富士フイルムグループは創業当時から続くフィルムやカメラの事業に加えて、最近では医療用の画像診断システムから化粧品まで多彩な事業を展開している。最も多くのエネルギーを使うのは、日本をはじめ世界各国にある工場だ。特に化学系の製品を作る工場では、電力だけではなく大量の蒸気(熱)を必要とする。このため電力と蒸気を効率的に作り出せるコージェネレーション(熱電併給)システムを主要な工場に設置している。
グループ全体でエネルギーの使用に伴うCO2(二酸化炭素)の排出量を削減するために、電力と蒸気の両方を2050年度までに自然エネルギー由来100%に転換する目標を掲げた(図1)。すでに海外の工場では、敷地の中や建物の屋上で風力・太陽光発電を開始した。今後は国内を含めて購入する電力を自然エネルギーに切り替えて、2030年度までに比率を50%まで高める計画だ。

オランダで風力、中国で太陽光、経済合理性で導入
富士フイルムグループは自然エネルギーを導入するにあたって、経済合理性と環境面の両立を前提条件にしている。国や地域によっては依然として自然エネルギーのコストが高く、経済合理性が成り立たないケースも多い。従来と比べてコストが増えない方法で自然エネルギーを増やすことが基本方針である。そうした中で風力発電の導入にいち早く取り組んだのがオランダの工場だ。2011年に敷地内に5基の風力発電機を設置して、最大で10MW(メガワット)の電力を自家発電で供給できるようにした(写真1)。さらに2016年には風力発電事業者とPPA(電力購入契約)を結び、自家発電分と合わせて工場で使用する電力の100%を自然エネルギーで調達している。

2018年には中国の工場に大規模な太陽光発電設備を導入した(写真2)。新たに増設した工場の屋上に1.4MWの太陽光発電設備を設置したが、同様に経済合理性で判断した。この工場が立地する地域では補助制度があり、投資回収を短縮できる見込みだ。工場を新設・増設するタイミングに合わせれば、太陽光発電の導入コストを低く抑えられる。

日本国内では2006年に熊本県にあるグループ会社の工場を新設した時に、約100kW(キロワット)の太陽光発電設備を屋上に設置して、発電した電力を自家消費している。今後も国内と海外で工場の新設・増設時に太陽光発電を導入する方針だ。それ以外は小売電気事業者から自然エネルギー100%の電力を購入する。電気料金が従来と変わらない水準で購入できるところから切り替えていく。
富士フイルムグループの主力工場では、自家発電のコージェネレーションの燃料として主に天然ガスを使っている。将来は自然エネルギー由来のCO2フリー水素などに切り替えてCO2排出量ゼロを目指す。CO2フリーの水素はコストと供給インフラが大きな課題で、国を挙げた対策が進むことに期待をかける。