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自然エネルギー発電を産業発展させる投資戦略
制御できない気候変動によるリスクを避ける戦略をとる意欲的な国や企業

トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長
2019年4月15日

in English

制御できない気候変動によるリスクを避ける戦略とは、将来にわたり経済的に持続可能な成果の実現を目指すものである。自然エネルギー発電の産業発展に投資することで、電気は、化石燃料よりも低コストで生産できる。そうすることで、自然エネルギー発電のコストは、運輸や産業プロセス、熱利用の一部で利用されている化石燃料に置き換わるほど十分に安くなる。こうして、低コストの太陽光、風力、また水力や地熱、廃棄物や農林業系副産物を利用したバイオエネルギーなどの自然エネルギーは、化石燃料に完全に取って替わる。政策支援がなくても経済的に持続可能な電力の安定供給が実現するのである。
 
この戦略は、ドイツのエネルギー政策iや、太陽光発電のコスト削減を目的とした米国のサンショット・イニシアティブ(SunShot Initiative)iiに取り入れられている。後に中国も同様の戦略をとり、そして今は北京に本拠地を置く「グローバル・エネルギー・インターコネクション発展協力機構(GEIDCO)」が、世界規模の目標としてこれを推進しているiiiiv。最近では、世界的な識者の集まりである「エネルギー変革委員会」が、類似のアイディアをソリューションのひとつとして提示しているv
 
明確な経済理論とグローバルな支持の広がりにより、この戦略の実現性は高まっている。ブルームバーグ・ニューエナジーファイナンス(Bloomberg NEF)は、2018年の「新エネルギー展望(New Energy Outlook 2018)」の中で、2050年までに風力発電のコストは半分以下、太陽光発電のコストは現在の4分の1以下になると予想しているvi。しかしさらなる支援と意識の高まりがなければ、この実現は先送りになり、急激な気候変動のリスクを回避するには手遅れになる。
 
とはいえ、2020年に向けたサンショット・イニシアティブの目標は、想定よりはるかに速く2017年に達成されたii。ブルームバーグ・ニューエナジーファイナンスによれば、太陽光・風力発電はすでに世界のほとんどの地域であらゆる他の新設発電所より安価な電気を供給しているvii。ラザードの年次コスト分析によるとviii、米国の太陽光・風力発電はコスト面で既存の石炭および原子力発電より優位になりつつある。さらに重要なのは、世界中の多くの地域において、自然エネルギー電力は、エネルギー単位当たりで、石油や液化天然ガスよりも安くなっていることであるix
 
この流れを裏付けたのは、米国で2018年に起きた発電量12GWを超える石炭火力発電所の閉鎖であるx。中国では2016年12月以降、新たな原子炉建設は計画されておらずxi、太陽光・風力発電が世界中で最も急速に拡大している。
 
古い考えの学者や原子力技術者や、戦略の全体像を見ようとしない人々は、太陽光・風力発電は競合して、現在の電力需要からみて過剰な電力を生産するので、これ以上の拡大の余地はないと主張する。
 
たしかに、石炭火力発電の代替と捉えるだけなら、太陽光・風力発電の多くから高い収益性を実現することは難しい。しかし、コストが安い日中に蓄電池を充電し、太陽光や風力を利用する時間を長くして、熱や水素燃料や液体燃料を生産すれば、従来の電力需要をはるかに上回る電力を太陽光・風力で発電することが可能になる。また、緊急の電力需要にも常に対応できるようになる。
 
つまり、電力業界だけでなく他の分野の化石燃料もすべて自然エネルギーに替えれば、収益性は向上するのである。
 
スウェーデンでは、鉄鋼業における還元プロセスで使用する石炭の代わりとなる水素を、自然エネルギーから製造することを目的とする「Hybritプロジェクト」でこの戦略を推進しているxii。スウェーデンのオイル精製企業プリーム社(Preem)も、バイオマス原料からバイオ燃料を生産するように、自然エネルギーから水素を製造するというプロジェクトでこの戦略を採用しているxiii。また、海運業向けに電力からメタノールを生産するLiquid Windプロジェクトも同様だxiv。しかし何より注目されるのは、自動車で使用する化石燃料が今後どのように電力にとって替わられるかである。
 
今後は、蓄電池の製造コストの大幅な削減、電力消費量を経時的に制御する情報技術、ロスの少ない高圧送電線などが、この戦略を後押しする重要なカギとなる。
 
蓄電池は車両に利用されているだけではない。電力網が整備されていない世界の多くの地域で、地元の太陽光で発電された電気を家庭に供給できるようにする。また、蓄電池は、現在よりさらに安定した電力網を低コストで実現することもできる。
 
コストの高い配電網は蓄電池に対して競争力を失う可能性がある一方、低コストの電力網によって、大都市やエネルギー集約型産業は地元で電力を生産できなくても自然エネルギーを利用した電力の供給を受けることができる。
 
急激な気候変動の脅威を取り除く技術的・経済的障壁はないものの、他にいくつかの問題が存在する。化石燃料と化石燃料の発電所の価値がなくなるにつれ、多くの大手エネルギー企業は大きな資産価値を失うことになる。そのため、こうした企業は政府や新たな技術ソリューションを望まない保守的な人々を動員していくだろう。変化に反対する人々は、旧式の集中型エネルギー技術に固執する人から社会の崩壊を望む人まで、実に多様な視点を持っている。
 
しかし、太陽光や風力発電所の建設により、個人的な問題だけでなく世界規模の問題の解決を推し進め、世界中に隈なく効率的かつ最新のエネルギー供給網を設置することを望む人々の方がはるかに多い。勝利の女神は実際に問題を解決していく人々に微笑む。さあ、急ごうではないか。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギーで豊かな日本を創ろう!アクション
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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