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日本の金融業界、石炭火力発電所新規融資の方針を明確化へ

大久保ゆり 自然エネルギー財団 上級研究員

2018年10月2日

in English 

 これまで石炭火力発電所を後押ししてきた日本の金融業界から、今後その融資を制限、もしくは慎重に検討していくとの方針が相次いで発表されている。海外では電源の中で二酸化炭素(CO2)排出量が最も多く、環境への負荷が大きい新規の石炭火力発電事業への融資、保険引き受けを停止する金融機関が増えている中、これまで日本はこうした動きに後れを取ってきた。

 銀行では、三井住友信託銀行が国内外の新規石炭火力融資を原則として取りやめるとし、邦銀の中では最も踏み込んだ方針を統合報告書の中に明記した。世界的にも石炭火力への融資金額の多い三大メガバンクの中では、みずほ銀行や三菱UFJ銀行が今後慎重に検討するとし、三井住友銀行は今後は超々臨界圧(USC)レベル以上のみを検討すると発表した。
保険会社では日本生命保険が国内外の新規石炭火力の融資を禁止するとしたのに対し、第一生命保険は今のところ海外のみの制限にとどまる。明治安田生命保険は超々臨界圧等の石炭火力事業であれば「高効率」として融資をするとしている。一方で、日本生命及び第一生命が石炭火力のプロジェクトファイナンスのみを禁止対象としたのに対し、安田生命は、整備会社など関連企業へのコーポレートファイナンスも禁止すると報道されており、プロジェクトのみならずそれに関わる事業者へも影響が広がる。

 これらの金融機関に加えて、商社の中で最も発電事業の設備容量が多い丸紅が、商社として初めて今後新規石炭火力事業に取り組まない方針を発表した。

表:石炭火力発電の新規融資に関する各社方針
出典:各社発表、報道より自然エネルギー財団作成

 パリ協定が求める脱炭素社会に向けた流れの中で、石炭火力事業からのダイベストメント(投資撤退)は世界的に広がっており、日本の金融機関も無視できない状況になってきたと言える。2018年9月12~14日までサンフランシスコで開催された「非国家アクター」の気候変動アクションサミットでは、連日のように機関投資家を含む非国家アクターより、気候変動への積極的な取組のアナウンスメントが競い合うように発表されていた。責任投資原則(PRI)の会議も同時に開催され、日本からも金融関係者が50名参加していたことからも、その関心の高さが伺える。今後も国内でこのような発表が増え、更に内容が厳格化される可能性は十分にある。

 一方で、これらの方針発表には適用例外も示されている。三井住友銀行は、日本政府案件や国際開発機関等が支援する石炭火力発電所新設プロジェクトは、例外として慎重に対応を検討するとしている。丸紅も、日本政府が支援するものなどは適用除外の可能性を示している。
「高効率」と称しても、石炭火力はガス火力の2倍の二酸化炭素排出量がある。それでもこのような例外を設ける背景には、日本政府が石炭火力を重要な電源として位置づけ、超々臨界圧の石炭火力は「高効率」であるとして国内外の促進に積極的な方針であることがあると考えられる。7月に改正されたエネルギー基本計画では、石炭火力と原子力発電を長期に渡って使い続けるとし、自然エネルギーについては「主力電源化」と述べながら、2030年に22~24%という世界標準の半分程度の低い目標を変更しなかった。

 しかし、国内がこのような政策であっても、金融機関から上記のような発表が相次ぐ背景としては、世界的な自然エネルギーの急速な低コスト化と普及が進んでいる現状がある。機関投資家としては、電源の約8割を火力発電に頼り、今後も石炭火力に拘る日本の政策で、将来の国内企業の炭素生産性やエネルギーコストの差が海外と広がることへの懸念はぬぐえないのではないか。中長期的にみれば、競争力、電力需要予測、政策コストなど、どれをとっても石炭火力事業は融資側にプラスになるような情報は少ない。短期的な残存者利益をねらう事業者と連携するとしても、石炭火力向け融資の残高が大きいほど投資家のマイナス評価につながる時代がこようとしている。

 各社からの新規石炭火力融資方針の発表が、実際にどのように実施、適用され、今ある新規石炭火力事業計画に影響してくるか。これまで世界的に見ても化石燃料電源への融資金額が大きかった日本の金融機関の動きが注目される。
政府の方針が動かない中で、ファイナンス側が方針を決めれば、実質的にはそれがスタンダードになる。日本の2050年に向けた長期戦略策定は、このような金融機関の発表も踏まえ、最もCO2排出の多い石炭火力電源の早期フェーズアウト期限を明確に設けるべきではないか。日本政府からは、座礁資産化が懸念される石炭火力からの脱却と、脱炭素社会に向けた国内市場を育てる方針を打ち出すことが求められている。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギーで豊かな日本を創ろう!アクション
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织