[分析レポート] 昨今の電力取引価格高騰についての考察2016年度~2020年度における12月と1月の電力需給状況

斉藤 哲夫 自然エネルギー財団 特任研究員

2021年3月5日

2020年12月中旬から2021年1月後半まで電力スポット市場価格が高騰し、政府審議会等で市場価格高騰の原因検証が行われている。当初は、10年に一度の厳寒により電力需要が増加したためだ、天候不良で太陽光発電が発電しなかったためだなどと報道された。市場価格高騰の原因検証の前提となるこの2つの点について、3月に公開された2021年1月分を含めて、2016年度から2020年度の電力需給実績などから1分析すると、2020年度の最大電力需要[kW]は2017年度と同等であり、月間需要電力量[kWh]は2017年度より少ない。更に太陽光発電の最大発電出力[kW]と月間発電電力量[kWh]は、共に2020年度が過去最大であったことが明らかになった。この分析結果の概要を報告する(時系列データや電力需要と供給力(予備率)の関係など詳細は、レポート全文「昨今の電力取引価格高騰についての考察」を参照)。

最大電力需要[kW]と需要電力量[kWh]

 電力需要は、気温による冷暖房需要の増減に加えて、時刻や平日と休日など人の行動要因により増減する。月間の最大電力需要は、通常、12月より1月の方が多い。過去5年間では、12月は2020年度が最も多く2017年度に比べて約2%増加しているが、1月は2020年度と2017年度が同じで最も多かった。一方、2019年度は過去5年間で最も少なく暖冬であったと言える(図1)。

 最大電力需要の発生時刻は、過去5年間における違いはなく、朝9時と夕刻の17時または18時である。今回の議論との関係で留意すべきは、これらの時間帯は太陽光発電の出力が極めて小さく(朝9時では定格出力の10~20%程度、17時~18時ではゼロ%)、その時間帯における電力供給に大きな役割を果たすことは、そもそも想定されていない、ということである。したがって、気象条件による太陽光発電の出力変化は、最大電力需要発生時刻における電力供給へ殆ど影響しないと言える。

 一方、月間の需要電力量は、12月より1月の方が多い。過去5年間では、12月は2017年度が最も多く、2020年度は2017年度に比べて約3%減少している。1月も2017年度が最も多く2020年度は2017年度に比べて約1%減少していた。また需要電力量も、2019年度は過去5年間で最も少なく暖冬であったと言える(図2)。
 
 ⇒以上を踏まえると、2019年度と今年度の冬のみを比較して電力需要の多寡を議論するのは妥当ではなく、2017年度と比較すれば、2020年度の電力需要が特別に大きかったとは言えない。
 

太陽光の発電出力[kW]と発電電力量[kWh]

  9エリア合計の太陽光発電設備容量は、2020年11月末で58.81GWと2019年11月末より5.82GW(約10%)増加しており、風力発電設備容量は、2020年11月末で4.54GWと2019年11月末より0.24GW(約5%)増加している。

 冬季は、夏季に比して太陽光発電の発電出力が少なく、風力発電の発電出力が多くなる。年度毎の傾向を見ると日々の違いはあるものの月間では、年度による設備容量増加率を上回る最大発電出力・発電電力量増加率となっていた(図3,図4)。2020年12月の風力と太陽光の合計値は、2019年12月に比して、最大発電出力が約12%増加し、発電電力量は約19%増加している。2021年1月は2020年1月に比して最大発電出力が約25%増加し、発電電力量は約20%増加していた。また、需要電力量に対する電力量供給率も2020年度は2019年度より需要電力量が増えているにもかかわらず、12月と1月の合計値では約0.8%増加していた(図5,図6)。
 
 ⇒太陽光と風力発電は、過去5年間で最大の発電出力・発電電力量であり、太陽光発電が発電しなかったことが需給ひっ迫の原因ではない。

 なお、2020年度は太陽光の設備容量が風力の設備容量の約13倍であるが、将来この比率が小さくなると風力発電と太陽光発電の補完特性2により、より安定的な電力供給が可能になると言える。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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