コロナウイルス後の新しい社会を目指すニューヨーク州知事クオモさんの提唱するグリーン・ニューディール

村上 憲郎 村上憲郎事務所 代表取締役、大阪市立大学大学院 教授、ハイパーネット社会研究所 理事長、自然エネルギー財団 アドバイザー

2020年6月3日

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 今回のコロナ禍の世界的震源地の一つであったNY州で知事を務められておられるアンドリュー・クオモさんは、その初期における危機の冷静で科学的な見極め、対応体制の迅速な組織化、状況の推移に基づく柔軟で臨機応変な態勢再編成、等々により、米国の各州の中でも事態の安定化と患者数・死亡者数の抑え込みに成功しつつある州として、そのリーダーシップの評価が、日に日に高まりつつある方である。

 抑え込み後の次のステップとして、全米が所謂、reopeningと呼ばれる自粛緩和と経済活動再開に向けて動き始めている中で、NY州は、行政区として、郡と州の中間に位置づけられるregionと呼ばれる単位ごとに、その10のregionが、病床の空き30%以上、ICUの空き30%以上、等々の7つの厳しい条件を満たしたregionから、5月15日以降、慎重なreopenを実施して行っている。そのreopenも、ビジネスを、essentialで感染拡大low riskな産業から、essentialでなく感染拡大high riskな産業に、順に4つのグループに纏め、それらを、フェーズ1からフェーズ4という段階をおってreopenして行く形で進めている。次のフェーズに進めるかどうかという判断も、先の7つの厳しい条件を維持できているかどうかというデータに基づく科学的な判断に基づいてなされている。

 6月1日時点で、5つのregionがフェーズ2に移行を終えており、更に2つのregionが、フェーズ2に移行できるかどうかが判断されようとしている。最後に残されているのが、NY市regionで6月8日をreopenの目標日と設定し、7つの条件の達成に向けて最後のつめがなされている。

 ということで、NY州は、reopeningの次の段階の課題が話題にできる状況を迎え始めたこともあり、知事は、グリーン・ニュー・ディールとでも呼ぶべき新しい経済刺激策を連邦政府を巻き込んで提唱し始めている。大恐慌時にフランクリン・D・ルーズベルト大統領が打ち出したニュー・ディール政策を引き合いに出しながら、それに匹敵する公共事業を提唱し始めている。勿論、NY州知事という立場から、NY州に関係する公共事業に自己限定されておられるが、注目すべきは、その中に、大規模な再生可能エネルギー関連が含まれていることである。

1)    NY州のupstateと呼ばれる北部地域での再生可能エネルギー由来の発電力の開発
2)    それをdownstateと呼ばれる南部地域に送電する新たな送電網の建設
3)    カナダの再生可能エネルギー由来の電力をNY市に直接送り込む送電線の開設

 これらの詳細は、未だ明らかではないが、別途、Blue-Ribbon-Commissionと名付けれた16人の財界人メンバーで構成される諮問委員会が設立され、その議長に元グーグルCEOのエリック・シュミット氏が就任した。今後、民間セクターをどう巻き込んで、この構想の周辺領域を更に充実し、NY市を中心とした交通網の充実といった、別途提唱されている公共事業計画との連係を充実させる中から、NY州グリーン・ニュー・ディールの全貌が、徐々に明確になってくるものと期待されている。

 

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