声明2030年までのCO2半減を可能にする政策の導入をCOP26を前に日本政府によびかける

2021年10月27日

in English

公益財団法人 自然エネルギー財団は、 10月末から開催されるCOP26に先立ち、以下の通り声明を公表します。

2030年までのCO2半減を可能にする政策の導入を

 10月末から開催されるCOP26の直前、10月22日に、政府は国連に提出するNDC(国が決定する貢献)、エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画、また2050年までの脱炭素戦略(パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略)を決定した。

 NDCでは、政府が4月に表明した温室効果ガスの2030年度46~50%削減(2013年度比)が正式に日本の目標として位置付けられた。また、エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画には、「再生可能エネルギー最優先の原則」が明記され、エネルギー基本計画では、2030年度の電源構成を36~38%程度としつつ、「この水準は、上限やキャップではない。」「早期にこれらの水準に到達し、再生可能エネルギーの導入量が増える場合には、更なる高みを目指す。」ことも示された。これまでの計画が22~24%という極めて低い目標に留まっていたことに比べれば、積極的なものである。

 こうした前進はあるものの、エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画に本来もとめられていた、2030年度目標を確実に達成するエネルギー政策、気候変動対策の方向を明確に示すという役割に照らせば、その内容は十分ではなく、気候危機回避に向けた世界の努力に逆行する方向すら含まれている。また長期戦略では、2050年にカーボンニュートラルを実現するための具体的なエネルギーシナリオが示されていない。

 特にエネルギー基本計画が2030年においても石炭火力で電力の約2割を供給する計画を示しているのは、先進国では2030年までに石炭火力のフェーズアウトすることが必要という国際的な認識に反するものであり、到底、容認することはできない。政府には早急に石炭火力に固執する政策の見直しを求める。

 また政府は2030年以降も石炭火力も含む火力発電対策としてCCSの活用を計画しているが、経済産業省では、回収しても日本国内では貯留する場所のないCO2を東南アジア各国に輸出するという計画が目論まれている。エネルギー基本計画を検討する審議会では、毎年2億トン以上を輸出するという驚くべきシナリオが提示されている。この輸出計画自体は今回決定された諸計画には含まれていないが、経済産業省が本年6月に立ちあげた「アジアCCUSネットワーク」の検討課題に含まれている。先進国の責任をアジアの途上国に押し付けるこのような目論見は直ちに中止するべきである。

 戦略の見直しと同時に必要なのは、2030年46~50%削減という国際公約を実現するために必要な施策・制度を明らかにし、速やかに導入することである。

 そのための最重要の課題の一つは、「再生可能エネルギー最優先の原則」を実質化する施策である。まずは内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」が明らかにした規制・制度改革を速やかに実行し、洋上風力発電を初めとした自然エネルギーの導入を加速しなければならない。石炭火力や原子力発電などの既存電源を優遇する仕組みを改め、自然エネルギー電源の送電網アクセスを妨げる障害を無くす電力システム改革の加速も求められる。

 もうひとつは、鉄鋼業など重化学工業を含めた産業分野の脱炭素化を進めるためにも、積年の課題であるカーボンプライシングを早急に導入することである。この制度が導入されれば、企業は製品の製造方法、使用するエネルギーの選択、そして投資の決定でも、CO2排出量の大きさを考慮するようになる。脱炭素社会の実現へ、企業活動の基本的なルールとして必須のものだ。

 2030年削減目標の達成には、もちろん非政府アクターが果たす役割も大きい。1.5℃目標の実現をめざす日本の非政府アクターのネットワークである気候変動イニシアティブ(JCI)のメンバー数は、2018年に創設されてからの3年間で670余へと6倍以上に増加した。先駆的な企業・自治体ではRace to Zeroへのコミットメントが急速に拡大しており、今日までに40余団体となっている。RE100に参加する日本企業は60社を超えたが、これらの企業はCO2削減に実際に貢献する新規の自然エネルギー電源を求め、PPAの活用が拡大している。

 全国の自治体では2030年50%削減目標が広がってきており、東京都が国では先送りされた住宅への太陽光発電設置義務を導入する方針を表明するなど、削減目標達成にむけた具体的な施策の導入が始まっている。また、この1年の間に、日本でも気候対策の強化を求める若者グループの活動が急速に広がっている。これらの動きに示されるように、日本社会には気候対策の強化を求める声と強化を実現する力が確実に存在している。

 いま政府に求められるのは、一部の既得権益ではなく、自ら先駆的に対策を進める広範な非政府アクターの声に耳を傾けることである。気候危機の回避にむけた世界への責任を果たすために、また脱炭素化が急速に進む世界で、日本経済の持続可能な発展と国際競争力の確保を可能とするために、2030年にCO2の半減を可能にする政策を導入することを強く求める。



<関連リンク>
[特設ページ]「エネルギー基本計画改正案」を問う:脱炭素への道筋は示されているのか (2021年9~10月)

[Webinar]2030年持続可能なエネルギーミックスはどうあるべきか:政府案の徹底検証(2021年8月5日)



 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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