先進企業の自然エネルギー利用計画(第13回)リコー、主力製品を自然エネルギーで組立生産脱炭素を推進すればビジネスを拡大できる

石田雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(ビジネス連携)

2019年11月19日

 
 企業が自然エネルギーの電力を100%使用することを推進する国際イニシアティブ「RE100」に日本で最初に加盟したリコーは、国内と海外の拠点で着実に自然エネルギーの利用率を高めている。2019年4月にはA3複合機(A3用紙に対応したコピー・プリンター・スキャナー・ファクスの機能を備えた製品)を組立生産する世界5カ所の拠点で、自然エネルギー100%の電力を使用する体制になった。

 A3複合機はリコーの売上高の1割以上を占める主力製品である。全世界に供給する複合機を日本・中国・タイの5カ所の拠点で組み立てて各国に出荷している(図1)。5つの拠点で使用する電力量は年間に3700万kWh(キロワット時)にのぼる。自然エネルギーに切り替えるスピードを重視して、国内・海外ともに自然エネルギー由来の証書を購入する方法を採用した。

 
図1.自然エネルギーの電力を100%利用するA3複合機の組立生産拠点 
出典:リコー

中国では自然エネルギーの電力が4割を超え

 リコーが全世界の事業で使用する電力のうち、自然エネルギーの比率は2018年度に9.4%だった。地域別に見ると、中国が約45%で最も高く、欧州(中近東・アフリカを含む)でも約38%に達している(図2)。すでに欧州では8カ国のグループ会社で自然エネルギーの電力を100%使用する。中国では生産拠点の屋上に大規模な太陽光発電設備を導入して、自然エネルギーによる電力の自家消費を拡大中だ。対照的に日本と米州(北米・中米・南米)はごくわずかにとどまっている。特に電力使用量の約6割を占める日本で自然エネルギーの比率を高めることが課題である。
 
図2.地域別の電力使用量と自然エネルギー(再エネ)の比率(2018年度)MWh:メガワット時(=1000キロワット時) 
出典:リコー
 
 
 リコーは2030年度までに事業で使用する電力の30%以上を自然エネルギーで調達して、最終的に2050年度までに100%を達成する目標を掲げる。気候変動の抑制に向けて2050年度にはCO2排出量をゼロに削減することを目指す。そのためには使用する電力を自然エネルギー100%に切り替えるだけではなく、生産拠点で使用するガスや車両で使用するガソリンの転換にも取り組まなくてはならない(図3)。CO2排出量ゼロを実現するためには難題が数多く残っている。


 
図3.リコーグループの事業活動に伴うCO2排出比率 エネルギー別(左)、地域・スコープ別(右) 
出典:リコー


 その一方でCO2排出量を削減する活動を進めるのに伴って、新たなビジネスを拡大できる機会も広がってきた。2018年度の1年間に、国内の有力企業30社以上から脱炭素に関するヒアリングの依頼を受けた。気候変動対策を担当するリコーのサステナビリティ推進本部と国内営業を担当するグループ会社のリコージャパンがチームを組んで企業の話を聞き、それをもとに省エネ設備や太陽光発電・蓄電池システムなどの導入を提案して販売につなげる。
 
 いまやA3複合機をはじめ従来のビジネスだけでは売上高を増やせない状況になってきた。CO2を削減するための最新の技術をリコーグループの拠点に導入して効果を実証しながら、脱炭素に取り組む企業に販売していく。グループ全体で自然エネルギーの電力や証書を購入するコストは、顧客を獲得するための販売促進費として位置づける。自然エネルギーの利用拡大が新たなビジネスをもたらす実例が日本の企業にも広がり始めた。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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