石田雅也 自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループマネージャー
国内と海外に2万カ所以上の店舗・事業所を抱えるイオンは、グループ全体で使用する電力を2050年までに自然エネルギー100%に転換する。年間の電力使用量はグループの主要52社で74億kWh(キロワット時)にのぼり、国内の企業では最大の規模である。大型の店舗を中心に省エネと太陽光発電に取り組む一方、千葉市にある本社ビル2棟で水力発電100%の電力を使い始めた。全国各地の店舗では地域で発電した自然エネルギーの電力を導入する。
ショッピングモールで1000kWの太陽光発電
イオングループは2050年までにCO2排出量をゼロに削減する目標を掲げている。CO2排出量のうち約9割を電力が占める。目標を達成するためには、店舗や事業所で使用する電力をすべて自然エネルギーで供給することが求められる。対策は主に2つある。1つ目の対策は最新の省エネ技術を導入して電力使用量を削減すると同時に、太陽光発電の規模を拡大する。2つ目の対策は電力の契約メニューを自然エネルギーに切り替えていく。
1つ目の対策の典型例は、環境配慮型のモデル店舗「スマートイオン」に見ることができる。2018年3月に神奈川県で開店した「イオンモール座間」が最新のスマートイオンだ。店舗の屋上と壁面に加えて、立体駐車場の壁面にも太陽光パネルを設置して、最大1000kW(キロワット)の電力を太陽光で供給できる(写真1)。
さらにLED照明を全面的に採用したほか、空調機器を分散配置してエリアごとに電力消費量を効率的に削減するなど、各種の省エネ技術を導入した。イオンの標準的な店舗と比較してCO2の排出量を30%削減できる見込みだ。次の目標としてCO2排出量を50%削減できる「次世代スマートイオン」を2020年までに開発する計画も進んでいる。
2つ目の対策である自然エネルギーの電力に切り替える取り組みは、千葉県にある本社ビル2棟から着手した。東京電力エナジーパートナーが提供する水力発電100%の「アクアプレミアム」を2018年3月から利用している。
これに続いて国内外の店舗でも自然エネルギーの電力を増やす。地域で発電した電力を調達する方法の1つとして、家庭で発電した太陽光の電力を買い取る予定だ。2019年度から固定価格買取制度の買取期間を終了する太陽光発電設備が増えてくる。グループ会社のイオンディライトが小売電気事業者として太陽光発電の電力を家庭から買い取り、イオングループの店舗などに供給していく(図1)。このほかに地域で新たに始まる自然エネルギーの発電事業に出資することも検討する。
日本の企業で最大の電力ユーザーであるイオングループが自然エネルギー100%に転換するためには、さまざまな対策を実行しなくてはならない。その目標達成に向けた具体的な取り組みが全国各地で動き出した。
先進企業の自然エネルギー利用計画 (第2回)
イオン、2050年までに自然エネルギー100%へ
国内・海外2万カ所以上の拠点で脱炭素を推進