コメント自然エネルギーで日本の未来を開くため行動を続けよう第7次エネルギー基本計画閣議決定にあたって

2025年2月18日

in English

第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました。自然エネルギー財団では、2040年には電力の90%以上を自然エネルギーによって供給することで、コストが低く自給率の高いエネルギー供給が実現できることを定量的に示し1、様々な論点2を示してきました。今回のエネルギー基本計画における自然エネルギー比率40-50%は、世界の中で日本がビジネスの拠点として選ばれるためには十分ではないと考えています。

今回のエネルギー基本計画における電源構成では、30-40%を供給するとされた火力発電の脱炭素化のために水素・アンモニアやCCSが大量に必要となることで、自然エネルギーを90%以上とするシナリオよりも、発電コストが高いものとなると試算されます3

私たち自然エネルギー財団は、現実的な早期の脱炭素化やネイチャーポジティブのために自然エネルギーを増やしたい企業や自治体、日本中に芽が出始めている営農型ソーラーを担っている方々、困難を乗り越え洋上風力発電の実現をめざす方々など、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスという日本にある豊富な資源を生かすことで地域を創生しようと頑張っている方々とともに、現実が国の計画を上回ることを目指し、より質の高いリサーチ、提言、それに基づく対話や協働を進めていく志を新たにしています。

1. 自然エネルギー中心の電源構成は低コスト

世界の多くの国は、5年後の2030年の目標を見ても、自然エネルギーを中心とした電源構成を目指しています(図1)。

図1 各国の2030年自然エネルギー発電比率目標(%)

出典:自然エネルギー財団、「各国目標(自然エネルギー導入促進・GHG削減)」(2024年7月9日)

その理由は明らかです。自然エネルギーはコストが低く(図2)、国内で自給できるエネルギーだからです。

図2 新設の太陽光、風力、原子力のLCOE基準値(世界平均、2024年)

出典:BloombergNEF, Levelized Cost of Electricity Update 2025 (February 2025) (要定期購読)

発電コスト自体が低くても、“統合コスト”が高いという議論が行われていますが、IEA(国際エネルギー機関)風力技術協力プログラムの報告書4には、以下の記載があります。

「従来は、風力発電のいわゆる統合コストを試算するのが一般的だった。いずれの方式も重大な欠点があることがわかっている(Milligan et al., 2012; Milligan & Kirby, 2009; Milligan et al., 2011; Müller et al., 2018)。(中略5) 政策立案者やその他の利害関係者は、発電コスト(LCOE)にシステム統合コストを加えようとするのではなく、異なるシナリオについて電力システム全体のコストと便益を評価することが望ましい。」

自然エネルギー財団の2040年シナリオと今回決定されたエネルギー基本計画における電源構成(図 3)、およびその際の発電コスト(図 4) を比較しました。エネルギーシステム全体で見ると、仮に発電コスト検証ワーキンググループの政策経費を除いた単価を用いた場合6、送電線・揚水・蓄電池の費用(一番右のオレンジの部分)を入れても、自然エネルギー財団のシナリオに基づく発電コストは、エネルギー基本計画シナリオのコストよりも低いものとなります。

図3 エネルギー基本計画シナリオと自然エネルギー財団シナリオにおける電源構成

 

図4 エネルギー基本計画シナリオ(左の青の5本の棒)と自然エネルギー財団シナリオにおける発電単価

自然エネルギーを中心とした電力システムは、“統合コスト”を全体として考慮しても、最も低コストになる可能性が高いことがわかります。そのようなメリットがあることから、世界中が自然エネルギーの大量導入に舵を切っているのです。

2. エネルギーと食料の自給率を上げ、将来的な国産水素への道を開く

エネルギー資源を輸入している国としては、自然エネルギーは自国産の資源というだけでもメリットがあります。それだけでなく、中国、欧州、オーストラリア、ブラジル、そしてバイデン政権下の米国など多くの国が、国策としてエネルギー移行がもたらす経済的機会を最大限国内/域内に誘導するための競争を始めているのです7。太陽光パネルや蓄電池のセルなどのコモディティについては、すでに中国が圧倒的競争力を示しているものの、今後より精密な制御が求められる中、日本の精密な技術力が世界に貢献しながら経済的機会を得ることができるのではないかと期待されています。そのためには、国内でも太陽光や風力を大量導入し、他国に先んじて技術を習熟させていくことが近道なのではないでしょうか。

自然エネルギー財団による2040年電力の90%以上が自然エネルギーとなるシナリオでは、一次エネルギー全体でも自給率約75%が達成されます。エネルギー基本計画における自給率は原子力を入れても30-40%であり、地政学リスクにさらされる比率はまだまだ高いと言えるでしょう。

図5 一次エネルギーの実績とエネルギー基本計画・自然エネルギー財団シナリオ

自然エネルギー発電を大量に導入し、電源構成の90%を超えた世界では、溢れ出る自然エネルギー電力によるグリーン水素の製造も可能となります。2040年のシナリオの世界では洋上風力建設のサプライチェーンも整っているでしょうから、2050年に向けてより多くの水素製造が可能になるでしょう。

また営農型太陽光発電は、耕作放棄地に太陽光を設置することで農家収入を安定させ、農業生産も再開する可能性に満ちています。エネルギー自給率とともに食料自給率も上がり、地方に若い人の魅力的な雇用の場ができることが期待されます。

3. エネルギー基本計画の“芽”を大きく育てるために

2040年の電源構成に占める自然エネルギーの構成比は世界と比べると低いものの、初めて自然エネルギー全体として最大比率となりました。この勢いをより加速し、日本の素晴らしい技術力が世界の脱炭素化に貢献し、日本が経済的に豊かになるためには、他国に遅れることのない大きな変革が必要です。なぜなら、世界の多くの国が目指す自然エネルギーを主体とした脱炭素社会は、自然エネルギー設備に加えて自然エネルギーを活用するための送電線や蓄電装置といったインフラが不可欠であり、それらのインフラをどう動かすかに技術力が問われるからです。インフラの構築には、国や自治体のリーダーシップが不可欠であり、その方向を間違えないように広い知見を活用する仕組みが必要です。

自然エネルギー財団は、独立したシンクタンクとしてファクトに基づいた知見を今後も発信することで、日本、アジア、世界がネットゼロ、ネイチャーポジティブ、つまり豊かな経済社会を今後も享受できるための活動をしていきます。危険な気候変動による現世代・将来世代の被害をできるだけ少なく抑えるために経済的移行を決意した気候変動イニシアティブ(JCI)、SBT(科学に基づく目標設定)、RE100などの参加企業とともに、真に豊かな日本を実現するための議論・提言を行っていきます。

 


<関連リンク>
[コラムシリーズ] エネルギー基本計画の論点(第1~12回)
[インフォパック] エネルギー基本計画の論点(2024年9月19日)
[特設ページ] 脱炭素の日本へ:2030年・2035年・2040年・2050年のエネルギーミックスの姿
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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