響による電力需要の減少と1日間の電力需要パターンの変化(休日パターンの日数増加)にともない出力抑制電力量が増加している。また、原子力発電が4基運転から3基運転や2基運転となった期間があることから原子力発電の発電電力量が減少している。2019年5月と2020年5月の電力供給状況を、図4と図5に示す。

【左】​図4:2019年5月の電力供給構成  【右】図5:2020年5月の電力供給構成(25日:緊急事態宣言解除)

九州エリアの状況:出力抑制制御方式の概要

 出力抑制制御は、電力需要から太陽光発電と風力発電の出力を差し引いた『残余需要』が、一定値以下になることが予測された場合に、周波数上昇抑制と電力品質維持を目的として太陽光と風力の出力を低減するものである。新エネルギー小委員会系統WGの資料34;から最小残余需要を逆算すると、軽負荷期の昼間最低電力需要が7,852MWの場合は4,632MW、さらに地域間連系線を1,350MW活用した場合は3,282MWとなる。但し、原子力発電は3,486MW(4基運転で設備利用率が84.2%)の想定であり、4基運転の場合の最小残余需要は上記の+654MW、3基運転の場合は-325MWとなる。また、揚水発電は定期点検などによる停止を考慮して2,242MW(全8台中7台運転)の想定であり、8台運転の場合は-340MWとなる。

 出力抑制指令は、通信回線・制御装置が装備された発電所(オンライン制御発電所)に対しては当日朝に、通信回線・制御装置が装備さておらず事業者が手動操作で発電停止を行う発電所(オフライン制御発電所)に対しては前日夕刻に配信される5(図6)。また、出力抑制制御方式には、エリア内の発電所を輪番で停止する方式(輪番停止)と、エリア内の全発電所の最大出力を定格出力の一定比率で制限する方式(最大出力制限)があり、現在適用中の輪番停止方式から、種々のメリットがある最大出力制限方式への移行 が進められつつある。

図6 :気象データ受信時刻と出力抑制指令配信時刻

九州エリアの状況:出力抑制実施時の電力需要と残余需要

 出力抑制の実績(5.4~12.4%)に対して、最小残余需要を系統WGにおける想定値と各月の実績による最小残余需要値として理想制御を行った場合の結果を図7と表2に示す。但し、最小残余需要は、余裕を見て電力需要増加分の5%を加算した。2020年4月における出力抑制電力量率の実績がケース-2より少ないのは、原子力発電が3基運転であり、かつ連系線活用量が多いことによる。また、各月の実績最小残余需要値を適用したケース-3では、出力抑制電力量率が2%程度であり、種々の低減策を実施することにより、出力抑制電力量率をこの値に近づけることが可能と言える。

【左】図7:出力抑制電力量と出力抑制電力量率  【右】表2:電力需要、最小残余需要と出力抑制電力量率

 2019年4月と2020年4月の実績を図8と図9に示す。最小残余需要(点線)以上の出力でも出力抑制(赤線)が行われているのは、①輪番停止方式のため出力抑制が不要な時間帯も抑制されている ②出力予測の誤差相当分を考慮した抑制指令値であることが、主な要因といえる。

【左】図8:2019年4月の電力需要と出力抑制電力および最小残余需要 【右】図9:2020年4月の電力需要と出力抑制電力および最小残余需要

出力抑制電力量率の低減策

 出力抑制電力量率の低減を図るには、『必要な時間帯のみ必要な電力を抑制する』ことが基本である。しかしながら実際には、太陽光や風力の出力予測のみならず電力需要の予測には誤差がある。また、特に発電所数と合計設備容量が大きい高圧連系と低圧連系の中小規模太陽光発電設備は、出力抑制指令の受信設備や制御設備の実装に制約がある。さらには一般発電設備の出力調整可能量や出力変更に必要な時間や起動・停止時間の制約もあるので、これらを考慮して検討を行う必要がある。

 文献6に示した、特別高圧の太陽光・風力発電所向け出力制御機能技術仕様書および高低圧の太陽光・風力発電所向け出力制御機能技術仕様書および伝送仕様書が公開され、出力抑制電力量率の低減に向けて対策が進められているが、ここではこれを含めて、以下に低減策を述べる。

・オンライン制御対象発電所の拡大
オンライン制御により、最新の出力予測結果に基づく出力抑制指令値の配信が可能となり、出力予測の誤差の影響を低減することが可能となる。
・エリア一括最大出力抑制方式の適用
基準出力予測値以上の出力となる状況になった場合でも、実出力は抑制指令値以下となるため、抑制指令値に予測の誤差相当分を含める必要がなく、事業者間の公平性も保つことが可能となる。
・出力予測精度の向上と予測更新周期の短縮
最新の数値予報モデル7の適用と各発電所の出力、日射、風速、風向、発電所状況(定期点検中など)などを出力予測システムへフィードバックすることにより予測精度の向上と予測更新周期の短縮が可能となる。
・出力抑制指令の更新・配信周期の短縮
太陽光や風力発電の出力予測および電力需要予測は、予測更新後数時間以内の精度が高い。従って、予測更新後数時間以内のデータを活用すべく30分毎に出力抑制指令値を更新・配信することにより適切な出力抑制を行うことが可能となる。
・グリッドコードの制定と適用
太陽光や風力発電が有している周波数調停率制御機能など多くの制御機能を活用することにより、地域間連系線の運用容量決定要因の一つである周波数安定性に関する制約の緩和に寄与するとともに、再生可能エネルギー電源が主力電源として電力品質維持に貢献することが可能となる。
・中長期を見据えた出力抑制電力量率の低減策
前項までに記した出力抑制電力量率の低減策は、比較的に短期間で実施・適用することが可能であるが、2030年や2050年を見据えた場合には、実現までに時間を要する以下の対策などが必要である。早急にさらなる低減策の検討を開始し、ロードマップの策定などを行うのが望ましい。
   -  中国九州間連系線の増強
   -  九州関西間の高圧直流連系線の新設
   -  ディマンドレスポンスなどによる、電力需要を日中へのシフトする制御設備の新設
   -  水素製造・活用設備など日中の需要増加と週単位の電力・エネルギー貯蔵設備の新設

 詳細な内容と効果などは、本文を参照されたし。


<関連リンク>
九州エリアにおける太陽光・風力発電の出力抑制に関する分析結果
出力抑制電力量率はさらに低減できる(2019年版)

(2019年7月16日)

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギーで豊かな日本を創ろう!アクション
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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