日本では太陽光発電が不当に批判されることがある。中国からの輸入が多いために、両国間の外交面の緊張状態が影響を及ぼしている。中国が世界の太陽光発電のサプライチェーンを強力に支配していることは望ましくないが、この状況を短絡的に見ることのないように、実利的なエネルギー政策を推進する必要がある。
太陽光発電が日本のエネルギー安全保障と経済を強くすることは間違いない。2024年に日本国内で出荷した太陽電池モジュールのうち、34%は日本の企業が占めた。ただし日本の企業が海外で生産した分を含めると、その多くは中国で生産して輸入したものである。一方でインドが太陽電池モジュールの新たな生産国として台頭してくるなど、輸入先を多様化する余地は大いにある。日本国内でも支援策を実施すれば、生産量を拡大することは可能だ。さらに太陽電池モジュールのリサイクルによって、輸入量を削減できる可能性も見えてきた。
すでに太陽光発電は日本で最もコスト競争力のある発電方法になった。コスト全体に占める太陽電池モジュールの割合は小さく、それ以外の経済的な価値の多くは日本国内で生み出されている。
輸入の多様化と国内生産の拡大へ
太陽光発電協会(JPEA)によると、2024年に日本で出荷した太陽電池モジュールの3分の1以上は日本企業が生産した(図1)。ただし日本企業の製品の大半は海外で生産している。JPEAの統計では生産国の情報はないが、BloombergNEFのデータを見ると中国が多いことがわかる。とはいえ日本の企業が工場を運営していることを考えれば、日本国内の太陽電池モジュールが海外の企業に過度に依存している、という指摘は当たらない。
図1:日本国内の太陽電池モジュールの出荷状況(2024年)
出典:太陽光発電協会「出荷統計」
財務省の統計によると、2025年の太陽電池モジュールの輸入額(1239億円)のうち、78%は中国で、20%は東南アジア(フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナム、カンボジア、タイ)である(図2)。今後を展望すると、日本は輸入先を多様化することが可能だ。太陽電池モジュールの製造能力では世界で第2位のインドからの輸入量が、2025年の時点ではわずか0.001%しかない。
インドの太陽電池モジュールの主な輸出先は米国である。しかし2025年8月末以降、米国ではインドの太陽電池モジュールに対して64%の関税を課している1。これによって、インドの企業(Waaree Energies, Tata Power Solar Systems, Adani Enterprisesなど)は販売先の多様化を迫られている。インドと日本のあいだの取引量を拡大することは、両国にとって有益だろう。
図2:日本における太陽電池モジュールの輸入国(2025年)
BloombergNEFによると、日本の課題は国内の企業が太陽電池のセルとモジュールしか生産していないことである。生産の前工程で必要なポリシリコン、インゴット、ウェハーは生産していない(図3)。このためサプライチェーンの上流で問題が生じた時の対策がない。
図3:日本企業のセグメント別の太陽電池製造能力と国内の太陽光発電導入量(2025年)
出典:[製造能力] BloombergNEF 「Solar Manufacturing Assets」、[年間導入量] 同 「Global PV Market Outlook 2025 Q4」(いずれも要購読)
これは残念な状況と言えるが、解決できないことではない。かつて日本の企業は国内でポリシリコンとウェハーを製造する技術力を持っていた。しかし世界的なコスト競争が激しくなったことによって、2022年に最後の工場が閉鎖されてしまった。
日本政府が太陽電池モジュールの上流工程についても戦略的な重要性を認識するのであれば、補助金や税額控除などの支援策を通じて、日本の企業に生産を奨励するか、海外の企業に日本国内で生産能力を確立するように促進することは可能である。
たとえば米国では、25%の税額控除のおかげで、2025年にインゴットとウェハーの国内生産が復活している2。米国のCorning社がミシガン州にインゴットとウェハーの工場を新設した。製造能力は年間に2GW(ギガワット=100万キロワット)である。
リサイクルで素材とモジュールの輸入を低減
太陽電池モジュールの輸入は1回の取引だが、化石燃料の輸入は繰り返す必要がある。いったん太陽電池モジュールを設置すれば、寿命が続く限り発電できる(30年程度)。それに対して石炭やガスを使う火力発電は、燃料を絶えず投入しないと電力を生み出すことができない。この点で太陽光発電は日本のエネルギー安全保障にも貢献する。
さらに太陽電池モジュールはリサイクルできるが、化石燃料はリサイクルできない。
太陽電池モジュールを輸入すると、間接的に原材料も輸入したことになる。日本では銅とボーキサイト(アルミニウムの原材料)の採掘量は非常に少ない。しかし精錬した銅とアルミニウムという2つの価値ある金属が、太陽電池モジュールのリサイクルによって、ケーブル、ジャンクションボックス、フレームなどから回収できる3。
国際エネルギー機関(IEA)の共同研究開発イニシアティブである「太陽光発電システムプログラム」 (IEA-PVPS)によると、日本で太陽電池モジュールを適切な方法でリサイクルする企業がいくつかある。そのうちの1社が浜田(本社:大阪府高槻市)だ。
浜田は京都府に太陽電池モジュールのリサイクルセンターを所有している。1日あたり21.6トンのモジュールを処理できる。ガラス、金属、ポリマーなどの素材を回収するために、機械的な処理を施す。ガラスの破損がないモジュールにはホットナイフを、ガラスの破損があるモジュールにはハンマーを使用する(図4)。回収した素材はガラスメーカーや精製会社に供給する。
図4:浜田の太陽電池モジュールをリサイクルする工程
出典:IEA-PVPS「Status of PV Module Recycling in IEA PVPS Task 12 Countries 2025 (September 2025)」をもとに自然エネルギー財団が作成
太陽電池モジュールのクローズド・ループ・リサイクルによって、古いモジュールからすべての素材を回収して、新しいモジュールを作り直すことが可能になる。IEAのプログラムでは全素材のうち85%の回収率を想定している4。回収した素材は再利用する前に浄化する必要がある。
一般的に太陽電池モジュールのリサイクルは技術的に複雑で、十分に採算がとれる状況になっていない。その点で日本が世界のリーダーを目指す好機と言える。
日本の経済・企業にもたらされる恩恵
BloombergNEFによると、日本では2024年の時点で、新設の太陽光発電が既設の石炭火力発電を含めて、カーボンプライシングなしでも競争力がある(図5)。
さらに新設の太陽光発電と蓄電池(持続時間:4時間)を組み合わせた場合でも、既設のガスコンバインドサイクル発電と比べると競争力がある。天候によって変動する自然エネルギーの電力を安定電源として、コスト効率よく利用できることを示している。
図5:日本における主要な発電方法のコスト(2024年)
出典:BloombergNEF「Levelized Cost of Electricity 2025 (February 2025) 」(要購読)
蓄電池のある・なしにかかわらず、太陽光発電を拡大することで化石燃料による発電は減少していく。消費者には電気料金の低下をもたらし、同時に化石燃料の輸入量と温室効果ガスの排出量を削減できる。日本にとっては経済効率性、エネルギー安全保障、環境保護の3つの面で有益であり、しかも実現可能な状況になっている。
加えて太陽光発電の導入拡大は国内の経済に恩恵をもたらす。太陽光発電による経済価値の多くが日本の企業によって生み出せるからだ。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、日本の大規模な(ユーティリティスケール)太陽光発電プロジェクトの設置費用のうち、太陽電池モジュールの割合は13%に過ぎない(図6)。系統接続、施工、ソフト・コストが全体の76%を占める。
図6:日本における大規模な太陽光発電の設置コストの内訳(2024年)
系統接続のコストには、中圧ケーブルとコネクター、変圧器や変電設備を含む。電力系統の技術面では、三菱電機、日立エナジー、富士電機、東芝エネルギーシステムズといった日本の企業が世界各国で活躍していて、日本国内でも優位な存在である。
施工のコストには、用地の準備(道路やケーブルのルーティングなど)と機器類(架台、モジュール、インバーター、系統接続装置、監視・制御システムなど)を設置するための費用を含む。通常は国内の企業が施工を実施する。
ソフト・コストの大半は、開発事業者のマージン(総コストの6%程度)と許認可にかかる費用(同4%程度)である。日本で代表的な開発事業者には、豊田通商、ENEOS、オリックス、東急不動産、大和ハウス工業、NTTグループなどがある。
ここでインバーターについても言及しておくことがある。太陽光発電の設置コストに占めるインバーターの比率は3%程度と小さいが、2025年の春に注視すべき事象が発生した。米国の専門家が、中国製の太陽光発電用インバーターの内部に不正な通信デバイスを発見したことによって、エネルギー安全保障の観点で懸念が高まった5。
日本国内では、さまざまな日本の企業がインバーターを販売している。オムロン、パナソニック、ダイヤゼブラ電機、TMEIC(旧社名:東芝三菱電機産業システム)、ニチコン、安川電機などが代表的だ。
太陽光発電の動向を調査・研究する資源総合システムによると、2024年に日本国内で出荷したインバーターのうち43%を日本の企業が占めた6。海外の主な企業は、中国のHuawei Technologies(34%)とSungrow Power Supply(15%)、ドイツのSMA Solar Technology(6%)である。
中国製のインバーターの問題に対する解決策はいくつかある。第1に、システムを使って入念にインバーターを検査する。もし不正な通信デバイスが日本でも発見された場合には、輸入禁止という厳格な措置をとることができる(後述するイタリアの事例を参照)。それと並行して、日本の企業あるいは日本に設立した中国以外の海外の企業による生産を推進する。
イタリアでは2025年の秋に、太陽電池モジュールの調達を多様化するために、中国の企業が製造した機器(セル、モジュール、インバーター)の使用を認めない形で太陽光発電プロジェクトの入札を実施した 7。落札したプロジェクトの平均価格は0.066ユーロ/kWh(キロワット時)だった。それ以前の2025年の夏には機器の製造元を規制しない方法で入札を実施したが、その時の平均落札価格は0.057ユーロ/kWhだった。中国の製品を禁止することによる価格の増加は0.01ユーロ/kWhに満たない水準だ。厳しい規制を設けた場合でも、太陽光発電の経済性に与える影響は限定的なことが明らかになった。
日本でも中国の産業を脅威に感じることなく、積極的に太陽光発電を推進すべきである。地域に与える影響を考慮しながら、社会的な期待にこたえられるプロジェクトの実現に注力することが望まれる。
- BloombergNEF, US Tariffs, Onshoring Delay Set Back India's Solar Makers – August 12, 2025 (accessed January 8, 2026) [subscription required].
- Utility Dive, US has onshored full solar supply chain: SEIA – October 30, 2025 (accessed November 26, 2025).
- IEA, Solar PV Global Supply Chains (July 2022).
- Ibid.
- Reuters, Rogue communication devices found in Chinese solar power inverters – May 15, 2025 (accessed November 25, 2025).
- 資源総合システム、「太陽光発電マーケット2025 ~市場レビュー・ビジネスモデル・将来見通し~」 (2025年9) [有料].
- BloombergNEF, Italy’s Ban on China Solar Kit Lifts Auction Prices by 17% - December 13, 2025 (accessed January 8, 2026) [subscription required].




