「建築物省エネ法」の国会審議が始まろうとしています。日本でもようやく全ての新築建物でエネルギー基準が義務化されます。しかし、既存の建物については、その対策の重要性は誰もが認めるものであるにもかかわらず、政策検討は遅れています。
これに対して、世界ではすでにいくつもの都市や国が実効性のある政策を導入し、先を走っています。中でも既存の建築物への性能基準の義務化は、今最も注目されている政策です。
建物に対し、エネルギー消費またはCO2排出削減の数値基準を課し、脱炭素化のゴールに向けて段階的に強化していくもので、一般的には、まず、性能の悪い建物を対象に改修義務を課し、その後は全ての建物に対して、性能向上を求めて基準を強化していきます。
米国では、すでに8つの都市(ニューヨーク、ワシントンDC、ボストンなど)と州(コロラド、ワシントン)で、性能基準制度が導入され、さらに30の自治体が2024年までに導入すると発表しています。
昨年12月に発表された欧州建築物エネルギー性能指令の改定案では、すべての加盟国が既存建物に対しても性能基準を導入することを求めています。それによって、既存建物ストックのうち最も性能の悪い15%を、住宅については2030年まで、住宅以外では2027年までに「エネルギー性能証書」のG等級から少なくともF等級に格上げするべく改修が義務付けられます。EU内の成功例に基づいて、こうした改正案が作られています。
本ウェビナーでは、米国と欧州から専門家をお招きして、欧米で進む既存建物に対するエネルギー性能基準政策の最新状況をご紹介し、主要な論点について、日本の視点からの質問を交えながら議論しました。
プログラム
基調講演 1 米国の州・都市における建物性能基準政策 基調講演 2 欧州における既存建物に向けた最低エネルギー基準政策 パネルディスカッション [モデレーター]西田 裕子 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(気候変動) アダム・ヒンジ ルイーズ・サンダーランド |
イベント詳細
日時 | 2022年5月17日(火)15:30 - 17:00 |
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開催形式 | ウェビナー(Zoom) |
主催 | 公益財団法人 自然エネルギー財団 |
参加登録・参加費 |
無料(要事前登録) |
登壇者プロフィール
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- アダム・ヒンジ
サステナブル・エネルギー・パートナーシップス マネージング・ディレクター - ニューヨークを拠点に、各国政府、大口のエネルギー需要家および供給事業者、研究機関や多国間組織などに対し、エネルギー効率化プログラムや政策立案支援サービスを提供するコンサルティング会社、サステナブル・エネルギー・パートナーシップスの経営者。世界各地の建物のエネルギー効率化を推進する政策・取り組みの成功事例を共有する仕組みを作るなど、さまざまな活動を行っている。インスティテュート・フォー・マーケット・トランスフォーメーションの理事長、ノースイースト・サステナブル・エネルギー・アソシエーションの理事長、アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)のフェロー、コロンビア大学国際公共政策大学院の非常勤研究員および非常勤准教授など、エネルギーや環境の専門組織で積極的に活動している。
- アダム・ヒンジ
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- ルイーズ・サンダーランド
レギュラトリ―・アシスタンス・プロジェクト シニア・アドバイザー - レギュラトリ―・アシスタンス・プロジェクトのシニアアドバイザーとして、需要家の視点からエネルギー政策を考え「エネルギー正義」の実現に取り組む。15年にわたり、エネルギーと建築の分野でエネルギー効率の向上と持続可能性の普及に尽力してきた。そのキャリアを通じて、エネルギーと建築業界、非営利セクター、政策立案者と密接に連携し、研究や政策立案に携わる。直近では、英国グリーンビルディング協会に所属。欧州委員会の外部専門家、英国貴族院で鑑定人として証拠を提出した経験もある。エネルギー分野に関わる前は、国際開発や地域開発の分野でキャリアを積んできた。
- ルイーズ・サンダーランド