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非化石証書が条件付きでRE100に認定、国際的な基準へ課題は残る

石田雅也 自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループマネージャー
2018年12月19日

in English

 世界各国の150社以上の企業が加盟する国際イニシアティブ「RE100」は、日本の非化石証書を自然エネルギーの電力として認定することを決めた。ただし非化石証書の元になる自然エネルギーの発電設備に関する属性情報を追加した場合に限る。経済産業省は2019年2月に実施する入札で属性情報を追加する実証実験を予定しており、属性情報の付いた非化石証書はRE100でも認められることになった。RE100に加盟する企業を中心に非化石証書の利用価値が高まるが、国際的な基準に照らし合わせると改善すべき点が残っている。

「FIT非化石証書」に属性情報、企業の自然エネルギー調達手段が広がる

 自然エネルギーで作った電力の環境価値(環境負荷が低い、CO2を排出しない、などの効果)は世界各国で証書として取引されている。日本国内では「J-クレジット(再エネ由来)」、「グリーン電力証書」、「非化石証書(再エネ指定)」の3種類がある。このうちJ-クレジットとグリーン電力証書は、気候変動に関する主要な国際イニシアティブで基準に合致することが認められている(図1)。

図1 自然エネルギー由来の証書・クレジットと国際イニシアティブとの整合性
GHG:GreenHouse Gas(温室効果ガス)、SBT:Science Based Targets(科学的な根拠に基づく目標)
出典:みずほ情報総研「国際的なイニシアティブと⽇本の気候変動対策に係る国内諸制度」
(第1回 我が国企業による国際的なイニシアティブへの対応に関する研究会、経済産業省、2018年10月29日)

 非化石証書もCO2などの温室効果ガスを排出しない環境価値は認められているが、環境負荷の低い自然エネルギーであることを証明する手段が欠けている。証書の元になる発電設備に関する属性情報が付随していない点である。具体的には、発電所の名称や所在地、発電方法、発電量、発電時期など、環境負荷の低い設備で発電していることを示す情報だ。こうした属性情報を伴わないと、証書の購入者は環境負荷を評価できない。環境負荷の低い自然エネルギーの利用を促進するRE100では、属性情報を伴わない非化石証書は要件に合わないため推奨していない。非化石証書の取引は固定価格買取制度(FIT)の適用を受けた電力を対象に2018年5月に始まったが、RE100の要件に合致しないことも理由になって取引量は伸び悩んでいる。

 経済産業省が2019年2月の入札で予定している実証実験では、あらかじめ申請した小売電気事業者に対して、購入する「FIT非化石証書」(FIT電気に由来する非化石証書)に属性情報を追加して発行する(図2)。小売電気事業者は入札の前に発電事業者と合意のうえ、属性情報を希望する発電所を事前に申請する必要がある。合意がない場合には、希望する発電所の属性情報を取得できない可能性がある。


図2 FIT非化石証書に属性情報を追加する流れ
GIO:低炭素投資促進機構、JEPX:日本卸電力取引所
出典:経済産業省「非化石価値取引市場の利用価値向上に向けた検討の方向性」
(第25回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会、2018年10月22日)

 発電設備の属性情報を追加した非化石証書がRE100でも認められたことにより、RE100に加盟する企業は自然エネルギー100%の目標達成に向けて非化石証書を活用できる。小売電気事業者を通じて、属性情報の付いた非化石証書と電力を組み合わせて購入すれば、自然エネルギーの電力を利用したものとみなされる。日本では現在のところ自然エネルギーの電力を調達する手段と量が限られている。発行量が非常に多い非化石証書を活用できると、企業が自然エネルギーの電力を増やしやすくなる(表1)。

表1 自然エネルギーで発電した電力の環境価値を取引できる証書・クレジット

国際的な基準に合わない証書の発行形態、抜本的な見直しが必要

 ただし非化石証書には、いくつかの課題が残っている。海外で発行している自然エネルギー由来の証書と比べると、改善すべき点は多い。

 第1に、海外の証書では発電設備の属性情報を示すことが基本要件になっていて、すべての証書に属性情報が含まれている。非化石証書が自然エネルギー由来の証書として国際的に通用するためには、最初から属性情報を伴う形で発行する必要がある。さらに証書の発行者から購入者までを追跡(トラッキング)できるシステムを構築して、発電事業者・小売電気事業者・電力利用者が公平に自然エネルギーの電力を取引できることが望ましい。そうした国際的な要件を満たす証書の管理システムは世界の数多くの国で使われている(表2)。日本でも早急に整備する必要がある。

表2 世界各国で利用できる自然エネルギーの証書

 非化石証書に残る第2の改善点は、制度そのものにある。RE100では企業が安く簡単に自然エネルギーの電力を調達できる環境を目指している。その観点から、現在のFIT非化石証書が入札制を採用していること、証書の収益が発電事業者に還元されないこと、が問題になる。海外では証書の発行者と購入者がシステムを通じて取り引きできるため、自然エネルギーの拡大に伴って通常は証書の価格が低下する。それでも発電事業者は証書の販売で収益を増やし、新たな自然エネルギーの発電事業に投資する資金を確保できる。このような自然エネルギーを増やす「追加性(additionality)」によって、化石燃料の消費を減らして気候変動を抑制する効果がもたらされる。企業が自然エネルギーを調達するにあたって、追加性が重要な条件になる。

 これに対してFIT非化石証書の入札では最低価格(2018年度は1.3円/キロワット時)が決められていて、一定以上の価格でしか取引できない。企業にとって自然エネルギーの電力を安く調達する選択肢にはならず、コストの点で大量に利用することはむずかしい。しかもFIT非化石証書の販売代金は発電事業者ではなく、FITの賦課金の低減に使われる。このため自然エネルギーを増やす追加性は期待できない。RE100では現在のところ、加盟企業が利用する電力に追加性は求めていない。とはいえ自然エネルギーの要件として追加性を重視しており、今後は推奨する要件の中に追加性を盛り込む可能性がある。北米で自然エネルギーの電力を認証するラベルとして定着している「Green-e」では、要件の1つとして追加性を規定している(表3)。

表3 自然エネルギーの電力に求められる要件(クラス1が最も望ましい)

 もともと非化石証書は自然エネルギーの利用促進を目的としたものではなく、小売電気事業者が供給する電力の非化石比率を高めるために導入された制度である。証書の対象に2020年度から原子力で発電した電力も加える予定で、環境負荷の低い電力の証書として問題視する声は多い。本来は原子力を除いて「自然エネルギー証書(Renewable Energy Certificate)」として発行すべきであり、制度そのものを抜本的に見直す必要がある。


 

<関連リンク>

提言(2018年10月3日)
非化石証書の改善策:自然エネルギーを推進する企業が利用しやすく

連載コラム(2018年9月26日)
自然エネルギー100%の電力メニュー、環境負荷や追加性の確認を

 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギーで豊かな日本を創ろう!アクション
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织