2050:自然エネルギーによる脱炭素化のための送電網のあり方

2023年4月7日

in English

本日、公益財団法人 自然エネルギー財団は、研究報告書「自然エネルギーによる脱炭素化のための送電網のあり方」を公表しました。

自然エネルギー100%による電力供給を実現し、脱炭素社会を構築するためには、国内に広く分布する自然エネルギーポテンシャルを有効に活用し、発電所から需要地まで効率的に送電するシステムが不可欠です。

自然エネルギー100%を支える送電システムとはどのようなものなのか? 自然エネルギー財団は、学識経験者など専門家による研究会(以下、送電網研究会)を設置し、2050年に自然エネルギーによる脱炭素を前提とした送電網の構築、実現のための投資スキーム、柔軟な需要側対策やそれを実現するインフラなどについて検討を進めてきました。本報告書は、送電網研究会の議論をもとに、自然エネルギー財団にてとりまとめたものです。

本報告書が、日本において自然エネルギーによる脱炭素化の実現へ寄与することを期待しています。

自然エネルギーによる脱炭素化のための送電網のあり方 全編(29.6MB)

<目次>

はじめに
第1章:自然エネルギーの導入を加速する送電網強化に関する議論の状況
 第1節:世界の動き
 第2節:2050年カーボンニュートラルに向けた送電網マスタープラン
P.1-10 (2.3MB)
第2章:自然エネルギーによる脱炭素化のための送電網および柔軟な需要
 第1節:OCCTOマスタープラン再現シナリオの分析
 第2節:自然エネルギー100%シナリオにおける分析
 第3節:カーボンニュートラルを見据えた送電網増強と柔軟な需要の将来像
P.11-62 (10MB)
第3章:送電線投資スキームの検討
 第1節:洋上風力発電開発における送電線整備スキーム
 第2節:洋上風力発電と国際連系線を組み合わせる動き
 第3節:日本における洋上風力開発と地域間連系線の同時整備の可能性
おわりに  
P.63-79 (2.8MB)
参考文献一覧
 補足資料1 「OCCTOマスタープラン再現シナリオ」における分析結果
P.80-96 (6.3MB)
P.97-114 (9.6MB)
 補足資料2 「自然エネルギー100%シナリオ」における分析結果 P.115-126 (7.1MB)

研究方法

電力広域的運営推進機関(以下、OCCTO)が2023年3月に公表した「広域系統長期方針(広域連系系統のマスタープラン)」を再現したシナリオ(OCCTO再現シナリオ)と、自然エネルギー財団、ドイツのシンクタンクであるアゴラ・エナギーヴェンデ、およびフィンランドのラッペンランタ工科大学が2021年に発表した共同研究「Renewable Pathways to Climate-neutral Japan」の結果をベースにしたシナリオ(自然エネルギー100%シナリオ)の2つを設定し、沖縄を除く一般送配電事業者(以下、TSO)エリアと地域間連系線を考慮した電力需給シミュレーションを実施しました。

主な結果

・2050年に自然エネルギーが電力供給の50%程度を占めるOCCTO再現シナリオにおける分析結果は、「広域連系系統のマスタープラン」 とほぼ同等の結果が得られた。一方、電力供給における自然エネルギー比率をさらに高めた自然エネルギー100%シナリオでは、「マスタープラン」に示された容量以上の増強が必要との結果となった。例えば、北海道~東京TSOエリア間には少なくとも12GW程度の増強が必要であることが示された。

・「柔軟な需要」(EVへの充電や熱製造、水素製造など)や蓄電池が、自然エネルギーによる発電量が需要量を上回る場合、どの程度有効に働くかの分析も併せて行った。「柔軟な需要」や蓄電池は、送電線増強による便益が少ない場合にも、追加的に便益を発生させ得る手段であると確認できた。「柔軟な需要」を大規模に活用するためには、これらを安価に調達・運用する必要があり、需要家へのインセンティブの与え方や、それを促す規制や制度などの整備が必要であることがわかった。蓄電池については、現時点で想定可能な2050年の価格および寿命では、送電線増強に対して経済性が劣るものの、技術の進展次第で状況が変わる可能性もあるとわかった。

・欧州では、洋上風力発電による電力を陸地まで送る海底送電線や、地域間を結ぶ連系線を、いずれも送電事業者がイニシアティブをとって整備する事例が生まれ始めている。日本においても洋上風力発電と送電線整備とを同時に進める手段として、洋上風力発電の設置場所を考慮した地域間連系線の設置や、本土と系統連系していない離島をハブとした送電網の構築により、トータル投資コストを抑制しながら送電網整備を進める提案を行った。
 

自然エネルギーによる脱炭素化のための送電網研究会

座長 高橋 洋  都留文科大学 地域社会学科 教授 ※2023年4 月より 法政大学 社会学部社会政策科学科 教授
委員

加藤 仁  日本風力発電協会 代表理事
橘川 武郎 国際大学大学院 国際経営学研究科 教授
辻 隆男  横浜国立大学大学院 工学研究院 准教授
松村 敏弘 東京大学 社会科学研究所 教授
分山 達也 東京工業大学 環境・社会理工学院 准教授
大林 ミカ 自然エネルギー財団 事業局長

 オブザーバー

岡本 浩  東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長
三輪 茂基 ソフトバンクグループ株式会社 CEOプロジェクト室 室長 / SBエナジー株式会社 代表取締役社長

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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