[レポートの概要]
近畿地方を中心に広域で鉄道を運行するJR西日本(西日本旅客鉄道)が、自然エネルギーの電力の利用拡大に取り組み始めた。新大阪と博多を結ぶ山陽新幹線の運転用として、太陽光発電の電力を長期に購入する契約を締結した。フィジカルPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)と呼ぶ調達方法で、新たに建設するJR西日本専用の太陽光発電設備から大量の電力を購入する(図1)。
図1.新幹線の運転用電力を供給するフィジカルPPA
発電規模は推定で90MW(メガワット=1000キロワット)になり、国内のフィジカルPPAでは最大級だ。JR西日本は2027年度に新幹線の運転に使用する電力量の10%を自然エネルギーに切り替える計画である。さらに在来線の運転用の電力についてもフィジカルPPAを締結して、2023年度から自然エネルギーに切り替えていく。
大量の電力を使用する鉄道事業、自然エネルギーでコストの増加も抑制
JR西日本のエネルギー消費量のうち、約40%が新幹線の運転用の電力で、同様に約40%を在来線の運転用の電力が占める(図2)。そのほかの業務用の電力と合わせると、年間の電力使用量は32億kWh(キロワット時)にのぼる。電力の使用に伴うCO2排出量は膨大で、購入コストも多額になる。
図2. JR西日本のエネルギー消費量(2021年度、単体)
JR西日本はグループ全体で2050年にCO2(二酸化炭素)の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目標に掲げて、これから継続的に排出量を削減していく必要がある(図3)。CO2が原因になる地球温暖化で自然災害が増加すると、鉄道事業に重大な支障を及ぼす。加えて電気料金の高騰によるコストの増加が収益を圧迫する。自然エネルギーの電力を増やしてCO2排出量の削減を進めるのと同時に、コストが低下してきた太陽光発電の電力を長期契約で購入して収益の改善を図る。
図3.JR西日本グループのCO2排出量(スコープ1・2、年度)
その一方で電力使用量の低減にも取り組む。省エネ型の車両の比率を100%に近づけるほか、最先端の技術を活用して駅の省エネ対策を推進していく。西日本で最大の大阪駅では、2025年春の全面開業に向けて「うめきたエリア」の開発が進行中だ。各種の省エネ技術に加えて、次世代の太陽光発電技術として注目が集まるペロブスカイト太陽電池を導入する(図4)。フィルム型で軽量のペロブスカイト太陽電池の導入効果をいち早く実証して、これまで太陽光パネルを設置できなかった鉄道の施設に展開する方針だ。
図4.大阪駅(うめきたエリア)に導入するエネルギー関連設備・技術