トランプ大統領が自然エネルギーに対して規制を強化しているにもかかわらず、米国では蓄電池とともに導入量が着実に伸びている。これはコスト競争力と税額控除によるところが大きい。特に太陽光発電が進展していて、国内の太陽光モジュールの製造能力の増強も進んできた。とはいえ経済面で対抗軸になる中国との差を埋めるには不十分だ。中国では自然エネルギーの導入量が加速度を増して拡大している。
2025年に米国の電力需要が増加、73%を自然エネルギーで補う
米国では2025年に電力需要が138TWh(テラワット時=10億キロワット時)も増えた。前年比3.1%の伸びで、主に商業用と住宅用の需要が増加した。2025年の電力需要の増加分のうち、73%は自然エネルギーの電力の増加で補った(図1)。米国の電力需要は国全体の発電電力量から、系統が接続しているカナダとメキシコからの輸入量を加えたものである。
図1: 米国の電力供給と需要の変化(2025年と2024年の比較)
この結果、2025年の米国の電源構成を見ると、電力需要の25.5%を自然エネルギーが供給した(図2)。5年前の2020年には20.1%だった。
図2: 米国の電源構成(2025年)
2020年以降の自然エネルギーの拡大は主に太陽光によるもので、5年間に比率が5.3ポイント上昇した。風力は2.0ポイントの上昇である。一方で石炭は2.6ポイントの減少、原子力も2.0ポイント減少した(図3)。
図3: 米国の電源構成の推移(2020~2025年)
出典: Ember, Monthly Electricity Data (2026年2月9日時点)
米国では太陽光と風力が最も安価に新たな電力を供給できる。補助金がない場合で太陽光は平均58ドル/MWh(メガワット時=1000キロワット時)、風力は平均61ドル/MWhである。日本円に換算して10円/kWh(キロワット時)程度になっている(図4)。電力需要の増加に対応するうえで経済的に最も望ましい方法と言える。
ただし減価償却を完了したガス火力(31ドル/MWh)や原子力(34ドル/MWh)と比べると高い状態だ。
図4: 米国における電源別の発電コスト(2025年)
出典: Lazard, Levelized Cost of Energy + (2025年6月)
バイデン前大統領は2021年1月に、米国の電力セクターを2035年までにカーボンフリーにする目標を発表した。この野心的な目標を達成するためには、脱炭素化を推進する積極的な政策が不可欠だ。新設の太陽光や風力をコストの面で既設のCCGT(コンバインドサイクルガスタービン)と競争できるように、補助金を出して導入を加速させた。
さらに2022年8月にはインフレ抑制法を施行して、投資税額控除と生産税額控除を導入した(詳細は「米国の電力は2035年までに脱炭素へ:自然エネルギーの経済性と技術を生かす(2024年9月)」を参照)。
これに対してトランプ大統領は2025年7月に、「One, Big, Beautiful Bill Act」と呼ぶ税制改正法案を成立させた。新設の太陽光と陸上風力のプロジェクトに対する税額控除と有効期限を規制する以下の案も入っている1 。
- 2026年1月1日以降に建設を開始するプロジェクトに対しては、FEOC(Foreign Entities Of Concern:懸念される外国の事業体、すなわち中国、ロシア、イラン、北朝鮮)と関係がある場合には税額控除を適用しない。具体的には、製品のコストに占めるFEOC以外の比率を2026年に40%以上、2027年に45%以上である場合に限って税額控除を適用する。
- 2026年1月1日から7月3日までに建設を開始するプロジェクトに対しては、上記のFEOCに関するルールを順守した場合に税額控除を適用する。
- 2026年7月4日以降に建設を開始するプロジェクトに対しては、FEOCのルールを順守したうえで2027年12月31日までにサービスを開始する場合に税額控除を適用する。
- 2028年1月以降に建設を開始するプロジェクトには税額控除を適用しない。
以上のような規制に対して、大統領の権力に対抗できる州の役割が重要になっている。
米国の多くの州では、RPS(Renewable Portfolio Standards:自然エネルギー利用割合基準)やCES(Clean Energy Standards:クリーンエネルギー基準)のような推進策を導入している。CESには自然エネルギーと原子力を含む。いずれの基準においても、電力の供給事業者は特定の期限までに一定以上の割合で自然エネルギーあるいはクリーンエネルギーを消費者に供給することを求められる。
RPSに必要なコストは消費者に課すことになるが、直近で入手可能なデータ(主に2023年か2024年)をもとに計算すると、電気料金の4%程度である2 。CO2(二酸化炭素)の排出削減と化石燃料価格の変動性を抑制する効果を考えれば、大きな負担ではない。
2025年12月の時点で、全米50州のうち半数を超える27州がRPSを導入している。さらに13州がクリーンエネルギー100%を求めるCESを導入済みだ(表1)。トランプ大統領が就任して以降も各州はRPSとCESを継続しているが、中には目標を変更した州もある。
メイン州は2025年6月に、2040年までにCESで100%の新たな目標を設定した。このうちRPSが90%である。従来は2050年までにRPSで100%を目指していた。自然エネルギー単独ではない方法で脱炭素を加速させるための政治的な判断である。
7月にはコネチカット州が2030年までのRPSを48%から37%に引き下げた。それでも2040年までにCESで100%を実現させる目標は維持した。今後5年間に自然エネルギーの拡大が遅くなることを想定したものである。
表1: 州ごとのRPSとCESの設定状況(2025年12月時点)
自然エネルギーの導入量が太陽光で拡大、国内サプライチェーンも復活
2025年に米国の自然エネルギーの増加分のうち、84%を太陽光(一部は太陽熱発電)が占めた(図5)。
図5: 自然エネルギーの発電電力量の変化(2025年と2024年の比較)
太陽光は最も安価な発電方法であることに加えて、開発期間が最も短いという利点がある。事業用の太陽光の開発期間は米国では通常2年だ(表2)。電力の需要が増えている状況に素早く対応するために、短期の開発が重要になっている。
表2: 米国における発電方法別の開発期間
加えて米国では太陽光発電の人気が高く、社会の受容性が良好なことも導入を後押ししている。独立系シンクタンクのPew Research Centerが毎年実施しているエネルギーに関する世論調査によると、2025年に米国民の77%が太陽光発電の開発増加を好ましく感じている3 。陸上風力の68%、原子力の59%を上回る結果だ。
太陽光発電の人気の要因は、個人の住宅に導入できて、他者にエネルギーを依存しなくて済む点にある。さらに太陽光パネルは風車よりも視覚の邪魔にならず、原子炉よりも危険ではない、と受け止められている。
電力系統に統合する点では、安価な蓄電池が急速に拡大していることが大きく貢献している。リチウムイオン電池パックの価格は2010年の水準と比べて93%も低下した4。
米国では2025年に13GW(ギガワット=100万キロワット)にのぼる記録的な規模の蓄電池が新たに設置されて、累積で45GWに達したと推定されている5。このうち累積の設置容量が多いのは、カリフォルニア州の18GWとテキサス州の12GWである。
この2つの州では、主に短時間のエネルギーシフトに蓄電池を利用している。日中に追加コストがほぼゼロの太陽光の余剰電力を蓄電して、日没後の需要がピークになるタイミングで放電する。
製造面では、数年前まで厳しい状況にあった米国の太陽光発電産業が保護政策(関税、表3)と支援策(税額控除)の恩恵を受けて復活した(詳細は「太陽電池のサプライチェーン:中国の市場支配、世界各国で進む対策(2024年12月)」を参照)。
関税については、中国製の太陽電池モジュール(想定価格0.09ドル/ワット)に対して2025年11月から350%の関税を適用している。これによりモジュールの価格は0.41ドル/ワット(輸送費と保険を除く)に上昇した6。
米国が中国以外の国(インドネシア、ラオス、インド、マレーシアなど)から輸入している太陽電池モジュールの平均価格は0.27ドル/ワット(関税、輸送費、保険を含む)である。さらに米国内で製造するモジュールの価格も0.36~0.42ドル/ワットで、中国製のモジュールには競争力がなくなった7。
表3: アジアの主要国から輸入する太陽電池セルと太陽電池モジュールの関税(2025年12月31日時点)
米国ではしばらくのあいだ、太陽電池モジュールの製造に必要なインゴット、ウェハー、セルの製造能力がなかった。2025年末の時点で、太陽光発電のサプライチェーン全体をカバーする能力を回復した。上流工程のポリシリコンの製造能力は26GW、インゴットとウェハーは2GW、セルは3GW、モジュールは69GWに達した8。2025年の米国全体の太陽光発電の年間導入量は51GWで、それに対して十分な規模の太陽電池モジュール製造能力を確保できている。
中国が世界の太陽光発電のサプライチェーンを支配している状況の中で、米国の対応力を高める状況を作り出した。
自然エネルギーの導入量で中国が米国を引き離す
2020年から2025年のあいだに、中国と米国における自然エネルギーの電力の比率は差が開いた。2020年には7.2ポイントの差(中国27.3%、米国20.1%)だったが、2025年には11.5ポイント(36.9%対25.5%)に広がった(図6)。ただし2021年と2023年には両国ともに自然エネルギーの比率はさほど上昇しなかった(0.4~0.6ポイントの上昇)。2021年にはコロナウイルスの感染拡大(2020年)の収束後に電力需要が急増した影響があった。2023年は干ばつによる水力発電の減少が影響を及ぼした。
図6: 中国と米国の自然エネルギー電力の比率(2020~2025年)
中国では自然エネルギーの導入拡大が著しい。中国の電力需要は米国の2.3倍に達する。2025年に中国で新たに導入した太陽光、風力、蓄電池の容量は、米国と比べて7.3倍、14.8倍、3.6倍にのぼった(図7)。
図7: 中国と米国のクリーンエネルギーの導入量の変化(2025年と2024年の比較)
出典:(太陽光) BloombergNEF, “Solar PV” from Global PV Market Outlook 2025 Q4 (2025年12月)、(風力) Global Wind Market Outlook 2025 H2 (2025年12月)、(蓄電池) Energy Storage Market Outlook 2025 H2 (2025年10月) [いずれも要購読]
2025年に中国で太陽光と風力の導入量が過去最大を記録した要因として、6月1日から値差支援メカニズム(Contract-for-Difference)が変更になり、直前の駆け込みプロジェクトが急増した(詳細は「中国とインドの脱炭素政策:石炭依存から自然エネルギー拡大へ(2025年11月)」を参照)。この結果、1月から5月までの太陽光発電の導入量は月間平均で47GWだったのに対して、6月から12月までは20GWに減少した9。
調査機関のBloombergNEFによると、中国では2026年に太陽光と風力の導入量が減少する可能性がある。それでも年間で太陽光は321GW、風力は94GWの導入量が見込まれていて、引き続き高い水準を維持する見通しだ10。
中国と米国の差は、さらに拡大する可能性がある。
IEA(国際エネルギー機関)が2025年11月に発表した最新のレポート「World Energy Outlook」で将来の予測を公表した。両国の脱炭素の進捗を2つのシナリオで分析している。1つはCPS(Current Policies Scenario、現行政策シナリオ)、もう1つはSTEPS(Stated Policies Scenario、公表政策シナリオ)である。
CPSでは既存の政策や規制を前提に、新しいエネルギー技術の導入ペースを控えめに見込んでいる。一方のSTEPSには公約したうち実施前の政策を含んでいる。新しい技術の導入障壁もSTEPSのほうが低くなる。
中国のSTEPSでは、国全体と省ごとの非化石燃料発電の目標を現在の実施期限から延長することに加えて、電力市場の改革と省間の電力取引の強化を想定している。米国のSTEPSでは、州ごとのRPSとCESが拡大して、現在の目標を引き上げることを想定している。
CPSとSTEPSの2つのシナリオのいずれでも、中国と米国の自然エネルギーの電力の比率の差は、今後10年で20ポイント以上に広がるとIEAは予測している(図8)。
図8: 中国と米国の自然エネルギーの電力の比率(2035年の予測)
この結果は政策の方向性の違いだけではなく、コスト競争力の差を反映している(図9)。中国では既設の石炭火力が主力の電源だが、2024年の時点で新設の太陽光と陸上風力がコストで競争できる状態になった。一方の米国では既設のガス火力が現在の主力で、新設の太陽光と陸上風力がコスト競争力を発揮できるのは2035年になる見込みだ。
図9: 中国と米国の発電コストの予測(CPSの場合)
図4で示したLazardは2025年時点の資本費を1900~2300ドル/kWとIEAよりも高く想定している。
出典: International Energy Agency, World Energy Outlook 2025 (2025年11月)
トランプ大統領が20世紀のエネルギー生産技術(化石燃料と原子力)を強力に推進しているのに対して、中国は21世紀の電力技術(太陽光、風力、蓄電池など)を大規模に導入して輸出にも力を入れている。このような正反対の戦略的なアプローチは、両国の経済の発展と世界の地政学における影響力に大きな差をもたらすだろう。
- BloombergNEF, One Big Bill, Many Impacts for US Energy Economy (July 2025) [subscription required].
- Lawrence Berkeley National Laboratory, U.S. State Electricity Resource Standards 2025 (August 2025).
- Pew Research Center, Americans’ Views on Energy at the Start of Trump’s Second Term (June 2025).
- BloombergNEF, Lithium-Ion Battery Price Survey 2025 (December 2025) [subscription required].
- BloombergNEF, Energy Storage Market Outlook 2025 H2 (October 2025) [subscription required].
- BloombergNEF, Solar Supply Chain Index (February 2026) [subscription required].
- Anza, Quarterly Pricing & Domestic Content Report 2025 Q4 (December 2025).
- BloombergNEF, Solar Manufacturing Assets (updated February 14, 2026) [subscription required].
- National Energy Administration, National Power Industry Statistics for January-May 2025 – June 23, 2025, and National Electricity Statistics for 2025 – January 29, 2026 (both accessed February 16, 2026) [in Chinese].
- BloombergNEF, Global PV Market Outlook 2025 Q4 (December 2025), and Global Wind Market Outlook 2025 H2 (December 2025).




