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国内バイオエネルギーの活用に向けて
世界の最良の取組と日本の実践から学ぼう

2018年6月28日

トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長

in English

日本は、国内のバイオエネルギーをもっと用いて、電力、熱、そして自動車燃料を供給することができる。化石燃料よりも低コストなバイオエネルギーを供給するために、日本のバイオエネルギー産業界は、世界の最良の取組から学ぶべきであるが、それだけではなく、実践の機会を得て、自身の経験からも学ぶべきである。自然エネルギー財団が、2018年4月に発表した報告書「日本のバイオエネルギー戦略の再構築」は、まさにこの点を強調したものである。

現在のところ、バイオエネルギーを用いた発電計画のほとんどが、輸入バイオマスを用いることが想定されている。この機会は妨げられるべきものではないが、同時に国内のバイオマス供給のポテンシャルを発展させることが望ましい。

まずは入手できる最も安いバイオマスを使おう。多くの場合、それはバイオマス系の廃棄物と残渣である。廃棄物は、古紙か廃材が主なものである。残渣には、木材産業で発生するおが屑や樹皮、パルプ産業から出るリグニンや樹皮、黒液、製紙工場のスラッジ、農業や食品加工業で発生するバイオマスの一部などがある。

当初、これらの燃料の効率的な燃焼は困難であったが、いくつかの国では、経験と技術発展により、競争力のあるエネルギー源へと発展した。

燃料の供給ポテンシャルが十分あり、外部の市場へ供給できるときは、産業部門でのエネルギー効率を高めることにインセンティブが設けられてきた。単に工場内部で燃焼して電気と熱の自家消費分を賄うだけではなく、外部の顧客への販売を可能にしてきたのである。過去25年間に渡り、スウェーデンの木材産業は、燃料と電力の大口購入者から、電力、熱そしてバイオ燃料の正味販売者へと変貌した。

電力生産のためにバイオマスを燃焼させる時、競争力確保のためには、地域熱供給網を通じて産業や家庭に熱を供給することで、発電所からの冷却水(排熱)に課金できることが不可欠である。そのようなシステムにおいては、バイオエネルギーの3単位分は、既存の火力発電所で用いられる石炭エネルギー3単位分を代替するだけではなく、熱電併給プラントの冷却水を使った地域熱供給により家庭のストーブで用いられる石油エネルギー2単位分を代替することができるだろう。

このような熱電併給システムは、より効率的で収益が高いだけではなく、燃料代のかからない太陽光や風力が大量に導入された電力システムに対して、柔軟性を提供することができる。太陽光や風力により大量の電気が利用できる際には、電力価格は燃料費よりも安くなるため、電力を使って地域熱供給網に対する熱供給が可能になる。そして、電気が希少で貴重である時間帯においては、熱電併給プラントが替わりに電気を供給することになる。風力が年間の電力のほぼ半分を供給しているデンマークでは、バイオマス燃料を用いた熱電併給プラントは、全ての電力と熱の供給を完全に国内由来のものにするための調整を可能にするという点で、最も重要な電力システムの一つであるとみなされている。

日本におけるバイオマスの主要な供給源は、林業セクターになるだろう。豊かで高い収入のある欧州の国々において、林業の副産物をエネルギー利用することは、林業セクターに高い収入機会を与えることが実証されており、林業の競争力を強化する。木材産業のために伐採された樹木のおよそ半分しか、紙や製材製品にならない。残りは、生産プロセスの各工程において残材となるが、第一にその多くが森林内にある。森林所有者は、この木材の残りの支払いを受け、収入は増加し、林業はより強い競争力を持つ。

間伐や主伐からの残材の収集、チップ化、輸送のプロセスは、年を経て非常に効率化された。経験の蓄積に基づく技能によって、実現してきた。しかし、林業専用の機械のために発達したインフラストラクチャーと、森林地域において設立された専門企業の活動が基盤となっている。

バイオエネルギーは、補助金が全くなくても、もしくは、化石燃料への課税がなくても、化石燃料と競争可能である。しかし、それには、いくつかの国々で発展してきた技能と技術が有用である。日本は世界の最良の事例から学ぶことができる。しかし、実践と経験に基づく学習もまた不可欠である。世界の他の国が数10年を要したところを、日本においては、数年で成し遂げることができるだろう。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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