コメントCO2排出ゼロの日本へのエネルギー戦略を示せ

2019年6月27日

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 日本政府は、6月26日、気候変動対策の長期戦略を国連に提出した。日本の長期戦略に求められたのは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃特別報告書が公表されて以来、初めて策定される先進国の戦略として、2050年二酸化炭素実質排出ゼロの目標を明確に掲げることであり、エネルギー効率化と自然エネルギーを中心とした脱炭素社会への明確なエネルギー政策の方向を示すことであった。

 しかし、今回提出された長期戦略では、脱炭素社会を「今世紀後半のできるだけ早期に実現していくことを目指す」とはしたが、2050年目標は従来の80%削減から一歩も出なかった。また、1.5℃特別報告書が求めた、2030年までの2010年比45%削減には言及すらしていない。

 エネルギー政策の方向については、2030年に22-24%という低い自然エネルギー目標を踏襲し、その一方で、石炭火力と原子力発電という過去の技術に拘泥する姿勢を示している。特に石炭火力については、火力発電の削減対策として実用性・経済性がないことが明らかになっているCCS技術の開発を進め、これを「世界に輸出する」との方針まで示している。

 また、政府の戦略は、CCUやカーボンサイクル、小型モジュール炉、更には核融合などの「非連続のイノベーション」をならべたて、そのための技術革新の重要性を繰り返し強調している。技術革新への取組み自体は大切だ。しかし、石炭火力に固執し、自然エネルギー目標を低くおさえたままま、水素社会の実現など未来技術への夢を語っても、気候危機に真摯に立ちむかう戦略とは、到底、評価されない。

 日本の非政府アクターのネットワーク「気候変動イニシアティブ」に参加する211の企業、自治体、NGOは、エネルギー効率化の徹底と自然エネルギー目標の引き上げを長期戦略の中心に置くことを求めている。RE100に加盟する先進企業は2030年の自然エネルギー電力を50%とすることを提案している。自然エネルギー財団の政策提言で明らかにしたように、太陽光発電と風力発電を中心に自然エネルギーの導入を加速し、エネルギー効率化を進めれば、2030年に自然エネルギー電力50%を達成することは可能である。

 日本は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスという自然エネルギー資源に恵まれた豊かな国であるが、毎年、総額約16兆円にのぼる化石燃料を輸入している。国内に化石燃料資源がほとんどなく、地震国で、深刻な原子力発電所事故を経験している日本は、他の国々とくらべても、脱化石燃料、脱原子力発電を進めることに合理性が高い。

 2030年までの削減を加速させ、2050年排出ゼロへの道を確実に進むためには、自然エネルギーの大量導入に不可欠な電力システム改革への最優先の取組み、カーボンプラシングの早急な導入などの制度イノベーションを進めるべきである。石炭火力に代表される過去の技術と訣別し、エネルギー効率化の徹底とともに、自然エネルギーのポテンシャルの全面的に活用する脱炭素戦略の確立を国に強く求める。

【PDF版はこちら】CO2排出ゼロの日本へのエネルギー戦略を示せ


<関連リンク>
提言(2019年4月)
脱炭素社会へのエネルギー戦略の提案
2050年CO2排出ゼロの日本へ



 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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