自然エネルギー財団はこのたび、需給調整市場に関する2つのパブリック・コメント手続について、意見を提出しました。本コラムでは、その概要を整理して紹介します。
- 「適正な電力取引についての指針(改定案)」及び「需給調整市場ガイドライン(改定案)」1電力・ガス取引監視等委員会(以下、「電取委」という)制度設計・監視専門会合において議論(意見募集期間2025年12月26日より2026年1月29日まで)
- 「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会制度検討作業部会第二十三次中間とりまとめ(案)」2経済産業省総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会制度検討作業部会において議論 (意見募集期間2026年1月27日より2月25日まで)
サマリー
- (意見1)調整力は基本的に需給調整市場を通じて確保する方針だったが、容量市場に伴う余力活用や揚水発電随意契約の拡大によって、その方針と大きく異なる状況となっている。とりわけ「当面の間」の位置づけや随意契約の扱いが不明確なままでは市場の予見性や競争性 が損なわれかねない。あらためて調整力調達の基本方針を明確化し、関連制度変更のたびに整合性を検証すべきである。
- (意見2)需給調整市場で応札不足が続く中、市場外調達を行う場合には、公募や時間前市場の活用なども含め、効率的かつ透明性の高い調達手法を再検討すべきである。
- (意見3)需給調整市場の応札価格から容量市場収入を控除させる提案は、容量市場への参加が任意であるにもかかわらず事実上それを前提とするもので、両市場の制度設計と整合していない可能性がある。需給調整市場の価格規律の問題として対処するのではなく、各市場の目的や参加要件を整理した上で、市場間の関係性を踏まえた包括的な議論を行うべきである。
- (意見4)需給調整市場は、電力価格の形成への影響が大きく参加者も多様化していることから、卸電力取引所と同様に電気事業法上で運営主体を法的に位置づける方向で、国としても制度的な検討を進めるべきである。
- (意見5)応札価格の算定方法を「想定約定量」から「想定応札量」基準へ変更する提案は、固定費回収の考え方や算定根拠が不明確なままでは、事業者の恣意性や監視コストの増大、新規参入の萎縮を招くおそれがある。「想定応札量」の合理性を担保するため、運転実績等を踏まえた想定値に国が定める一定率を乗じて想定約定率を算出するなど、より明確なルール整備を検討すべきである。
- (意見6)入札価格に関する事前協議制度(B種電源協議)の廃止により、入札価格の監視が事後型へ移行すると、新規参入電源にとっては価格設定の妥当性判断が難しくなり、処分リスクが参入障壁となり得る。したがって、電取委が入札価格に関する相談や問い合わせに応じることを広く周知し、事前に相談できる運用を明確にすることが重要である。
背景
自然エネルギーの導入拡大には系統の柔軟性が重要である。技術的には火力発電や大型水力発電といった従来型電源に加え、太陽光や風力などの自然エネルギー電源、連系線や蓄電池なども調整力を提供することが望ましい。とりわけ日本ではこの数年、蓄電池の導入を補助金等によって促し、系統の柔軟性を確保する取り組みが進められてきた。そして、蓄電池を含む調整力の取引を行うのが需給調整市場である。
需給調整市場は、需給の調整や系統安定性の確保に必要なサービスを一般送配電事業者が確保する市場で、2021年度に開設され、現在5つの商品と1つの複合商品が取引されている。市場開設当初は1商品(三次調整力②)の取引から始まり、徐々にその商品範囲や広域運用・調達の範囲を広げてきた。2026年度からは全商品が30分コマ単位となり、調達タイミングも前日調達に統一され、すべての商品において広域運用が行われる予定である。これにより、2016年よりスタートした電力システム改革で実施された市場改革の最後の1ピースが埋まることになる。
図1:需給調整市場の商品導入スケジュール
ところで、需給調整市場で取引されるサービスは、一般送配電事業者が需給の調整や系統安定性を確保するために必要な電力を出せるよう、発電事業者等がスタンバイし、一般送配電事業者から指令を受けた際に求められた量の電力を発電、または抑制するというものである(その価値はΔkWと表される)。すなわち、発電事業者等がスタンバイしておく権利を一般送配電事業者に販売する市場である。
需給調整市場において注目されている技術の一つが蓄電池である。蓄電池は、自然エネルギー電力が豊富な時間帯に充電し、電力需要が増える時間帯に放電することで自然エネルギーの有効活用や需給の調整に貢献するとともに、安定した電力供給に求められる周波数や電圧の安定に寄与できる技術であり、自然エネルギー利用を加速する国々で積極的に導入されている。日本の需給調整市場では、FiT電源の調整のために調達される三次調整力②のほか、指令からサービス提供まで秒単位の時間の短い対応が求められる一次調整力(オフライン制御)にも対応できる。
2021年の需給調整市場開始以降、多くの蓄電池が需給調整市場に参加してきた。しかし、落札価格が高いことにより調整力調達費用が膨らむことが問題とされてきた。
他方、調達エリアや商品によっては、応札量が募集量に比して著しく少なく、募集量未達の状況が恒常的に発生していることも課題となっている。
そうした中、電取委および国の審議会(経済産業省総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会制度検討作業部会)は、需給調整市場の改定を提案した。具体的には、大きく以下4点であり、それらを一気に実施するという提案である。
- 提案1:一次調整力・二次調整力①・複合商品のΔkW上限価格を引き下げる
- 提案2:一次調整力・二次調整力①の市場募集量を相当程度減少する
- 提案3:需給調整市場ガイドラインが示す応札価格に盛り込める固定費の計算方法を変更する
- 提案4:応札価格の事前協議を廃止する
提案1、提案2は、ΔkW上限価格での約定が多い現状の下で調整力の調達費用を低減させることが目的である。確かに、現在の市場状況を前提とすると、一次調整力、二次調整力①の19.51円/ΔkW・30分という上限価格は、例えば蓄電池等に対するインセンティブが大きく、一部では2から3年で蓄電池の投資回収が可能といわれるような状況を生じさせた。いささか過大となったインセンティブを修正することは適切であるものの、今回、提案2の募集量削減とセットで行われることが、市場の予見性を損なうことになっている。さらに、今後どのようになるか不明な揚水発電の随意契約が需給調整市場の調達量に大きな影響を与えるような制度設計では、需給調整市場による調達がどの程度確保されるのかさえ不明となると言わざるを得ず、新規投資に対してマイナスの影響が大きい。さらに、提案3、提案4も、投資回収に与える影響が大きく、また新たに参加する事業者にとって大きな不安材料となりうるため、配慮が必要である。
これらの提案に対する当財団の提出意見の概要は、下記のとおりである。
意見内容
・意見1「調整力の調達に関する基本方針をあらためて明確化すべきである」
調整力は系統の安定的運用に必要だが、需給調整市場で募集量の未達が恒常的に続く状況下でも、停電は起こっていない。これは、発電事業者が小売電気事業者に電力を供給するために動かしている発電施設の「余力」を、一般送配電事業者が活用して調整できるからである。
余力の活用は、需給調整市場の導入前から行われていたが、需給調整市場の制度設計の議論では、調整力の調達は需給調整市場を基本とし、それ以外での調達を限定的に運用する方針が示されていた。例えば、2017年12月26日に実施された電力広域的運営推進機関(以下「広域機関」という)「第9回調整力の細分化及び広域調達の技術的検討に関する作業会」において、以下のように示されている。
また、2019年4月25日に行われた広域機関「第11回需給調整市場検討小委員会」では、電源の追加起動に対して、以下のように整理されている。
しかしながら、容量市場の導入(2020年度より入札開始、2024年度より容量メカニズム開始)に伴い、状況が変化した。容量市場で約定した調整電源(一般送配電事業者から出力の調整指令を直接送れる電源)は、余力がある場合一般送配電事業者がそれを系統運用で活用できる契約(余力活用契約)の締結が義務化された。同時に、2024年以降の需給調整市場において、一部商品の応札量が慢性的に不足する事象が発生したが、その不足を余力活用電源で補ってきた。
さらに、揚水発電を一般送配電事業者が随意契約で調達することで、市場での調達不足を解消する動きが始まった。
こうした状況は、需給調整市場の創設によって目指した調整力調達の方針とは大きく異なっている。
今回、「第二十三次中間とりまとめ(案)」は、「当面の間は市場以外での調整力調達手段(余力活用電源・揚水等随意契約)を併用していくことが必要であると整理された」3とするが、これについて以下2点の不透明な部分が残る。
- 揚水等随意契約の契約量は、需給調整市場で想定する募集量(必要調整力の1σ相当量)から差し引かれる。すなわち、(需給調整市場の募集量 = 必要調整力の1σ相当量 – 揚水等随意契約の契約量)となる。揚水等随意契約の量が多くなればなるほど、需給調整市場を通じで確保される調整力の量は減少することになるが、揚水等随意契約が暫定的なものか継続的な制度となるのか、などによって需給調整市場の募集量は大きく左右されるため、需給調整市場が透明性のある市場となれるのか不明と言える。とりわけ、「当面の間」が実際にどの程度の期間なのか(1,2年なのか、5-10年なのか)も明確ではない。
- 余力活用契約を使用することは致し方ない部分もあるが、余力活用にも、自然体余力電源(運転している発電機の定格容量と実運転容量との差分)と、追加起動を伴う余力電源の二種類がある。前者については比較的安価に運用することは可能であるが、後者については停止電源の起動を伴うための起動費(具体的には、追加燃料費、人件費など)やスケジュール調整などの措置が必要になる。発電事業者は、停止電源を需給調整市場へ応札する場合1回分の起動費等まで織り込んで応札できるが、需給調整市場へ応札しない選択も可能である。その場合でも、一般送配電事業者がその電源の追加起動が必要と判断すれば、発電事業者は余力活用契約に基づき電源を供出することになる。今回、需給調整市場における調達量を1σ相当量とすることに伴い、需給調整市場の約定価格等がどのように変化するは今のところ不明だが、仮に追加起動を伴う電源の未約定が続くのであれば、追加起動を伴う電源が需給調整市場の入札に参加するインセンティブが損なわれる可能性がある。
図2:一次調整力、二次調整力①②、三次調整力①の募集量の削減(複合商品の場合)
今後、需給調整市場を、多様な事業者や電源が参加する競争的な市場とするには、制度・ルールの予見性が重要である。そして、電源間競争の中で市場参加者が一定の利益を上げられる仕組みでなければ持続的とは言えない。その意味で、需給調整市場について議論していた段階では、基本的に調整力の確保は需給調整市場を通して行う原則が掲げられたはずである。それにもかかわらず、現在の状況はそれと相違が生じていると言わざるを得ず、市場参加者に対して予見性の低減につながる。
だからこそ、あらためて調整力確保のための基本方針を確認することが重要である。それと共に、とりわけ影響の大きいと考えられる容量市場や揚水等随意契約の影響については、それらの制度変更を行うたびに、委員会等で制度の整合性を議論、確認すべきであると考える。
・意見2「市場外調達は競争的な形で行うべきである」
意見1でも指摘した通り、現在の需給調整市場では、応札量不足等から市場外調達を含めた調達が定常的に行われ、それを前提とした制度に移行しつつある。そもそも、そのような調整力調達方針とするのであれば、基本方針をあらためてどのようにするか確認すべきであるというのは、意見1の通りであるが、その上で、市場外調達を行うのであれば、その調達においても競争的であることが必要ではないだろうか。すなわち、随意契約のような方法は不適切である可能性がある。
それに加え、需給調整市場における競争性の評価も容易ではない。なぜなら、需給調整市場はマルチプライスオークション4のため、その約定単価平均値と市場外調達の価格間の比較等では不十分な可能性がある。したがって、市場外調達を組み合わせた調整力確保を行うのであれば、そもそも何をもって競争的であると判断するのかを含めた効率的かつ透明性のある調達を行う仕組みを追求すべきである。
例えば、揚水発電の随意契約については、公募調達を再検討5することも一案である。また、2023年には、広域機関において三次調整力②の追加調達を時間前市場から行うことの課題整理が行われたが、調整力が30分単位となる2026年度以降において、あらためて調整力の時間前市場からの調達も含めた議論を再開してはどうかと考える6。
・意見3「需給調整市場に対する応札価格の議論は他市場との関係性を整理した上で行うべきである」
需給調整市場へ応札した電源は、適正な市場環境確保の観点から全て監視の対象となる。そして、今回電取委が提案する「需給調整ガイドライン(改定案)」に従うと、一定の条件を満たす電源等は容量市場への参加如何にかかわらず容量市場収入を控除した価格として応札する必要が生じる。
そもそも容量市場への参加は任意である。それにもかかわらず、容量市場へ参加しているか否かを問わず、一定の条件を満たす電源は全て、容量市場への入札を行うとした前提で需給調整市場の応札価格を決めなければならないことは、容量市場の制度と整合が取れていない。このような提案により、電源の容量市場への参加促進を期待する向きもあるかもしれないが、もしそのような方向性を目指すのであれば、それは容量市場の設計において行うべきであり、需給調整市場の応札単価に影響を及ぼす事項で行うことは適切とは言えない。
本提案がなされた背景には、各市場が電源に求める条件の違いがもたらす問題が潜んでいるように思われる。容量市場の落札電源には複数のリクワイアメントが義務付けられる一方、需給調整市場のみに参加する電源は容量市場の落札電源が課せられるリクワイアメントがない。それにもかかわらず、需給調整市場では、容量市場で落札していない電源の方が落札した電源より高値での入札が可能となり、電源間の公平性が議論になりうる。
とはいえ、仮にそれを議論するのであれば、需給調整市場に参加する電源は全て容量市場への入札義務を負うべきかなど、別の規制の議論が必要である。価格規律を定める需給調整市場のガイドラインで対応するのは、いささか議論の幅を小さくした付け焼き刃的な対応であると言わざるを得ない。あらためて、各市場が設置された目的に遡り、市場間の関係、参加者に求める条件を俯瞰的に整理し、理念に沿ったわかりやすい市場となるよう議論すべきである。
・意見4「需給調整市場の運営主体を法的に位置づけるべきである」
需給調整市場は、これまで調整力を担ってきた大規模電源のみならず多様なプレーヤーが参加する競争的な市場となることで、調整力の効率的な確保が期待される。また、需給調整市場の価格はインバランス価格に反映され、ひいては卸電力価格に影響を与えるもので、価格形成の適正化の要請は高い。市場参加者の多様化や適正な価格形成の必要性は、卸電力取引所が電気事業法改正により指定法人化された際と同様の状況にあるといえる7。
国は、需給調整市場の運営主体である一般社団法人電力需給調整力取引所において、法制度上の措置も含めた検討を行うと提案する。同取引所の検討も重要であるが、国としての検討も進めるべきである。電気事業法に卸電力取引所と同様の規定を設け、調整力の取引所の規律のあり方等に法的根拠を与えることが重要と考える。
・意見5「需給調整市場に参加する電源の入札価格について、固定費相当額の計算方法を明確化すべきである」
これまでは、需給調整市場の入札価格に盛り込むことが可能な固定費額の算定について、想定約定量を用いることが認められてきた。事業者にとっては、応札した札は必ず落札するとは限らないため、固定費の回収を確実にするために約定量を想定し、それに対して入札価格を考慮してきたわけである。これに対し、今回提案された入札価格の計算方法は、想定応札量を考慮することとされた。
例えば1日48コマに対して6コマだけ約定すると想定する事業者がいるとする。約定率は16.6%であり、固定費はこの16.6%の落札コマで回収すると考えるわけなので、入札価格はその分高くなる。しかし、想定応札量を用いる場合、当該電源が応札可能なコマ数(例えば24コマ)などに対して入札価格を設定する必要がある。この例の場合、固定費分の考慮は入札価格で1/4に下がる。
電取委が提案するガイドライン(改定案)では、とりわけ蓄電池の場合、「充放電制約等を考慮し、当年度に応札することが可能なΔkWを基に、運転パターンや過去実績等を踏まえて算定」するものと示された。しかし、応札事業者が「運転パターンや過去実績等」を踏まえて算定した想定応札量の合理性がどう評価されるかは示されておらず、あいまいさが残る。自ら決めることができるとすれば、想定応札量を過少に算定し、入札価格を高くすることも不可能ではない。それは、言い換えると、電取委の監視コストを増加させることにつながる。
他方、想定応札量の合理性を同種の電源等から一般的に想定し判断するとすれば、新しい電源にとっては、事例や実績が少ない中で業務改善命令等の対象となりうる判断基準がわからず、参入を躊躇することになりかねない。
電取委が説明するとおり、想定約定量を事業者自らが過少に算定することで固定費相当額を過大化できることは問題であり、改善が図られるべきだが、上記のような課題を低減するため、当該電源等の運転パターンや過去実績等を踏まえて算定された想定応札量に、予め国が定めた一定の率を乗じて想定約定率を算出し、これを用いることを検討すべきである。
・意見6「入札価格の規律に関し、電取委に相談・問い合わせができることを広く周知すべきである」
これまでは、固定費の回収に必要な費用を盛り込んだ入札価格の設定を行う場合、事前に電取委と協議することになっていた(B種電源協議と呼ばれる制度である)。すなわち、事前に電取委と協議した入札価格以下で入札する限り、業務改善命令等の対象外となり、設備投資から年月が浅い新しい電源にとって、安心して取引に参加できる環境を整えるための重要な枠組みであったと言える。
しかし、今般の電取委の提案は、この事前協議制度を廃止し、需給調整市場の入札価格の監視は基本的に事後監視に切り替えるというものである。その理由は、事前協議は手間暇がかかる一方で、事前に協議した高価格の電源は市場で落札する可能性が相対的に低く、協議コストが見合わないためと説明されている。しかし、意見5でも述べた通り、新規参入電源にとっては、これまでの事例・実績の蓄積も少なく、目安となる基準や考え方が見えづらい中、需給調整市場への応札を行う場合、入札価格の水準が妥当かを判断するための材料がガイドラインのみとなり、また考え方の解釈に間違いがあった場合、処分対象になることは、事業運営上のリスクと捉える向きもあろう。それは、新規電源の参加を促すという視点では一つのハードルである。電取委は会合の中で、今般のガイドライン改定案の内容に関する事業者からの質問に丁寧に説明すること、問い合わせを受け付ける旨を説明していることから、新規電源の入札価格について事前に相談が可能であることを広く周知し、運用することが求められる。
おわりに
今般の需給調整市場の制度改定案は、それぞれが一つだけ行われるだけでも市場に大きな影響を及ぼす可能性がある提案を同時に複数、一気に行うものである。さらに、2026年度全商品が30分化かつ前日調達に移行するタイミングで提案された。この制度変更は市場参加者に対し、日本の需給調整市場は、突然の大きな制度変更の可能性(=リスク)があるということを認識させるのには十分なものとなったと考えられる。だからこそ、電取委ならびに経済産業省の委員会において、今回の制度変更について軒並みの反対が生じたと言えよう。調整力は新規参入を含む多様な事業者の参加を促し、競争性を高めるということが基本方針のはずだが、それに逆行しかねない要素が多分にあったといわざるをえない。
需給調整市場は、これまでもたびたび制度の改定が行われ、調達量の未達や調達コストの増大などの問題に対し、上限価格の設定や調達量の削減が実施されてきた。制度の不具合の修正は必要だが、それが頻繁で、かつ劇的な変更になると、新規参入を含む多様な事業者の参加を促すことに逆行しかねず、強く危惧される。制度変更が、日本の電力市場に対して信頼を失わせ、新規参入者ならびにその投資家にとってリスクがあると認識されると、新規参入が途絶える可能性があるからである。だからこそ、電取委ならびに経済産業省には、予見可能性を伴う市場制度を作り上げていくことを求めたい。
- 「適正な電力取引についての指針(改定案)」、「需給調整市場ガイドライン(改定案)」
- 「第二十三次中間とりまとめ(案)」
- 「第二十三次中間とりまとめ(案)」p.11。
- 各応募者の入札価格が落札価格となる価格決定方式。落札分の最高価格が全札の落札価格となるシングルプライスオークションと異なり、落札分の価格にばらつきがあるため、一義的に価格の競争性を評価することが難しい。
- 需給調整市場の全面運用開始の前には調整力公募制度があり、系統安定性確保に必要な調整力を電源Ⅰ群として公募調達していた。
- 広域機関 第43回需給調整市場検討小委員会事務局 第54回調整力の細分化及び広域調達の技術的検討に関する作業会事務局「調整力必要量の考え方について(三次調整力②の効率的な調達)」(2023年11月9日、同会合 資料2)参照。
- 経済産業省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力システム改革小委員会制度設計ワーキンググループ事務局「第14回 制度設計ワーキンググループ 事務局提出資料 ~卸電力取引所の指定法人化について~」(2015年7月28日、同会合資料6-3)。




