先進企業の自然エネルギー利用計画 (第5回)イケアグループ、自然エネルギー100%を2020年に達成太陽光・風力発電を世界29カ国で導入

石田雅也 自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループマネージャー

2018年11月29日

 日本を含む世界29カ国で355カ所に店舗を展開するイケアグループは、早くから自然エネルギー(renewable energy)の導入に取り組んできた。店舗やオフィスで使用する電力と熱を合わせて、2020年までに自然エネルギー100%に転換する目標を掲げている。2017年の時点で自然エネルギーの比率は73%に達しており、目標達成は十分に可能な状況だ(図1)。店舗に太陽光パネルを設置して電力を自家消費し、欧米では風力発電の開発にも参画する。日本国内では9つの店舗すべてで太陽光発電を実施するほか、地中熱を利用した空調システムを導入して自然エネルギーの比率を高めていく。

図1.イケアグループの自然エネルギー導入状況(2017年度:2016年9月~2017年8月)
上から順に、自然エネルギーの割合、風力発電機の数、太陽光パネルの設置枚数
出典:イケア・ジャパン

太陽光発電は自家消費が原則、投資回収は10年以内に

 イケアのビジネスの特徴は大都市の郊外に大型の店舗を建設して、家具をはじめとする住宅用の製品を手ごろな価格で販売するモデルにある。店舗には太陽光パネルを設置して発電した電力を自家消費する。日本国内では2017年10月に愛知県で開業した「IKEA長久手」の太陽光発電設備が最大で、出力が1300kW(キロワット)に達するメガソーラー級の発電設備から店舗内に電力を供給している(写真1)。
 
写真1.「IKEA長久手」(愛知県長久手市)の屋上に設置した太陽光パネル。出典:イケア・ジャパン

 太陽光による年間の発電量は一般家庭の360世帯分に相当する。IKEA長久手で1年間に消費する電力のうち約25%を太陽光発電でカバーできる。イケアでは太陽光発電の投資回収期間を10年以内とすることが世界共通のルールになっていて、日本でも10年以内に投資を回収できるコストで導入するのが原則だ。投資回収後は運転維持費だけで電力を利用できるため、店舗の運営費の削減にもつながる。
 
 太陽光発電で足りない分の電力は、小売電気事業者から自然エネルギー100%のメニューを購入する。現在は固定価格買取制度の適用を受けた太陽光・風力・バイオマス発電所の電力を利用しながら、自然エネルギーの環境価値(CO2を排出しないなどの効果)を集約したJ-クレジットを組み合わせている。太陽光発電の自家消費と小売電気事業者からの購入を合わせて、日本でも2020年までに自然エネルギーの電力の利用率を100%に高める計画である。
 
 さらに地中熱を利用した空調システムを世界各地の店舗で取り入れている。日本国内では2012年に開業した「IKEA福岡新宮」をはじめ3店舗に導入済みだ(図2)。これから新たに建設する店舗では、太陽光発電、地中熱による空調、LED照明などを組み合わせて、事業活動における温室効果ガスの排出量を削減していく。
 
図2.「IKEA福岡新宮」(福岡県新宮町)に導入した地中熱による空調システムのイメージ。出典:イケア・ジャパン

外部リンク

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