明けましておめでとうございます。
2026年はエネルギー政策の分野において、「安全」が重要なキーワードになる年ではないでしょうか。
昨年11月に公表されたIEAの「世界エネルギー見通し(World Energy Outlook)2025」は、その冒頭で、「これほど多くの燃料や技術が同時にエネルギー安全保障上の緊張にさらされた時代は他にない」と述べています。日本は、エネルギー供給の8割以上を海外からの化石燃料輸入に依存しており、エネルギー安全保障の重要性は特に際立っています。
また、今年は2011年の東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故から15年という節目の年でもあります。大規模地震と津波によって原発事故が発生し、その波及への不安にさいなまれた経験、東日本の多くの発電所が停止し極端な電力不足に陥った経験を経て、安全で安定した電力供給体制の確立をめざす改革が進められてきましたが、いまだ脆弱性が完全に克服されたとは言えません。
そして化石燃料依存が続き、温室効果ガスの排出削減が遅れる中で、気候変動は、日本においても猛暑、集中豪雨、台風の激化など、生命と生活の安全を脅かす、現在進行形の危機となっています。
これら三つの意味での安全を確保するエネルギー転換の中心は、化石燃料への依存をなくし、自然エネルギーを中心とする分散型のシステムを確立することです。世界でも日本でも転換への逆風が吹いているようにも見えますが、昨年7月に公表された国際連合の報告書「転換の好機をつかむ」は、「世界は今、化石燃料に依存するエネルギーシステムから、国内で賄える低コストの再生可能エネルギー主導のシステムへの急速かつ広範な転換という転機を迎えている」と評価しています。
実際、年末に公表された推計1によれば、2025年に世界の自然エネ電源設備の増加量は過去最高の793GWに達したとされています。自然エネルギーが継続的に増加しているという評価はIEAも同様で、「世界エネルギー見通し」でも「自然エネルギーは他の主要エネルギー源よりも速い成長を示し、なかでも太陽光発電(PV)が牽引役となっている。」としています。
世界における自然エネルギー拡大の勢いを日本に取り込むため、国でも自治体でも、また多くの先駆的企業でも、様々な試みが進められていますが、まだまだやるべきことはたくさんあります。
太陽光発電のこれからのフロンティアはソーラーシェアリングとともに、建物・施設への設置です。この点で、例えば欧州で拡大しているプラグインソーラーは、今の制度のままでは日本で使えません。ドイツではすでに400万台、2.5GW程度が導入されたと見られ、規模的にも小さなものではないですが、それ以上に大切なのは自然エネルギーの社会的受容性を高める上で大きな意味があることです。住宅内のコンセントに差し込むだけで使えるプラグインソーラーなら、集合住宅や賃貸住宅の居住者も太陽光発電を使えるようになります。これまで使えなかった人々が実際に使ってみて、太陽光発電のメリットを実感できるのです。
太陽光発電、風力発電に加え、地熱発電にも注目が始まっていますが、加速のためには、その開発が温泉法で規制されているという現状を改め、早急に地熱発電事業法を制定すべきです。地熱発電技術では日本企業が世界をリードしており、地熱発電用タービンの6割超の世界シェアを持っています。大きなポテンシャルのある地熱発電開発を促進するための法律がないという現状は早急に改める必要があります。
エネルギー転換には、自然エネルギー拡大に加え、エネルギー効率の改善、電化の促進も大切です。電化に関して言えば、ここでも日本企業が世界をリードする技術を持っているヒートポンプを家庭やオフィスでの暖房、給湯で徹底的に活用し、更に産業分野でも活用していくことが必要です。効率化と電化が進めば電力以外のエネルギーの海外依存も減らすことができます。
四季折々の多彩な自然を享受する日本は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスという自然エネルギーを視野に入れれば、決して資源小国ではなく、持続可能なエネルギー資源に恵まれた豊かな国です。日本を、化石燃料の資源国に頭を下げる必要のない、エネルギー自給率100%の国にしていく鍵は、国内の豊かなポテンシャルを活かせるように制度と政策を変えることです。ペロブスカイトの開発促進は重要ですが、その実用化まで待つ必要はありません。日本が自国の技術と自然エネルギー資源を活用し、そしてエネルギー効率化と電化を進めて自給率を高めることに成功すれば、そのモデルは、これから経済成長をとげるべきアジアやアフリカの国にも提供し、これらの国々のエネルギー安全保障と脱炭素化を支援することができるでしょう。
2026年は、そうした安全な日本と世界へ歩みを早める年にしていきましょう。




