自然エネルギーが2025年の電力需要増の全てをカバーするIEA報告書「Electricity 2025」より

トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長

2025年3月11日

in English

国際エネルギー機関(IEA)は、報告書『Electricity 2025』1の中で、今年の自然エネルギーによる世界の発電量は、1200TWh以上増加する、という注目すべき試算を公表した。これは予想される電力消費量の伸びを上回る規模である。

世界の電源別発電量の前年比変化 2019-2027

出典:国際エネルギー機関(IEA),  Electricity 2025 (2025年2月) 

自然エネルギー以外で、目に見える成長が見込まれているのは原子力発電で、フランスの原子力発電所の復帰と日本の再稼働、そして中国、インド、その他の国々で予定されている新規原子炉の運転開始が成長の要因とみている。比較的小さな増加だが、IEAは2025年の原子力発電電力量は、2006年に記録された最大のレベルに達すると予測している。

化石燃料による発電は、今後は横ばいになるとされている。

電力需要増には地域差がある。先進国では、経済成長とエネルギー効率の向上が同程度になるので、電力消費量はまったく、あるいはほとんど増加しない。需要拡大の大部分(約85%)は、中国、インド、その他の発展途上国が占めると分析している。

太陽光発電と風力発電が火力発電を打ち負かし、更には運輸部門や産業部門での化石燃料利用も代替していくため、地政学的には、化石燃料やウランの輸入に依存してきた国々が最も利益を享受できることになる。こうしたエネルギー産業の発展により、最も恩恵を受けるのは、日本とEUである。アフリカやアジアの多くの人々や国々も同様だ。

国内の化石燃料資源が豊富な国の中には、太陽光や風力エネルギーの活用に乗り出し、発電コストを低減することに成功した国もある。その中には、これまで伝統的産油国・石油輸出国であったアラブ首長国連邦やサウジアラビア、そしてアメリカも含まれている。

主な敗者はロシアである。ロシアは天然ガスと石油の2大純輸出国のひとつである。需要の減少によって燃料の価格が下がれば、収入は減少する。ロシアは原子力燃料のサプライチェーンの大部分を支配している。「独立国家共同体(CIS)」の参加国とともに、世界のウラン採掘の半分を担っている2。2019年以降、中国以外の国での原子力発電所の新規建設は、すべてロシアによるものだ3。大規模な燃料の輸出をする他の国とは異なり、彼らは新たな低コスト電源の開拓をしてこなかったのだ。

エネルギー産業が十分な速さで発展し続ければ、人類は制御不能な速度で進行する気候変動や核兵器の拡散、戦争を避け、恩恵を受けることができるかもしれない。

しかし、ロシアだけではなく、化石資源や火力発電所の民間所有者は、自然エネルギーの発展を遅らせることで、その既得権を固守することに関心が高い。

IEAは、市場競争力によっておのずと勝者が決まると考えているようだ。これは長期的には正しいと考えられるが、ロシアや化石燃料産業が強い影響力を持つ国々で見られるように、政治によってこうした展開が遅れる可能性がある。
 

外部リンク

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  • irelp
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