エコデザイン規則(ESPR)の基本構造と日本への影響EUは「グリーン鉄」をどう評価するのか

2026年7月17日

in English

EUのクリーン産業ディールでは、CO₂排出の少ない製品が市場で選ばれる仕組みをどのようにつくるかが重要な課題となっています。今年3月に提案された産業加速法でも、公共調達や公的支援において排出量の少ない素材を優遇する仕組みが議論されており、その基準となり得るのが、エコデザイン規則(ESPR)の枠組みにおける鉄鋼製品の環境性能評価です。

現在、鉄鋼製品のカーボンフットプリント(CFP)を算定し、環境性能をAからEまでのクラスで示す仕組みが検討されています。一方で、化石燃料を使う製鉄ルートが上位クラスに入り得ることや、排出量だけで資源循環やエネルギー利用を十分に評価できるのかが議論となっています。

エコデザイン規則に基づく鉄鋼製品の環境性能評価は、日本の鉄鋼業に新たな課題と機会をもたらします。製品ごとの実際の排出量を把握することは、炭素国境調整措置(CBAM)への対応だけでなく、公共調達や低炭素鋼材市場で日本製品の価値を示すためにも重要です。特に、2030年に向けて大型電炉で生産される高品質な鋼材を、実際に排出量の低い「低CFP鋼材」としてどのように評価し、市場につなげるかが問われます。本稿では、EUによる鉄鋼評価の仕組みと論点を整理し、日本企業がこうした政策展開をどのように活かせるのかを考察します。

<目次>
1.はじめに
2.サーキュラーエコノミーから見るエコデザイン規則の基本構造

 2.1 循環型経済政策としてのエコデザイン規則    
 2.2 ライフサイクル思考と製品の評価項目
 2.3 性能要件と情報要件
 2.4 対象として位置づけられた鉄鋼製品
 2.5 産業加速法案による低炭素製品市場の形成
3.鉄鋼製品の環境性能クラス分け(JRC案)
 3.1 JRCドラフトレポートの位置づけ
 3.2 カーボンフットプリントに基づく性能クラス設計
 3.3 対象製品とシステム境界
 3.4 参照設備シナリオの設定
 3.5 A〜E性能クラスは何を示すのか
 3.6 性能クラスの政策的意味
4.JRCドラフトレポートをめぐる主な論点
 4.1 上位クラスの基準は低炭素製鉄への移行を促すか
 4.2 製品カーボンフットプリントを単一指標とする評価の限界
 4.3 CBAMデフォルト値と輸入品評価の問題
 4.4 スクラップ利用を考慮した評価設計をめぐる議論
5.日本に求められる対応:GXスチールから「低PCF鋼材」へ
 5.1 GXスチールではなく、製品単位の「低PCF鋼材」として示す
 5.2 デフォルト値から実排出データへ
 5.3 公共調達とIAA:低炭素鋼材の需要創出
 5.4 日本での大型電炉への移行をどう生かすか
参照文献



<関連リンク>
コラム 欧州における重工業の脱炭素化に向けた最新の政策動向:産業加速法(Industrial Accelerator Act)を読み解く(2026年4月1日)
報告書 脱炭素を軸とした競争力戦略の展開:欧州の産業政策の方向とGX政策への示唆(2025年7月9日)
特設ページ  重化学工業の脱炭素化
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织