電気料金の上昇は再エネ賦課金のせい?

木村 啓二 大阪産業大学 経済学部国際経済学科 准教授 / 自然エネルギー財団 特任研究員

2025年12月15日

 ここ数年、電気代の高さに対する懸念が指摘されている。エネルギー価格の高騰や円安の影響もあり、日本の電気料金は大きく変動してきたが、その「犯人」としてしばしば名指しされるのが再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)である。一部のメディアやSNSでは、「再エネ賦課金のせいで電気代が高くなった」といった言説もみられる。しかし、それらは本当にデータによって裏付けられているのだろうか。ある一時点の動きや一部の数字だけを取り上げた議論では、電気料金高騰の本当の要因が見えてこないのではないだろうか。

 ここでは、公表データに基づき、近年の電気料金の動きとその背景をあらためて整理し、再エネ賦課金が実際にどの程度影響しているのかを検証する。そのうえで、再エネ賦課金の将来見通しを示しつつ、将来にわたって電気料金の負担を抑えていくには、どのような考え方や方策があり得るのかについて考えてみたい。

電気料金の上昇は再エネ賦課金のせい?

 電気料金が上昇している。家計調査年報によると、二人以上の世帯の家計における年間の電気代支出額は2019年に約13万円だったのが、2024年には14万円を超えている。この電気代の上昇と再エネ賦課金を結びつける言説もある。例えば、毎日新聞は2024年11月8日付の記事「電気代高騰、背景に『賦課金』値上げ 再エネ買い取り制度の功罪」1で、電気代の高止まりを取り上げたうえで、「高騰の一因には、政府が主力電源と位置づけ、推進してきた再生可能エネルギーも関係している」と述べ、再エネ賦課金が2023年度から24年度に大きく増えた一時点の事例を詳しく紹介している。しかし同記事は、電気料金全体の上昇に対する他の要因(燃料費など)の寄与についてはほとんど触れておらず、再エネ賦課金が電気料金高騰の主因であるかのような印象を与える構成になっている。

 では、実態はどうなのか。電気料金のうち再エネ賦課金分とそれ以外の部分を切り分けてみてみよう。再エネ賦課金を除く電気料金は、全国の電力会社が毎月報告している販売額と販売電力量から、月別の電気料金単価を計算できる。工場などの大量に電気を消費する特別高圧から一般家庭の低圧電灯の数値を合わせて加重平均した電気料金を計算した。これに再エネ賦課金が付加される。また、実際にはこれに消費税がかかるものの、ここでは消費税を除外して議論する。

 図1から明らかなように、2022年以降の電気料金の高騰の原因は再エネ賦課金によるものではない。電気料金が上昇し始めたのは2022年2月からで、再エネ賦課金ではなく、それ以外の電気料金部分が急激に上がっていることが確認できる。電気料金の高騰は2022年末にピークに達した後、急速に下落し、2024年度以降ほぼ横ばいの水準で推移している。

 図1 平均電気料金・再エネ賦課金の月次推移

出所:電力・ガス取引監視等委員会「電力取引の状況(電力取引報結果)」より作成

 昨今の電気料金の高騰の主原因が再エネ賦課金でないとすると何が原因か。結論から言えば、化石燃料の輸入価格の高騰によるものである。図2に示すように、日本の現在の主力電源である液化天然ガス(LNG)火力発電の燃料価格に電気料金が後追いする形で上下している(図2)。電気料金はLNG価格だけではなく、石炭価格や原油価格にも影響を受けるが、それらもほぼ同じ価格変動の傾向であり、基本的に化石燃料の価格に連動しているとみてよいだろう。

図2 平均電気料金単価・再エネ賦課金・LNG価格の推移

出所:図1出所に加え、財務省「貿易統計」より作成

 むしろ再エネ賦課金自体は、電気料金の高騰直前2021年度を起点に前後4年間の平均をみるとほとんど変わっていない。2018~2021年度の再エネ賦課金の平均値は1キロワット時あたり3.05円であったのに対して、2022~25年度の平均値は1キロワット時あたり3.08円であり、電気料金高騰以前とほぼ同じ水準にとどまっている。

 また、再エネ発電事業者に支払われている交付金も近年はほぼ横ばいである。交付金とは、再エネ賦課金を原資として再エネ発電事業者に交付されるお金のことである。2020年度までは年々増加し続けてきたものの、2021年度以降2.6兆円で横ばいに推移している。市場の電力価格が高騰した2022年度には、交付金の支払いが少なくすんでいる。これにより翌年度の再エネ賦課金を少なくすることができているのである。

図3 再エネ交付金額の推移

出所:低炭素投資促進機構および電力広域的運営推進機関の財務諸表より作成

 以上から、少なくとも2022年以降の電気料金高騰の原因は再エネ賦課金でないことは明らかである。むしろ、2022年の電気料金の高騰の影響を受けて交付金が大きく減少し、2023年度の再エネ賦課金は大幅に減額された。これは再エネ賦課金が再エネ電気の買取価格と市場価格との差額で決まるため、電気の市場価格が高騰した局面では再エネ賦課金が低下する構造になっているのである。言い換えれば、再エネ賦課金は電気料金高騰の影響を緩和する効果をもたらしている。

今後再エネ賦課金がどんどん上がっていくのでは?

 今再エネ賦課金がほぼ横ばい状態が続いていても、今後再エネ賦課金がさらに大きく増えるのではないか。この問いに対する答えは簡単ではない。再エネ賦課金は、電力市場価格・消費電力量・調整力確保費用など様々な要因が影響して決まってくるからである。

 そこで、まずは予測しやすい再エネ電気の買取費用の総額の見通しを推計してみる。買取費用の総額が変わらなければ賦課金も増えにくいし、買取費用がどんどん増大するようだと再エネ賦課金が上がりやすくなる。ここでは、太陽光発電・陸上風力発電・洋上風力発電中心にそれぞれ今後も堅調に伸びていくと仮定している。買取価格(FIPの基準価格)は、直近の買取価格や落札価格等を反映して今後を予測している。ただし、洋上風力発電については、コストが高まっているとの懸念もあり、それを反映した高めの価格を想定している。

図4

(a) 買取費用の実績額と推計額

(b)買取電力量の実績と推計

 以上の前提にもとづいて今後の買取費用を推計すると、2033年度にかけて買取費用が増加するものの、増加はゆるやかに抑えられ、34年度以降急速に減少する見通しである。図4(a)に示すように、買取費用は、2024年度の約4.2兆円(実績値)から2033年度に約5.2兆円でピークを迎え、2034年度から急速に減少していく見通しである。2033年度までの増加額は年間平均約1000億円であり、固定価格買取制度が始まった当初、年増加額が4000億円超であったのに比べると年増加額はゆるやかになる見通しである。逆に2035年度以降、買取費用が年間最大約4000億円ずつ減少する可能性がある。

 一方で、買取電力量は、年80億kWhずつ増えていき、2033年度には約1900億kWhを超える見通しである(図4(b))。2024年度の買取電力量約1300億kWhから45%増加することになる。

 なお、他の条件を等しくし、買取費用のみで考えると、再エネ賦課金単価が最も高くなるのは2032年度である。その見込み単価を推計すると、25年度比で1キロワット時あたり0.4円程度増加する見通しである。これは、月400kWhを使う標準家庭で月約150円の負担増に相当する。しかし、それ以降、再エネ賦課金単価は急速に低くなり、2040年度には25年度に比べて1キロワット時あたり2円程度減少し、再エネ賦課金がおよそ半額以下になる見通しである。

 今後の買取費用の増加が緩やかになる理由は2つある。第一に、住宅用太陽光(10kW未満)の買取期間が10年なので2022年度以降順次終了しており、その分の買取費用が減少していっている。新たに設置導入される太陽光発電もあるが、それらの買取価格は当初の買取価格に比べて大幅に安いので、買取費用が減少しているのである。さらに、初期に運転開始した地熱発電も2028年度から買取を終了するものが出始める。第二に、新規導入される発電所の買取価格は安くなっているので、買取電力量は増えるが、買取費用は増えにくい構造になっているからである。

とはいえ電気料金を抑えたいが、どうしたらよい?

 電気料金を将来にわたって抑えたいのであれば、中長期的な視点が重要である。というのも、電気をつくる発電所・電気を送る送電網・電気を利用する機器・建物に至るまで、いずれも設備形成や更新に長い時間と多額の投資を要するからである。もし政策を頻繁に変更するようなことになれば、それまでに投じてきた資金が無駄になるだけでなく、長期的な投資そのものがしにくくなってしまう。そのため、まずは中長期的な方向性を明確にしつつ、その都度状況にあわせて政策を微調整していくのが望ましい。

 この点を踏まえて、電気料金抑制のための中長期的な方向性としては、化石燃料からの脱却を基本路線とすべきである。これまで示したように、昨今の電気料金高騰の主因は化石燃料価格の急騰である。過去のエネルギーコストの上昇もオイルショック時のように化石燃料の価格上昇に由来するものが多い。また、昨今の貿易収支の悪化や円安を考慮すれば、海外からの輸入に頼るエネルギー構造を変革する必要性は一層高まっている。実際に、化石燃料(鉱物性燃料)の輸入額は輸入品目中最大であり、2022年度には約35兆円を超え、24年度も約25兆円であった(財務省「貿易統計」より)。

 以上の方向性を踏まえて、重視すべきエネルギー政策は、第一に省エネである。省エネとは、不便を我慢してエネルギー消費量を減らすことではない。快適で便利な生活を少ないエネルギーで実現することである。特に省エネのポテンシャルが大きいのは、建物の高気密高断熱化・ヒートポンプ利用・電動化の拡大である。例えば、高断熱化した集合住宅では、快適性を増しながら暖房エネルギーの消費が日本平均に比べて約4割減少したという実測結果もある2。省エネが進めば、仮に電気料金単価が変わらなくても、支払額は少なくて済むため、国民の経済的な負担が軽減される。

 第二に重要なのは、コスト効率に優れた自然エネルギーの普及拡大である。いくつかの自然エネルギーについては、すでに火力発電よりも安価に発電できるようになっている(図5)。例えば、事業用太陽光発電の競争入札では2025年度の入札(3回分)の加重平均落札価格は、1キロワット時5.5円であり、陸上風力発電は12.0円であった。いずれも現在の主力電源である火力発電よりも安い(図5)。こうしたコスト効率的な自然エネルギーを促す事業環境整備や投資促進策を一層進めることが、中長期的な電気料金の抑制に寄与する。何よりも、これらの自然エネルギーは燃料費がゼロの国産エネルギーであるため、価格変動リスクが小さく、供給途絶の心配がない点も見えないメリットである。

 図5 太陽光と風力の落札価格と火力の発電コストの比較

出所:電力広域的運営推進機関「入札結果」資料・発電コスト検証ワーキンググループ(2025)「発電コスト検証に関するとりまとめ」より作

 他方で、買取価格が高く将来にわたってコスト低減の見込みが低い電源については、支援のあり方や範囲を再検討すべきかもしれない。例えば、10年以上買取価格の低減がみられない買取価格の高い電源については、1年間に利用可能な賦課金額の上限を定め、その範囲内に認定量をとどめるなど、一定の歯止めをかけることもありえる。それ以上の支援については別のスキームを活用する等も検討する価値があるだろう。

 また、賦課金そのものの負担主体を広げることも、各主体の負担を軽減することにつながる。これまで再エネ賦課金を負担してきたのは、小売電気事業者から電気を購入する消費者に限られている。他方で、一定規模以上の自家発電設備を所有する事業者が自家消費している電気の消費量については再エネ賦課金の支払い対象外になっている。例えば、2024年度には643億キロワット時が自家消費されていた。これらの電力消費者にも再エネ賦課金の負担を求めることで、現在再エネ賦課金を支払っている消費者の負担が10%程度軽減される。これは法改正が必要な事項であり、容易ではないが、電気料金負担の抑制のために早急に取り組むことができる手段である。 

おわりに:電気料金をめぐる冷静な議論のために

 本稿で見てきたように、近年の電気料金高騰の主因は再エネ賦課金ではなく、化石燃料輸入価格の急騰である。再エネ賦課金は、市場価格高騰期には交付金の減少を通じて水準が抑えられ、電気料金の変動を一定程度ならす効果がみられる。わかりやすい再エネ賦課金のみを電気料金高騰の「犯人」とみなす議論は、こうした事実を十分に踏まえていない。

 将来にわたって電気料金負担を抑制するには、短期的な対症療法ではなく、化石燃料からの段階的な脱却という中長期的な方向性を堅持することが重要である。高気密・高断熱化やヒートポンプ、電動化の拡大といった省エネは、家計・企業のエネルギー支出を着実に下げる手段である。コスト効率に優れた自然エネルギーの普及拡大は、燃料費がかからない国産エネルギーであるので、化石燃料価格や地政学リスクへの脆弱性を低減し、電気料金の急騰を抑制するだろう。

 同時に、買取価格が高止まりしている電源への支援のあり方や、賦課金の負担主体の在り方を見直し、限られた賦課金財源をコスト効率の高い再エネ・省エネに優先配分するとともに、公平な負担の枠組みを整えることも求められる。中長期的に安定的で安価な電気料金をもたらすためには、感情論ではなくデータと制度の実態に即して冷静に議論していくことが重要である。

  1. 毎日新聞, (2024)「電気代高騰、背景に「賦課金」値上げ 再エネ買い取り制度の功罪」
  2. 荒田史朗・出水優人・川久保俊・岩瀬静雄・片山隆士, (2024)「ZEH基準相当の高断熱集合住宅における冬季の室内温熱環境・省エネ性能の実測と居住者による住環境に対する評価の分析」,日本建築学会技術報告集,30(74),pp.199-204.

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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