年頭コラム自然エネルギーで脱炭素への新しいスタートを

大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事

2025年1月1日

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 明けましておめでとうございます。

 昨年、2024年の1年間で、世界全体では600GW近い太陽光発電が新たに導入されたと見られます。これは、2023年より3割近い増加です。2020年の増加量は150GWだったので、わずか4年で年間導入量が4倍になったことになります。国際エネルギー機関は、太陽光発電の導入は更に勢いを増し、2040年には世界全体の電力の40%を供給するというネットゼロシナリオを公表しています。風力などを含めた自然エネルギー全体では85%となります。

 政府は、昨年末、エネルギー基本計画案を公表しました。自然エネルギーを最大の電源にするとしていますが、その割合は2040年で4~5割。これは欧州では既に現在実現している水準ですから、政府案では欧州の15年遅れになってしまいます。

 日本でのこれからの太陽光発電開発のフロンティアは営農型とともにルーフトップですが、この点ではドイツの取組みが参考になります。ドイツは今、経済的・社会的に大きな困難に直面していますが、そんな中でも自然エネルギー拡大が続いています。太陽光発電の年間導入量は2015年には1.3GWまで減少しましたが、2023年には14GWへとほぼ10倍に。2024年は更に増えて17GW程度になったと見られます。
 注目すべきは、その6割以上がルーフトップだということです。日本でも今年4月から、東京都と川崎市で住宅メーカーへの太陽光発電設置義務が始まります。国のレベルでも、ペロブスカイトの量産化を待つのではなく、施策の強化、いろいろな工夫で導入を加速していくことが期待 されます。

 エネルギー基本計画案は、自然エネルギー目標を4~5割にとどめたので、同時に提案された2040年までの温室効果ガスの73%(2013年比)削減目標を実現するためには、電力の3~4割を供給するとした火力発電からのCO2排出をほぼゼロにすることが必要な計画になっています。
 このレベルの排出削減を実現するためには、CO2を回収・運搬・貯留の全過程を通して90%以上削減できるようなCCSを実現するか、水素やアンモニアの専焼発電をするしかありません。これらの方法は技術的に実現の目途が立っていないだけでなく、仮に実現できたとしても高コストになってしまいます。政府のコスト検証の結果によっても、1kWhあたりの発電コストは、23.1~29.9円とされています。

 日本の自然エネルギー発電は2023年でまだ全体の23%。その導入速度を2倍、3倍に加速していくためには、設置を容易にするための制度改革、蓄電池も活用される市場の仕組みづくり、送電線増強の加速など、様々な取組みが必要です。いずれも簡単な課題ではありませんが、脱炭素化へのエネルギー転換の努力は、この方向にこそ、日本の総力を集中すべきではないでしょうか。

 自然エネルギー財団は、昨年末、日本には2040年に電力の9割以上を供給できる自然エネルギーのポテンシャルがあり、蓄電池と送電網を増強すれば、太陽光発電と風力発電という変動型電源で電力の7割近くを供給しても、安定的な電力供給を、価格高騰を招かず実現できることを示しました1。本年は、こうした未来に向け、具体的にどのようしにて太陽光発電と風力発電をはじめとする自然エネルギーの導入加速を実現できるのかを、政府、企業、自治体、非営利団体の多くの皆さんと協力して、明らかにしていこうと考えています。

 本年もご注目いただき、またご支援をいただけるよう、どうぞよろしくお願いいたします。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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