日本の電力消費と発電の状況は、この10年で大きく様変わりした。これには2011年3月に発生した、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故が大きく影響している。2018年度のデータを2010年度のものと比較したところ、以下の3つの点で目覚ましい進歩がみられた1。
1. エネルギー効率の向上と省エネの取り組みにより、電力消費量はマイナス246テラワット時(TWh)と大幅に減少した。その内訳は、実際の消費削減量 が145TWh、そして回避した消費(経済成長に応じて伸びるはずの消費が抑えられた分) が101TWhである(2010年度の経済状況下から電力集約度は変化しないと想定しているが、日本の国内総生産(GDP)は対象期間に9%成長した)2。
2. 原子炉の再稼働が困難となっていることから、原子力発電量はマイナス223TWhと大きく減少した(国内の原子炉37基のうち、商業運転を再開したのは、2019年9月上旬時点でわずか9基)3。
3. 自然エネルギーによる発電量は、プラス70TWhと上昇した。
日本の発電量と電力消費量の推移(2010~18年度)
発電ついてさらに詳しくみていくと、あらゆる発電技術のうち、太陽光発電が群を抜いて最も伸びている(64TWh増)。この躍進は主に、2012年7月に導入された固定価格買取制度(FiT)の効果によるものである(当初の買取価格は1キロワット時(kWh)当たり約40円)。最近の入札では約10円/kWhという最安値を記録し、それが示すように、太陽光発電技術が将来的に普及するかどうかは、より経済性を増すことができるかどうかにかかっている4。次に変動が顕著だったのは天然ガス(35TWh増)と石炭火力(9TWh増)で、両者を合わせた伸びは、石油火力の大幅な減少(43TWh)をほぼ相殺している。それ以外の発電技術の変動は限定的で、「その他」(主に産業廃棄物による発電が増加)、風力、バイオエネルギーが挙げられる。水力と地熱はほぼ変わらなかった。
日本の発電量の推移(2010~18年度 )
このような変化の結果、日本の電源構成に占める原子力の割合は2010年度の25%からおよそ20ポイント低下し、2018年度にはわずか6%となった。また、化石燃料と自然エネルギーの割合は、いずれも約10ポイントと同程度伸びた結果、化石燃料が約70%、自然エネルギーが約20%と、どちらもほぼ倍増した。
[左]2010年度の日本の発電量内訳 (%) [右]2018年度の日本の発電量内訳 (%)
上記のグラフをみると、全発電量に占める自然エネルギーの割合を22~24%まで引き上げるという2030年の目標の達成を、日本はすでに射程内に収めている。同時に、原子力発電の占める割合を20~22%と定めた2030年の目標の達成がいかに困難かということもわかる。そのため日本の政策立案者は、国の気候変動枠組条約事務局に提出した約束草案 (2030年度に、温室効果ガスの排出を2013年度比で26%削減)の実現に向け、原子力の代わりとなる低炭素技術に対する目標を再調整し、より積極的に自然エネルギーとエネルギー効率の推進に取り組むことになるであろう。その点で、2018年度におけるエネルギー節減と自然エネルギーによる発電を合わせた電力量が、原子力発電の減少分と日本の経済成長に必要な電力を合わせたもの(すなわち、事実上すべての電力)の97%に達したことは、2030年の温室効果ガスの排出削減目標が間違いなく実現可能であることを示す、非常に力強い、かつ説得力のあるメッセージであるといえる。