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COVID-19収束後を見据えた中国の「新型インフラ」中心の経済対策に環境負荷削減効果はあるのか

ジョリット・ゴーセンズ、フランク・ヨッツォ オーストラリア国立大学(ANU)

2020年6月2日

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 世界各国の政府がCOVID-19収束後の経済活性化策を検討している。中国が掲げる「新型インフラ」建設プロジェクト計画は、低炭素型の景気刺激の一助になりそうだ。しかし、現時点で計画されている投資額は小さく、依然として排出量の大きな「従来型インフラ」プロジェクトへの資金投入が続いている。

 中国は、世界金融危機に際し、2009年から2010年にかけて、手頃な価格帯の住宅供給、高速道路、橋梁、空港の整備など10項目を柱とした4兆元(5660億ドル)に上る経済対策を打ち出した。この従来型インフラの拡充でセメントや鉄鋼の消費が急増した結果、CO2排出量の増加と深刻な大気汚染を招くことになった。

 今回、「新基建」(新型基礎インフラ建設の略)なる新たなキーワードが登場した。同国の大枠の経済・政治戦略を決める中央政治局常務委員会が2020年3月、COVID-19の封じ込め策について会合を開き、「新型インフラ」を柱としたプロジェクトへの投資を加速させて経済回復をめざす構想を描いて見せたのである。

 この「新型インフラ」というコンセプトは、元々、情報通信技術が中心だったが、その後、低炭素型の輸送機関やエネルギーにも範囲が広がっている。投資対象として挙げられているのは、5Gネットワーク、データセンター、人工知能、産業用IoT(モノのインターネット)、UHV(超高電圧)送電、高速鉄道、電気自動車充電インフラの7分野だ。

 この7分野での総投資額は、2020年から2025年までの6年間で10兆元(1兆4000億ドル)に達すると見られ、低炭素型の経済対策としては、かつての世界金融危機後の経済対策と比べても決して引けを取らない規模になることはまず確実である。同委員会が提案する「投資の加速」とは、経済対策の一環として投資を前倒しし、2025年までに7分野の政策目標を達成することを示唆している。

 しかし、投資加速の提案については、まだ中央政府の財政的裏付けがあるわけではない。おそらく中国政府も世界金融危機当時ほど余裕のある台所事情ではないからだろう。投資の大部分は、省レベル(省・直轄市・自治区)の地方財政に頼らざるを得ず、また金融機関からの融資も促すことになる。

 すでに多くの省・直轄市・自治区政府が投資計画を先ごろ更新し、「新型インフラ」プロジェクトを組み込んでいる。このうち23の省・直轄市・自治区が合わせて45兆8000億元(6兆5000億ドル)に上る複数年投資を計画している。この23の行政区で、中国のGDPの89%を占めており、残る行政区も加えると、合計51兆3000億元(7兆3000億ドル)に達する見込みだ。長期投資計画としては、4兆3000億元(6090億ドル)積み増して、9%増となる。関連の統計データが入手可能な14の省・直轄市・自治区を見ると、歳出は年平均7.4%増となる。こうした投資計画は、COVID-19感染拡大に伴う危機の進展を受けて作成されたため、短期的な景気刺激策の支出分がどの程度含まれているのか定かでなく、今後さらなる積み増しがあるのかどうかもはっきりしない。

 このような投資計画の中でも最大規模になるのが、中国のGDPの11%を占める広東省だ。新型インフラプロジェクトは、同省の2020年の投資予算のうち、7.2%に当たる502億元(71億ドル)を占める。同省で準備段階にあるプロジェクトの総予算は34兆元(4兆8000億ドル)で、このうち「新型インフラ」に区分されるプロジェクトに割り当てられた予算は、わずか905億元(128億ドル)にとどまっている。

 仮にすべての省・直轄市・自治区が2020年度予算の7.2%を新型インフラプロジェクトに振り向けることになったとしても、総額でわずか6000億元(850億ドル)である。2025年までの投資総額10兆元(1兆4000億ドル)という目標を達成するには、毎年1兆6000億元(2270億ドル)が必要になるが、この水準には遠く及ばない。

 新型インフラプロジェクトのうち、最大の投資額となる分野が高速鉄道で、次いで5Gインターネット通信基地局、ビッグデータ処理産業が続く。高速鉄道は、飛行機の国内線の代替となることから、温暖化ガスの排出削減に寄与するものの、鉄道建設には鉄鋼やコンクリートが必要になる。

 UHV送電線は、主に中国北部・西部地域にある風力、太陽光、水力の発電所から、沿岸部の省・直轄市にある産業拠点への自然エネルギー由来電力の送電を目的としている。5Gやビッグデータ処理産業といったITインフラは、投資単位当たりの排出集約度が低く、サービス産業の成長を後押しするが、電力需要を押し上げる面もある。こうした投資の低炭素化効果は、中国の電源構成の継続的なグリーン化にかかっている。

 しかし、「旧型」のインフラへの大規模投資は続いている。2020年2月には、石炭火力発電所の新規建設に関する規制が幅広く緩和されるなど、早い段階から新規投資の創出を狙った動きがあったと見られる。石炭火力発電所に関しては、約1兆1000億元(1560億ドル)の投資額に相当する発電容量計206ギガワット(GW)分が現在、初期計画段階か建設段階にある。中国の現行基準では、石炭火力発電容量の上限が1100GWに抑えられているが、次期5カ年計画である第14次5カ年計画でこの上限を1300GWに引き上げることを提案しており、目下の発電容量追加もこの流れに沿ったものと言える。

 「新型インフラ」の建設プロジェクトが中国の経済成長パターンの転換に大きな影響を及ぼすのかどうかは、現時点ではまだ不明だ。結局のところ、徹底して環境負荷を抑えた経済対策を達成するには、今後一層の取り組みが求められる。中国の投資余力が低下している実態を踏まえると、さしあたり従来型のインフラ投資でおおむね事足りると考えられている可能性がある。


※この寄稿は、公益財団法人 自然エネルギー財団が、執筆者から許諾を得て翻訳を行った「How Green is China’s Post-COVID-19 ‘New Infrastructure’ Stimulus Spending?」(5 MAY 2020,  EAST ASIA FORUMに掲載された記事 )の非公式な邦訳版です。英語オリジナル版と日本語版に齟齬がある場合は、英語版の記述が優先されます。
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    ジョリット・ゴーセンズ:オーストラリア国立大学(ANU)クロフォード公共政策大学院エネルギー移行ハブのリサーチフェロー。また中国エネルギーポータルのクリエーター兼エディター。

    フランク・ヨッツォ:ANUクロフォード公共政策大学院気候・エネルギー政策センター教授・ディレクター。

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