営農型太陽光発電:科学的な根拠のない遮光率規定は削除すべき

石田 雅也 自然エネルギー財団 研究局長

2026年8月3日

 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、農作物を栽培していない「耕作放棄地」で農業を再開する有効な手段として、全国各地に広がってきた。農家の収入を増やす効果に加えて、自然エネルギーを活用して電力を地産地消できる利点がある。猛暑の中で農作物を守り、農業従事者の負担を軽減する。適切に実施すれば、農業の再生と地域経済の活性化につながる。長年にわたる日本の課題を解決する期待は大きい。しかし、その動きを止めかねない規則の改正が実施されようとしている。農林水産省は9月末をめどに、営農型太陽光発電に関する新たな法令を施行する方針だ(8月22日までパブリック・コメントを募集)。

 改正案で最大の問題点は、農地の上部に設置する太陽光パネルによる「遮光率」の規定である。新しい法令で定める基本的な事項の1つに、「営農型太陽光発電の適正化」がある。農作物の栽培や設備の設計に関して数多くの規定を設ける中で、「遮光率(設備直下の農地の面積に対する営農型太陽光発電設備の投影面積の割合)が30%未満であること」を要件に加えた。ただし数値の根拠は示していない。実際のところ遮光率30%以上で実施している営農型太陽光発電が全国に多数ある。太陽光パネルの下で、農薬などを使用しない有機栽培でも、十分な収穫量と高品質の農作物を栽培・販売している(末尾に記載した参考資料で例示)。このような実例と遮光率30%未満の規定は矛盾する。政府が科学的な根拠のない規制を実施することは適切ではない。根拠を示さないのであれば、法令から遮光率に関する規定を削除すべきだ。

 営農型太陽光発電の問題点として、食料ではなくて観賞用の植物を栽培している事例が多いことを指摘する声がある。2023年度の時点で、観賞用植物は件数ベースで36%を占めている(図1)。面積ベースでは、さらに比率は高くなる。この状況を改善するために、改正案では「将来にわたって、農地の食料生産基盤としての機能が維持され、食料安全保障の確保に資する取組であること」を制度見直しの趣旨に挙げている。ところが適正化の要件の中には、栽培する農作物を食料に限定する点を入れていない。遮光率を30%未満に規定することによって、高い遮光率で実施している観賞用植物の事例を排除する狙いがあるとみられる。その結果、食料を生産する営農型太陽光発電まで阻害してしまうことになる。本来の趣旨に合う規定を検討する必要がある。

図1 営農型太陽光発電で栽培する農作物(件数ベース、2023年度末)


出典:農林水産省説明資料、望ましい営農型太陽光発電に関する検討会(第6回)、2026年4月15日

 遮光率の規定のほかに、もう1つ重大な変更が改正案に盛り込まれている。農地の一時転用許可の手続きが大幅に変更になる(図2)。許可の前提として、対象の市町村が農山漁村再エネ法に基づく「基本計画」を作成済みであることを新たな要件に加えた。農山漁村再エネ法(正式名称:農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律)は2014年に施行した法律で、自然エネルギーによる発電を促進して農山漁村の活性化を図ることが目的だ。営農型太陽光発電は法律の目的にかなう。

 改正案で求める基本計画は、農林漁業の健全な発展に資する取り組みを市町村ごとの実情に応じて具体的に定めたものである。農林水産省によると、2025年3月末の時点で基本計画を作成済みの市町村は112しかない(作成中・検討中が11)。全国の1718市町村(2026年7月現在)のうち1割にも満たない状況だ。そのほかの市町村では、自治体が基本計画を作成しない限り、事業者は農地の一時転用許可を申請できなくなってしまう。全国に広がってきた営農型太陽光発電を阻害する過剰な規制と言える。

図2 営農型太陽光発電に必要な認定手続きの変更(案)


出典:農林水産省説明資料、望ましい営農型太陽光発電に関する検討会(第6回)、2026年4月15日

 農林水産省は農山漁村再エネ法を施行する前年の2013年に、営農型太陽光発電を可能にする農地の一時転用許可制度を開始した。2023年度までに一時転用許可の件数は累計で6000件を超えた。耕作放棄地を中心に営農型太陽光発電の取り組みが全国で拡大している。まもなく施行する法令が現在の案のままだと、農地の一時転用許可の件数が大幅に減ることは確実だ。耕作放棄地の解消に有効な営農型太陽光発電の発展は期待できなくなってしまう。

 農林水産省および政府全体で、実態に即した改正を検討すべきである。政府が2025年末に閣議決定した「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」では、3つの大きな方針の1つとして「地域共生型への支援の重点化」を挙げている。営農型太陽光発電には地域共生型で実施している事例が数多くある。農業の再生と地域経済の活性化に向けて、規制よりも促進策が望まれるところだ。残念ながら改正案には促進する施策が見あたらない。



<農林水産省によるパブリック・コメントの募集> 改正案の詳細は 3.
  1. 農地法施行規則及び農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令案について(案件番号:550004381)
  2. 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律に基づく設備整備計画の認定等に関する省令の一部を改正する省令案について(案件番号:550004382)
  3. 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進による農山漁村の活性化に関する基本的な方針を改正する件の案について(案件番号:550004383)
 

<参考資料>
ソーラーシェアリングの遮光、適切な設計と栽培で効果を発揮:「遮光率30%未満」規制の不合理(2026年7月30日)
提言:ソーラーシェアリングの規制緩和を、新たな農業の成功事例を増やすために(2026年3月5日)
ソーラーシェアリングで農業を再生:太陽光のエネルギーで地方創生へ(2025年3月11日)
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织