【概要版】 アジア国際送電網研究会 第3次報告書
※報告書本編、概要版の一部を訂正しファイルを更新いたしました。(2019.11.20)
アジア国際送電網研究会の第3期に当たる本報告書では、国際送電網が有する幅広い社会経済的便益を精査し、国際送電網構想に対してしばしば言及されるエネルギー安全保障上の懸念について考察しています。
・国際送電網は、貿易を通して電力の経済的な取引を拡大し、予備力の共有を通して安定供給に寄与し、さらに変動対策として自然エネルギーの導入を促進する、
・世界をみれば、国際送電網は、英国などの条件不利地域においても拡大しており、今や北東アジアにおいて国際送電網に前向きでない国は日本のみである、
・国際送電網は、日韓間という事例でも、電気代の低下、緊急融通実施体制の構築、CO2や大気汚染物質の発生量の減少といった具体的な便益がある、
・エネルギー安全保障上の懸念については、日本にとって実質的に無視できるものであり、十分な国内供給力を前提に限られた量の電力を輸出入するに際し、他国が政治的な理由から輸出停止措置を講じる効果はほぼなく、従ってその便益もない、
と結論づけています。
提言として、
1.隣国の政府と、包括的な費用便益分析を含む国際送電網についての具体的な議論を始めるべきこと、
2.自然エネルギーの大量導入を踏まえ、今後のエネルギー安全保障のあり方について再検討し、その中で国際送電網を位置付けるべきこと、3.2050年などを目標とした、国内外の送電網に関する長期的なマスタープランを策定すべきこと、
4.地域間連系線・地内送電線の拡充や送電会社の広域化、運用ルールの効率化といった系統の問題、電力市場の近代化など、国内の電力システム改革を欧州並みの水準へと加速化すべきこと、
を政府や関連機関に求めています。
自然エネルギー財団は、この「第3次報告書」をきっかけとして、より一層、日本における国際送電網構築の取り組みが活発となることを期待しています。
■ 報告書概要
第1章で、北東アジアにおける国際送電網を巡るこの1年程度の間の状況を整理しています。第2章では、当研究会として実施した英国・スペイン視察調査を踏まえ、両国の自然エネルギー拡大や国際送電網への取り組みを紹介し、第3章では、第2期から続く国際送電網の費用便益分析の中で、特に便益部分について詳細に検討しています。さらに第4章では、国際送電網に係るエネルギー安全保障上の論点を整理しています。
<目次>
はじめに
第1章:最近の北東アジアと日本の状況
第2章:英国とスペインの国際送電網への取り組み
第3章:国際送電網の費用便益分析
第4章:国際送電網とエネルギー安全保障
おわりに
■ アジア国際送電網研究会
2016年7月に、電力系統やエネルギー政策の研究者、自然エネルギーの専門家、関連する企業関係者などをメンバーとして設置され、自然エネルギー財団が事務局を務めています。
座長 |
大山 力 横浜国立大学大学院 工学研究院 教授 |
座長代理 |
高橋 洋 都留文科大学 地域社会学科 教授 |
委員 |
長田 雅史 早稲田大学 非常勤講師 (2019年4月より委員) 橘川 武郎 東京理科大学大学院 経営学研究科 教授 斉藤 哲夫 東京大学 生産技術研究所 特任研究員(2019年4月より自然エネルギー財団特任研究員) 新岡 卓 欧州ビジネス協会 エネルギー委員会 委員長(2019年3月まで委員) 三輪 茂基 ソフトバンクグループ株式会社 CEOプロジェクト室 室長、SBエナジー株式会社 代表取締役社長 大野 輝之 公益財団法人 自然エネルギー財団 常務理事 |
オブザーバー | 岡本 浩 東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長 |
顧問 | 田中 伸男 公益財団法人 笹川平和財団 会長 |
<関連リンク>
・アジア国際送電網研究会 第2次報告書(2018年6月公表)
[関連シンポジウム] 日本における国際送電網の実現をめざして(2018年7月開催)
・[国際会議] アジア国際送電網:北東アジアで実現するために(2017年10月開催、韓国・ソウル)
・アジア国際送電網研究会 中間報告書(2017年4月公表)
[関連シンポジウム] 国際送電網が切り開く電力ビジネスの未来(2017年5月開催)