
このほかに2019年2月に栃木工場と豊橋工場にも太陽光パネルを導入 出典:花王
小売電気事業者から購入する電力を自然エネルギーに切り替えるのと並行して、工場や倉庫に太陽光発電設備を導入して電力の自家消費にも取り組んでいく。すでに国内と海外の10カ所で、太陽光発電による電力の自家消費を実施している。現在のところ栃木県の工場に設置した太陽光発電設備が最大である。2棟の生産棟の屋上に、合計で1500kW(キロワット)の発電設備を導入した(写真1)。購入する電力も自然エネルギーに切り替えて利用率を高めている。

非化石証書にトラッキング情報を加えた電力を購入
自然エネルギーの電力使用率が100%に達した愛媛県の工場でも、太陽光発電による自家消費と購入電力を併用する。太陽光発電の規模は334kWで、購入する電力は「FIT非化石証書」を組み合わせたものである。FIT非化石証書は固定価格買取制度(FIT)で買い取られた自然エネルギーの電力の環境価値(CO2を排出しないなどの効果)を企業などが利用できる新しい調達方法だ。
花王が採用するFIT非化石証書には、証書の元になる自然エネルギーの発電設備に関する情報(トラッキング情報)が追加されている。発電設備を特定できるFIT非化石証書であれば、環境負荷の低い方法で発電した電力の環境価値であることを確認できる。企業が自然エネルギーの電力を100%使うことを推進する国際イニシアチブのRE100でも、発電設備の情報を追加したFIT非化石証書を認定の対象にしている。
愛媛を含む国内5カ所の工場では、2018年から自然エネルギーの電力を使い始めた。神奈川県の小田原市にある工場では水力発電100%の電力を購入している。海外の工場を加えると、全世界で購入する電力のうち15%が自然エネルギーになった(図2)。2030年までに、購入電力の全量を自然エネルギーに切り替える予定だ。

100%に向けて残る課題は、工場の中で電力と熱を供給するコージェネレーション(コジェネ)システムである。天然ガスなどの化石燃料を使っているためCO2を排出する。コジェネの燃料を生物由来のバイオガスに切り替えることができれば、花王グループで使用する電力は自然エネルギー100%になり、CO2排出量も大幅に減る。工場の周辺にある下水処理場で作られるバイオガスの調達などを検討していく。