先進企業の自然エネルギー利用計画(第26回)東急不動産、すべての保有ビルに自然エネルギーの電力2023年にRE100達成へ

石田 雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(ビジネス連携)

2023年5月31日

[詳細レポート]
先進企業の自然エネルギー利用計画(第26回)
東急不動産、すべての保有ビルに自然エネルギーの電力
2023年にRE100達成へ

 東京・渋谷(写真1)を中心に日本全国に200棟以上の施設を保有する東急不動産は、すべての保有ビルで使用する電力を2022年末までに自然エネルギー100%へ切り替えた。2023年には年間を通して自然エネルギーの電力100%を達成できる予定だ。オフィスビルのほか商業施設や物流施設で自然エネルギー100%の電力を利用できるようにして、自社だけではなくビルに入居するテナントの脱炭素化にも貢献する。気候変動の抑制とともに、脱炭素に先進的に取り組む企業をビルの入居者として獲得しやすくなる。

写真1.東急不動産の保有ビルが数多く建つ東京・渋谷の中心部 出典:東急不動産

全国に自然エネルギーの発電所を建設、自社と顧客で長期に利用可能

 東急不動産が自然エネルギーの電力を調達する方法は明快だ。みずから発電所を開発・保有して、発電した電力を自社で利用するか顧客に提供する。2022年12月末の時点で稼働済みと開発中の発電所を合計すると86カ所になり、設備容量は1389MW(メガワット=1000キロワット)に達する(図1)。東急不動産が自社で1年間に使用する電力量(約3億kWh)を大幅に上回る発電量になる。

図1.全国各地に展開する自然エネルギーの発電所(2022年12月末時点、他社と共同で保有する発電所を含む) 出典:東急不動産

 発電した電力はFIT(固定価格買取制度)で売却する場合もあれば、FIP(フィードインプレミアム)の認定を受けた発電設備の電力を環境価値(CO2を排出しないなどの価値)とともにコーポレートPPA(電力購入契約)で顧客企業に供給するケースもある。FITで売却した場合でも、非化石証書を購入して自社の発電所の属性情報(トラッキング)を付与して事業所で使用する。属性情報をもとに環境負荷や持続性を確認できる自然エネルギーの電力として利用することが可能だ。運転開始日を把握できるため、国際イニシアティブのRE100が求める要件(運転開始から15年以内)も満たせる。

ソーラーシェアリングで短期契約のコーポレートPPA

 顧客企業と結ぶコーポレートPPAでは、大手百貨店の高島屋と締結した事例が先進的だ。東急不動産の子会社が埼玉県の東松山市で運転するソーラーシェアリング(営農型の太陽光発電)の電力を、高島屋の店舗に2023年4月から供給開始した。定格容量は0.4MWで、太陽光パネルの下でニンジンやブルーベリーなどを栽培している(写真2)。

写真2.ソーラーシェアリングによる太陽光発電所(埼玉県東松山市) 出典:東急不動産

 注目すべきはコーポレートPPAを2年間の短期で契約したことである。コーポレートPPAは発電事業者が投資を回収できるように、15年から20年の長期契約で締結する方法が一般的だ。FITと同様に固定価格で長期に電力を売却できれば、投資を回収しながら利益を生み出せる。一方で電力を購入する企業にとっては長期のコストを抑制できるメリットがある半面、電力を利用する拠点を変更できないといったリスクがある。電気料金が大きく変動する状況の中で、長期に購入価格を固定することに対して社内のコンセンサスを得られない場合も多い。

 東急不動産は短期契約によるコーポレートPPAを通じて、顧客企業が導入しやすく、発電事業者のリスクも低減できる契約方法を実証していく。最初の2年間の契約期間が終了する時点で、契約年数や価格を含めて両者で協議して継続を判断する。双方にメリットがあれば、3年目以降も契約を更新して、最終的には長期のコーポレートPPAになる可能性がある。東急不動産と高島屋は短期契約のコーポレートPPAの対象になる太陽光発電設備を合計で4MWに拡大することで合意している。このプロジェクトの結果によって、同様の契約が他の企業にも広がっていく期待は大きい。

 さらに太陽光発電だけではなく、陸上風力発電や洋上風力発電などの開発を全国各地で加速させる。保有するビルで使用する電力を自然エネルギー100%で供給して顧客を拡大しながら、不動産会社の新規事業として自然エネルギーによる発電事業に取り組み、脱炭素による事業成長を実現させる方針だ。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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