スタッフインタビュー企業で得た知見を、より広い視点で大きなゴールに活かせる仕事石原 寿和 上級研究員

2024年7月16日

長く勤めた会社を退職する目前に、それまでの知見が活かせ、自分の原点にもつながる社会貢献のできる調査研究が行えるということで、自然エネルギー財団への転職を決めた。

スタッフプロフィールをみる

エネルギーには高校時代から興味

高3の夏、盲腸で入院したことがありました。その際、手にとったのが『核融合への挑戦』という本でした。プラズマや原子力に興味が沸き、大学ではその分野に進みたいと父に相談したところ、「原子力はまだ将来未知数。まず基礎となる機械工学を学んだ上で考えては」とアドバイスされ、父と同じ機械工学科に進みました。

大学で勉強したり友人と議論するにつれ、巨大科学の課題についても強く認識するようになりました。そんなときに、エイモリー・B・ロビンス氏が提唱するソフトエネルギーパスを知り、その実現が重要と考えるようになりました。現在、そのエイモリー氏が理事を務める自然エネルギー財団で仕事ができ、自分の原点にもつながっています。

エネルギー分野の知見を活かし、さらなる社会貢献を求めて定年目前に転職

大学で伝熱工学を学び、大学院では水素燃焼を研究した後、当時太陽電池と熱利用両方の研究開発を行っていた三洋電機(現パナソニック)に入社しました。国の研究開発プロジェクトや、自然冷媒を用いた給湯器(エコキュート)の開発をはじめ、会社では一貫してエネルギー分野の研究開発に関わることができました。また、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)への出向を通し、産業分野の省エネ技術や関係者との広いネットワークも得ました。

出向後は、パナソニックのR&D企画部門で産学連携や国のプロジェクト活用、中長期テーマの企画を担当しました。メーカーとして、将来の有望分野をいち早く見極め、国の方針や海外の状況を踏まえて研究開発テーマとして提案するのが仕事でした。その際に参考にしていたのが、自然エネルギー財団のシンポジウムやレポートです。既存技術で今できることとその効果を、世界の動向や事例を基に具体的でわかりやすい提案がされていたのが印象的でした。定年の65歳が近づいたときに、自分にもそれまでの経験を活かすことができるのでは、と考え、思い切って応募しました。実際に入ってみると、少数精鋭のチームで多くの質の高い発信を行っていることに驚きました。

広がった視野、やらねばならないことの大きさを実感

私が今、担当しているのは、自然エネルギー電力だけでは対応できない高温の熱源や長距離輸送用燃料としての水素やアンモニア、合成燃料、合成メタンの可能性と課題の調査で、熱や燃焼技術の知見や経験が活かせています。環境NGOというと、若い世代の活動と考える人も多いかもしれません。しかし、財団に入ってみてわかったのは、財団をはじめ世界には大学や行政機関で実務経験と実績を積み、博士号も持つ多くのベテラン研究員が在籍する、専門家集団としての環境NGOが数多く存在するということです。そして、それぞれがデータに基づいた社会にも影響力のある政策提言を行っています。日本では、財団以外にこのようなNGOはまだあまりないのが現状ですが、世界の動向を踏まえると、その活動は今後さらに必要とされるものと考えています。

自然エネルギー財団は利害関係なくニュートラルな立場から、日本のエネルギー政策のあるべき姿を考えています。企業に身を置いた者として、環境負荷のない未来の社会を実現し、将来の産業競争力強化に寄与する提言の実行と現行ビジネスとの間には、多くのギャップが存在することも理解できます。しかし、環境対応という世界の大きな流れに逆らっては、グローバルビジネスだけでなく国内の事業継続も困難になると考えます。実際、私が以前所属していた企業は、20年前は2次電池の分野で圧倒的な世界1でした。しかし今では中国や韓国企業がEV用電池で世界の上位を占めるだけでなく、EVメーカとしてもトップになっています。このような変化を目の当たりにした技術者として、自社や自分の業界を超えた世界の動向を把握し、対応することの重要性を実感しています。今、日本独自といわれる技術やビジネスが、同じ道を歩まないか、という危機感もあります。

一方、日々忙しく多くの業務に追われる企業やメディアの担当者には、海外の動向や背景、技術を調べ、日本のエネルギー政策に対する意味や影響を考える時間は、十分確保できないのではないかと想像します。そのためにも、私たちがその判断材料のひとつとして発信する意義があると考えています。

自然エネルギー財団はゴールを目指して異なるポジションが自由に動き回るサッカーに似ている

 次3年の自身の目標(ゴール)や研究の方向性の提案
 財団研究チーム内ワークショップ(2024年7月・東京)

今現在、既存の企業には耳の痛い内容であっても、日本として世界が目指すゴールに近づくための提案を、社内事情や業界の縛りのない立場で行うのがこの財団の姿勢だと感じています。スタッフ全員が、エネルギーに関する理念や哲学を含めた同じ目標(ゴール)を共有し、それぞれ異なる専門分野を任され、全体の動きを見ながら前に進む、まるでサッカーチームのようです。提言に対して強い向かい風が吹くことも少なくありませんが、そのような場合も、事実をもとにした対話による相互理解を目指しています。

海外専門家とのディスカッション
(2024年4月・韓国)

また、今の仕事でやりがいを感じられることのひとつに、発信したレポートが国内外を問わず多くの人にアクセスされ、海外の研究者からコンタクトがあったり、メディアの取材を受けたりと、活動の成果が実感できることがあります。財団は組織の規模(人数)は少ないものの、組織も個人も社会や世界に対する存在感と発信力が大きく、大企業の一員ではなかなかできなかったことでもあります。レポートなどの発信に向け、インタビューを通じた国内外の情報収集や関連分野の委員会傍聴やセミナーの聴講を日々行っています。海外のNGOのイベントでは、結構シニアの研究員もいて励みになります。

仕事をサッカーに例えましたが、対象とするフィールドは広く、現在のスタッフだけでは手が回らない分野が多いことも事実です。そのため、産業界での経験を持つ方には、それぞれに適したポジションがきっと見つかると思います。私は、この年齢になって「日々、社会貢献のための勉強と発信」という仕事が行えることを、とても幸せなことだと感じています。

スタッフインタビューページ

採用募集情報

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

当サイトではCookieを使用しています。当サイトを利用することにより、ご利用者はCookieの使用に同意することになります。

同意する