気候変動の警鐘が世界中で鳴り響く中、2018年はまたもやアジア太平洋地域における石炭火力発電に関する記録的な年となった。この地域は現在、全世界の石炭火力発電量の72%を占めているが、1985年にはわずか17%であった。先進国の日本や韓国、そして新興経済国や途上国の中国、インド、インドネシアなど、いずれの国もが石炭火力の拡大に寄与してきた。
アジア太平洋地域における石炭火力発電の拡大は、とくに2008年以降、世界の流れに逆行している。例えば北米では石炭火力発電は933TWh減、欧州では233TWh減と大幅に減少しており、他の地域(アフリカ、独立国家共同体、中東および中南米の合計)も10TWh増とほぼ横ばいであった。これに対し、アジア太平洋地域では2,979TWh増と実に70%近くも増え、中国、インド、東南アジア(とりわけインドネシア、ベトナム、マレーシア)で最も大きな増加が見られた。 その一方で、アジア太平洋地域は、低炭素技術による発電を1,624TWhも拡大するという素晴らしい前進を記録している。そのなかで自然エネルギー(水力、風力、太陽光、バイオエネルギーおよび地熱発電)が占める割合は、98%以上だった。自然エネルギー発電が、この地域にとって持続可能な発展への最も確かな道筋であることは明らかである。 アジア太平洋地域で石炭火力発電の代わりに自然エネルギーの発展を加速させることは、気候変動に立ち向かう上で要となるであろう。これには、希望をもつことができる根拠が少なくとも2つある。1つ目は、自然エネルギーのコストが著しく低下し価格競争力が向上したこと。2つ目は、新興経済国が、先進国の過去の行いよりも環境負荷を抑えて発展できることを、今はっきりと示しだしていることである。
数十年にわたってフランス、ドイツ、米国などの先進国は、経済成長を維持しつつ、相対的に高かった一人当たりのCO2排出量を減らすことができた(2018年はそれぞれ4.7、8.8、15.7トン/人)。1970年代に起きた2度の石油ショックを経て、フランスは石油から原子力へ、ドイツは石炭から水力以外の自然エネルギーへ、そして米国は石炭からガスへの燃料転換を図り、エネルギー効率を改善してきたおかげでCO2排出量を減らすことができたのである。
中国では、1965~2009年の一人当たりのCO2排出量と国内総生産(GDP)の相関関係は線形的であり、まさに1960年代の米国の状況と類似する。しかし、早くも2011年以降、一人当たりGDPとCO2排出量の相関関係は失われ、CO2排出量は6.7 ± 0.15トン/人で安定している。
日本の一人当たりのCO2排出量は2012年まで着実に増加していた。しかしそれ以降は、エネルギー効率が改善され、省エネに取り組み、水力発電以外の自然エネルギーを拡大させたことで石油の消費量が大幅に減少し、排出量の水準はこれまでの過去最高の10.1トン/人から2018年には9.1トン/人まで低下した。これは、原子力発電による電力の消費量が福島事故前の水準をはるかに下回っているにもかかわらず達成されたのだ。
パリ協定で掲げられた目標を達成するためには、アジア太平洋地域、とりわけ域内の新興経済国は引き続きその優秀な学習能力を発揮し、先進国をしのぐ必要がある。中国に関する現在のデータはかなり期待を持つことができるものだ。中国が一人当たりのCO2排出量を低減させながら、さらなる経済発展を推し進めることを期待しよう。
アジア太平洋地域における石炭火力発電の拡大は、とくに2008年以降、世界の流れに逆行している。例えば北米では石炭火力発電は933TWh減、欧州では233TWh減と大幅に減少しており、他の地域(アフリカ、独立国家共同体、中東および中南米の合計)も10TWh増とほぼ横ばいであった。これに対し、アジア太平洋地域では2,979TWh増と実に70%近くも増え、中国、インド、東南アジア(とりわけインドネシア、ベトナム、マレーシア)で最も大きな増加が見られた。 その一方で、アジア太平洋地域は、低炭素技術による発電を1,624TWhも拡大するという素晴らしい前進を記録している。そのなかで自然エネルギー(水力、風力、太陽光、バイオエネルギーおよび地熱発電)が占める割合は、98%以上だった。自然エネルギー発電が、この地域にとって持続可能な発展への最も確かな道筋であることは明らかである。 アジア太平洋地域で石炭火力発電の代わりに自然エネルギーの発展を加速させることは、気候変動に立ち向かう上で要となるであろう。これには、希望をもつことができる根拠が少なくとも2つある。1つ目は、自然エネルギーのコストが著しく低下し価格競争力が向上したこと。2つ目は、新興経済国が、先進国の過去の行いよりも環境負荷を抑えて発展できることを、今はっきりと示しだしていることである。
数十年にわたってフランス、ドイツ、米国などの先進国は、経済成長を維持しつつ、相対的に高かった一人当たりのCO2排出量を減らすことができた(2018年はそれぞれ4.7、8.8、15.7トン/人)。1970年代に起きた2度の石油ショックを経て、フランスは石油から原子力へ、ドイツは石炭から水力以外の自然エネルギーへ、そして米国は石炭からガスへの燃料転換を図り、エネルギー効率を改善してきたおかげでCO2排出量を減らすことができたのである。
中国では、1965~2009年の一人当たりのCO2排出量と国内総生産(GDP)の相関関係は線形的であり、まさに1960年代の米国の状況と類似する。しかし、早くも2011年以降、一人当たりGDPとCO2排出量の相関関係は失われ、CO2排出量は6.7 ± 0.15トン/人で安定している。
日本の一人当たりのCO2排出量は2012年まで着実に増加していた。しかしそれ以降は、エネルギー効率が改善され、省エネに取り組み、水力発電以外の自然エネルギーを拡大させたことで石油の消費量が大幅に減少し、排出量の水準はこれまでの過去最高の10.1トン/人から2018年には9.1トン/人まで低下した。これは、原子力発電による電力の消費量が福島事故前の水準をはるかに下回っているにもかかわらず達成されたのだ。
パリ協定で掲げられた目標を達成するためには、アジア太平洋地域、とりわけ域内の新興経済国は引き続きその優秀な学習能力を発揮し、先進国をしのぐ必要がある。中国に関する現在のデータはかなり期待を持つことができるものだ。中国が一人当たりのCO2排出量を低減させながら、さらなる経済発展を推し進めることを期待しよう。