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食品廃棄物を発酵させてバイオガス発電
-静岡県・牧之原市で1100世帯分の電力-

2018年3月26日

食品廃棄物を発酵させてバイオガス発電
-静岡県・牧之原市で1100世帯分の電力-

石田雅也 自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループマネージャー

 日本全体では年間に2000万トン近い大量の食品廃棄物が発生する。その多くは焼却処理されるが、食品工場などから排出する廃棄物は肥料や飼料にリサイクルする取り組みが進んでいる。新たなリサイクルの手段として、バイオガス発電に注目が集まる。静岡県の牧之原市で2017年3月に、食品廃棄物を利用したバイオガス発電所が運転を開始した。バイオガスの発生に欠かせない発酵工程を自動的に制御できる仕組みを作り、年間に1100世帯分の電力を供給する。

固体・液状・汚泥状の食品廃棄物を最適に配合

 緑茶の生産量が全国有数の牧之原市の工業団地の中で、「牧之原バイオガス発電所」が稼働している(写真1)。食品リサイクルを推進するアーキアエナジー(本社:東京都港区)が牧之原市役所の協力を得て開発を進めたプロジェクトである。牧之原市では東日本大震災の発生後、近隣にある原子力発電所の永久停止を求める一方、太陽光をはじめ風力やバイオエネルギーの活用に取り組んでいる。

写真1 「牧之原バイオガス発電所」の外観

 牧之原バイオガス発電所は1日あたり80トンにのぼる食品廃棄物を処理する。静岡県内を中心に食品工場などから回収した廃棄物は、固形・液状・汚泥状(固形と液状の中間)の3種類に分別する。固形は野菜や魚・肉などの残渣、液状は乳製品の加工工場などの廃液である。汚泥状の食品廃棄物にはプリンやゼリーの残渣のほか、茶葉を利用した飲料の製造工場から茶殻が大量に送られてくる。

 固形の食品廃棄物を機械で細かく砕き、液状・汚泥状の食品廃棄物と合わせて発酵させると、20日間ほどでバイオガスが発生する。ただし効率的にバイオガスを生成するためには、食品廃棄物ごとの含水率をもとに最適な配合を決めて発酵させる必要がある。そのうえで発酵に適した温度(36~40℃)を常に維持しなくてはならない(写真2)。

写真2 発酵タンク(オレンジと青)、発酵後の廃液を貯蔵する消化・酵素液槽(緑)

 牧之原バイオガス発電所では食品廃棄物の配合や発酵に必要な温度を自動的に制御できるようにして、バイオガスの生成量と運営体制の最適化を図った。食品廃棄物を受け入れる設備で含水率を計測し、データに基づく自動制御を可能にした点が大きな特徴である。

 食品廃棄物を利用したバイオガス発電には、収益面でもメリットがある。燃料の元になる廃棄物は購入するのではなく、食品工場などから処理費を徴収して収集できる。木質バイオマスなど他のバイオエネルギーに比べると燃料費(バイオガス製造コスト)の負担は小さくて済むため、売電による収益性は高い。現在は固定価格買取制度で売電しているが、20年間の買取期間を終了した後に発電事業を続けても十分に採算を確保できる見通しだ。

 牧之原市に続いて東京都の羽村市と愛知県の小牧市でも、同様の仕組みによるバイオガス発電所の建設計画が進んでいる。このほかに関西や北関東の4つの地域へ展開するプロジェクトも始まった。ただし先行した牧之原市では計画当初に周辺住民の反対が強く、食品廃棄物の処理に伴う臭気対策を徹底する必要があった。バイオガス発電所の建設に至るまでの経緯と課題、運転状況や設備の詳細をレポートにまとめた。

外部リンク

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  • 自然エネルギー協議会
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  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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