公益財団法人 自然エネルギー財団は、3月11日に公表したインドネシアの電力脱炭素化の現状と課題を分析したレポート「Southeast Asia Power Sector Decarbonization: Country Case Study – Indonesia」の日本語版を公表しました。[2024.7.5 更新]
インドネシアは、東南アジア最大の人口と経済規模を誇り、同地域で最も大きな電力システムを有しています。これまでインドネシアの経済成長は石炭火力発電によって支えられ、日本が稼働中の石炭火力容量の少なくとも5分の1(約11GW)に資金を拠出してきました。その半分は2022年以降の稼働であり、今後25年間の売電契約が結ばれています。しかし、化石燃料の中でも最も汚染度の高いこの燃料に依存し続けることは環境的に持続不可能であり、同国が2060年に掲げるネットゼロ目標とも相容れません。
一方でインドネシアは、その市場規模と石炭火力への依存度の高さから、日本政府が主導する2つの国際的イニシアティブ、「アジア・ゼロエミッション共同体」と「アジア炭素回収・利用・貯留ネットワーク」を実現していくためのテストケースとして注目されており、合わせて20以上の発電用アンモニアや炭素貯留の実現可能性事業が進行しています。しかし現在実施されている事業は高コストでシンボリックな意味合いが強く、これらの技術導入の道筋は見えません。
電力部門に焦点を当てた本レポートでは、インドネシアにはほとんど手つかずの膨大な自然エネルギー資源と活用ポテンシャルが存在し、エネルギー転換による新たな産業育成の可能性があることを示しています。これを活かすためには、自然エネルギー拡大を見据えた中期的な脱炭素化政策の強化、石炭火力依存の脱却、電力システム改革、そして送電網の拡大の4つの課題を乗り越えなければなりません。
自然エネルギー財団は本レポートを通じて、日本の化石電源継続利用に向けた追加投資戦略の妥当性を問い、日本が石炭火力投資側として早期停止に向けた役割を担い、これまで培ってきたインドネシアとの強いパートナーシップを存分に活かして自然エネルギーの成長に一致団結して取り組むことの重要性を問いかけています。
[2024.7.5 日本語版追加]
インドネシアの電力部門の脱炭素化 (日本語版)
<目次>
はじめに
第1章 東南アジアに対する日本の脱炭素化戦略
1. 「アジア・ゼロエミッション共同体」および「アジアCCUSネットワーク」:化石電源継続利用の構想
2. インドネシアにおける「アジア・ゼロエミッション共同体」に関連したアンモニア事業
3. インドネシアにおける「アジアCCUSネットワーク」に関連したCCS事業
第2章 インドネシアの自然エネルギーの大きな可能性
1. 未開拓の豊富な自然エネルギーのポテンシャル
2. 化石燃料電源に対するコスト競争力
3. 自然エネルギーのシェア拡大と収益向上
4. エネルギー転換による産業育成の実現
第3章 インドネシアにおける自然エネルギーの導入拡大のために克服すべき4つの課題
1. 中期の脱炭素化政策の強化
2. 石炭火力依存の脱却
3. 電力システム改革の推進
4. 国際的な電力網の拡大
おわりに