[研究レポート]風力発電と太陽光発電の出力特性と両者の出力相関両者合計の系統連系容量は送電設備容量の1.5倍可能(コネクト&マネージ)

斉藤哲夫 自然エネルギー財団 特任研究員

2020年11月27日

 風力発電や太陽光発電の系統連系制約条件となっている送電設備容量(送電線の熱容量)不足対策と電力系統で必要な調整力不足対策を目的として、東北エリアと九州エリアそれぞれにおける、2019年度のエリア合計1時間平均値と特別高圧連系で同一地点にある風力発電所と太陽光発電所の3秒サンプルによる出力特性および両者の出力相関に関する分析結果を述べる。(詳細は、全文を参照)
 
・風力発電と太陽光発電合計の系統連系容量は、数%の出力抑制電力量率を許容することにより、送電設備容量の1.5倍可能である(発電所および送電設備・送電線の設備利用率向上)
・必要な調整力を算定する要素の一つである風力と太陽光の合計出力変動率は、両者変動率の単純合計値の約70%に低減する
(広域分散発電所間の平滑化効果および風力と太陽光が有する制御機能活用により、合計出力変動率を更に低減可能)
・周波数安定化に必要な調整力は、「周波数調停率制御機能」の活用により風力と太陽光からも提供可能である(欧米では適用済)
 

東北エリアの個別発電所とエリア合計値の出力相関

 個別発電所の風力と太陽光の系統連系容量をそれぞれ1.0[PU]とした出力デュレーションを図1に、月平均出力を図2に示す。合計出力が1.0[PU]以下の年間時間は約87.0%、1.0[PU]超過1.5[PU]以下は約11.1%、1.5[PU]超過2.0[PU]以下は約1.9%である。1.5[PU]を超過するのは僅かの時間であり、春から夏にかけては太陽光発電が、秋から冬にかけては風力発電の月平均出力が大きく、両者は補完関係にあるといえる。

 東北エリア合計の月毎系統連系容量をそれぞれ1.0[PU]とした出力デュレーションを図3に、月平均出力を図4に示す。合計出力が1.0[PU]以下の年間時間は約97.5%、1.0[PU]超過1.5[PU]以下は約2.5%、1.5[PU]超過2.0[PU]以下は約0.0%である。個別発電所の3秒サンプルに基づく1時間平均値(100%)に比して、それぞれおよび両者の最大出力が低減しているのは、各発電所地点における低気圧帯の通過などによる風速変動や雲の通過による日射変動には時間差があることによる平滑化効果の表れである。また、月毎の補完関係は、個別発電所の場合と同様である。
 

風力と太陽光のハイブリッド発電

 一般的に、高気圧帯の場合は晴れで日射が強く風速が低いが、低気圧帯の場合は曇りか雨で日射が弱く風速が高い。また、日本は秋から冬にかけて西高東低の気圧配置となることが多く、この場合は日本海側が雨や雪で太平洋側は晴れとなるが、春から夏にかけては日本全国が高気圧帯となる場合が多く、この場合は日本全国が晴れとなる。(補完関係)

 実測結果においても風力と太陽光の出力には相関がなく、一般的には基準出力を二乗和平方根であるルート2(1.41)[PU]として検討を行うが、前項に記した通り両者の合計出力が1.5[PU]を超過する時間が僅かであることから、ここでは風力と太陽光の合計系統連系容量を1.5[PU]、送電容量を1.0[PU]として合計出力の様相などを以下と図5に示す。なお、出力抑制電力量率が2.0%とは、抑制前の合計設備利用率を40.0%とすると、抑制後は39.2%(40.0×0.98)となることを意味する。

・風力1.0[PU]、太陽光0.5[PU]の場合 :出力抑制電力量率が1.8% 出力抑制時間が年間の4.9%時間
・風力0.75[PU]、太陽光0.75[PU]の場合:出力抑制電力量率が1.7% 出力抑制時間が年間の3.2%時間
 

ハイブリッド発電とコネクト&マネージ

 風力と太陽光のハイブリッド発電は、それぞれに契約用電力量計を設置する必要があるが、数%の出力抑制電力量率を許容することにより、新設発電所に限らず、同一事業者または共同事業者が既設発電所に1/2容量の他機種の発電設備を増設する場合や、通信回線を整備した上で同一送電線路の他地域に1/2容量の他機種の発電設備を増設する場合も含めて、送電設備・送電線および発電所の設備利用率が、風力発電と太陽光発電の設備容量比に応じた設備利用率のほぼ単純合計値へ向上する。(自主的コネクト&マネージ)

 全国の送配電網への展開に向けて検討中のコネクト&マネージは、今回分析した個別発電所のケースとエリア合計発電所のケースとの中間に位置づけられる。風力発電出力と太陽光発電出力には相関がなく補完関係にあることに加えて平滑化効果が表れるので、オンラインの出力抑制指令設備を完備することにより、個別発電所のハイブリッド発電の場合に比して、出力抑制電力量率の低減などが可能といえる。(コネクト&マネージ)

 但し、地域・地点による日射強度の差は少ないが、地域・地点による風況の差は大きいので、風力発電設備を新増設する際には、風況条件に留意する必要がある。自主的コネクト&マネージおよびコネクト&マネージの例を、図7に示す。
 
図7 風力と太陽光のハイブリッド発電とコネクト&マネージの例

電力系統に必要な調整力と両者合計の出力変動率

 電力系統に必要な調整力とは、全発電設備による供給電力と需要電力との差により生じる系統全体の周波数変動を規定値以内に保つために必要となる発電設備などによる出力増加および低減能力であり、風力発電や太陽光発電の出力変動率そのものを低減する目的のものとは異なる。欧米では既にグリッドコードとして風力発電や太陽光発電が有している「周波数調停率制御機能」の活用を規定し、電力系統に必要な調整力を風力や太陽光からも供給し、周波数安定化に寄与している。しかしながら、必要な調整力を算定するための要素の一つである風力と太陽光の出力変動率・様相を把握し、これを低減することは、周波数変動要因の一つを抑制することになるので、ここでは、それぞれと両者合計の出力変動率・様相に関して述べる。

 風力発電は特に低気圧帯の通過などによる風速変動に、太陽光発電は特に晴れの日に上空を雲が通過した場合の日射変動により出力が大きく変動する。但し、各発電所地点における風速変動や雲の通過には時間差があり、更に風力と太陽光の出力変動発生時刻が異なるので、エリア全体の出力変動率は、発電所数の増加にともなう平滑化効果により、一般的に変動率も発電所数(n)に対して、1/ルートn以下に低減されると推定されている。

 ここで、周波数の変動周期成分と同様に、超短周期出力変動とは周波数変動の場合に各発電機が自律制御で応動する変動周期が数分未満の変動(秒オーダー周期の出力変動成分)、短周期出力変動とは周波数変動の場合に中央給電所からの指令により各発電所が応動する変動周期が数分以上数十分未満の変動(分オーダー周期の出力変動成分)と定義し、東北エリアのA発電所と九州エリアのB発電所の超短周期出力変動デュレーションを図8に、短周期出力変動のデュレーションを図9に示す。風力発電と太陽光発電の出力変動には相関がないことから、両者合計の出力変動率は、それぞれの変動率の単純合計値ではなく、ほぼ二乗和平方根値に低減する(例:20%と15%の場合は、35%ではなくルート625の25%となり、単純合計値の約70%)。また、両者合計の系統連系容量が単独の場合と同一容量の場合((風力+太陽光)/2)は、まれな事象である0.1%時間値などが単独の場合の変動率より低減する。

 同一の算出方式を適用したNEDO事業1では、2012年度の東北エリア(20WF、442MW)と九州エリア(16WF、306MW)の0.1%時間における風力発電合計の超短周期出力変動率がそれぞれ定格出力の約1.3と1.6%、短周期出力変動率が定格出力の約4.8%と3.7%で、2017年度は、発電所数の増加と広域分散化による平滑化効果により更に低減していることが報告されている。これに比して個別のA風力発電所およびB発電所の超短周期変動率、短周期変動率は、ともに約10倍であった。

 上記は、エリア全体の出力変動率は平滑化効果により、個別風力発電所の出力変動率の約1/10以下に低減することを意味し、風力と太陽光の合計変動率で考えると、発電所数の増加に伴う平滑化効果は更に大きくなるといえる。また、風力発電や太陽光発電設備が有している「出力上昇率制限制御」「最大出力抑制制御」機能を活用することにより、出力変動率を更に低減するすることが可能である。
 
 

外部リンク

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