スマートフォンや自動車などに大量に使われている電子部品の大手メーカー、村田製作所が自然エネルギーの電力の利用を拡大中だ。すでに国内と海外の3カ所の工場を自然エネルギーの電力100%で運営している。全世界のグループ会社を含めて、2030年度までに使用電力の50%を自然エネルギーに切り替える計画である。工場の屋根や駐車場に太陽光パネルを設置して自家発電・自家消費する拠点を拡大するほか、大型の蓄電池システムを導入して太陽光発電の電力を最大限に活用する。さらに国内で大規模なバーチャルPPA(電力購入契約)を締結して、新設の発電設備による追加性のある自然エネルギーの電力を増やしていく。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせて電力の自給率を向上
福井県あわら市に、村田製作所の関係会社で電子部品の生産拠点である金津村田製作所がある(写真1)。この会社が使用する電力は2021年11月から自然エネルギー100%になった。村田製作所グループで初めての自然エネルギーの電力100%で運営する生産拠点である。製造棟の屋根に太陽光パネルを設置したほか、従業員用の駐車場にもカーポート型の太陽光パネルを設置して発電規模を拡大した。両方を合わせると638kW(キロワット)になる。年間の発電量は74万kWh(キロワット時)を見込み、使用電力の13%を供給できる想定だ。工場における太陽光発電の自家消費率としては高い水準である。

金津村田製作所は電子部品のほかに大型の蓄電池システムを生産している。この自社製の蓄電池を導入して(写真2)、太陽光で発電した電力を有効に活用する。蓄電池の容量は913kWhある。太陽光による発電量は1日平均で約2000kWhになり、その半分近くを蓄電できる。翌日の発電量と消費量を予測しながら充電と放電を繰り返して、太陽光で発電した電力を余すことなく使用する。

太陽光発電と蓄電池による電力使用の最適化は、自社で開発したエネルギー管理システムで実行する。気象情報や生産計画をもとに発電量と消費量を予測して、発電量が多く消費量が少ない場合には充電、逆の場合には放電する仕組みだ。工場全体の発電・消費・蓄電の状況はエネルギー管理システムでリアルタイムに見ることができる(写真3)。金津村田製作所では電力使用量の13%を太陽光の自家発電で、それ以外の87%を小売電気事業者から自然エネルギーの電力を購入して100%を調達している。

金津村田製作所をモデルケースとして、太陽光発電と蓄電池、さらにエネルギー管理システムを組み合わせて、国内・海外に展開するグループの生産拠点で自然エネルギーの電力使用率を高めていく。加えて外部から購入する電力はコーポレートPPAを積極的に活用する。すでに大規模な生産拠点が立地する中国地方でフィジカルPPAを締結したほか、日本企業で初めてのバーチャルPPAを締結することも決定した。2030年度の目標達成に向けて、自然エネルギーの電力調達計画を加速させる。