2019年上半期の一部主要国のエネルギー動向は、明るい見通し

トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長 / ロマン・ジスラー 自然エネルギー財団 上級研究員

2019年9月10日

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 2019年上半期のエネルギー供給状況は、気候変動がもはや手に負えないものではないかもしれないという期待を抱かせるものだ。化石燃料による発電は主要4カ国のすべての合計において減少し、そのうち3カ国では自然エネルギーによる発電が大幅に増加した。
 
 
主要国の電源別発電電力量の推移     
ドイツ、米国、インド、中国(2019年上半期、対前年比発電量)    
出所:中国インド米国ドイツ    

 米国の石炭火力発電は、2018年上半期と比べ72TWhも減少した。その原因は、2018年に石炭火力発電所が数多く閉鎖されたことと、国内の電力需要低下である。天然ガスは増加したものの石炭火力の減少分を相殺するには及ばず、化石燃料による総発電電力量は36TWhの減少となった。太陽光発電と風力発電は伸びたが、降水量の少なかった水力発電の減少分がこれを上回った。
 
 また、水力発電の減少にもかかわらず、2019年第2四半期の米国の自然エネルギーによる発電量は、石炭火力を上回った。四半期を通じて自然エネルギーが石炭火力を上回ったのは初めてである。
 
 一方中国では、総電力消費量とあらゆる電源別の発電電力量が増加した。最も小さな伸びを見せたのは化石燃料で、10TWh増加している。原子力発電の伸びはその3倍、自然エネルギー発電の伸びは8倍を超える83TWhとなった。
 
 インドでも電力消費量が増加した。増加分に占める化石燃料の割合は27%にすぎなかった。残りは自然エネルギーが占め、原子力発電のわずかな減少分も吸収した。
 
 ドイツでは、2018年の上半期と比較して化石燃料による発電が19TWh減少し、自然エネルギーが12TWh増加した。総発電電力量と原子力発電電力量は、いずれもわずかながら減少した。フラウンホーファーの分析によると、2019年上半期におけるドイツの電力エネルギー源で最大の割合を占めたのは風力で、褐炭、原子力、無煙炭と続く。
 
 6月の統計では太陽光が電力エネルギー源のシェア第1位となり、褐炭、風力と続いた。太陽光がひと月を通して首位になったのは初めてのことである。
 
 また、自然エネルギーが化石燃料を発電量で上回り、ドイツの正味発電量の半分近くを占めた。2000年には、自然エネルギー発電は全体の10%に満たなかった。
 
 トランプ米大統領による貿易戦争が世界の経済成長を鈍化させるなか、化石燃料の消費も伸び悩んだ。米国内の景気は減速し、電力需要はついに減少した。
 
 アジア地域の経済発展は、化石燃料に依存し技術レベルが未熟と評されることが多い。中国とインドは、依然として発電電力量に占める化石燃料の割合が他国と比べて大きく、これは妥当な見方かもしれない。だが、それも変わりつつある。中国の自然エネルギーの国内に占める割合は2014年に各国の平均を超え、現在では上回っている(中国を除く各国・地域のシェアは25%前後)。
 
 インドは2年間で、自然エネルギーの割合を15%から17%に伸ばした。発電電力量にすると53TWhの増加となり、国内の原子力発電所の総発電電力量を上回る。中国でも、自然エネルギー発電電力量の2年間の増加分が、2018年の原子力総発電電力量を上回った。
 
 自然エネルギーの国内に占める割合では、インドは他の国々の水準に迫っており、中国はわずかながらこれを追い越した。ドイツは他の国々の2倍近くに達している。
 
 米国とドイツは、原子力発電の国内に占める割合が他国と比べて大きい。世界全体でみた原子力発電の割合は、10%まで低下した。米国、ドイツ、インドでも原子力の割合は低下しているが、中国ではまだ低い水準ながら増加している。
 
もっともIAEAによれば、中国では2016年12月以降原子炉の新設に着手しておらず、インドでも2017年10月以降の建設はゼロである。したがって、今後数年間の化石燃料の動向は、電力需要の拡大に先行して自然エネルギーの電力が普及するかどうかにかかっている。
 
 2019年上半期の主要4カ国の電力関連統計は、明るい見通しを示している。トランプ大統領の貿易戦争と自然エネルギー発電の急速な発展が相まって、2019年の化石燃料による二酸化炭素排出量の伸びは2018年より小さくなるだけでなく、排出量自体が減少する希望さえ出てきた。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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