ロシアのウクライナ侵攻後、輸入燃料依存がもたらす経済的な痛みが改めて明らかになった。特にヨーロッパと日本は、化石燃料とウランの価格が上昇し苦境に立たされた。燃料への依存を避けることは、多くの国にとって再び優先順位の高い課題となっている。気候保護の理由もあるが、やはり問題なのは、国家の自立のためである。
ヨーロッパでは、ウランと核燃料の供給が予想以上に問題になっている。ロシアは、その同盟国であるカザフスタンやウズベキスタンとともに、世界のウラン採掘の半分以上を支配している。欧州はニジェールからウラン供給の4分の1を得ることに成功していたが1、ロシアとそのワグネル傭兵が支援する軍事クーデターが起きてからは、それも難しくなった。その結果、ウランの世界市場価格は1ポンドあたり30ドルから90ドルに上昇した。
燃料の輸入が止まれば、在庫がなくなり、暖房、電気、輸送システムが機能しなくなる。 しかし、今日の世界は20世紀よりも対応力が整っている。代替となる自然エネルギーによる発電のコストは下がり、導入は加速している。国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば2、自然エネルギーによる電力は現在、ほとんどすべての地域で最も安価な電力源となっている。ファティ・ビロルIEA事務局長は最近、自然エネルギーの普及を加速させれば、エネルギーコストは下がるだろうと結論づけた3。上昇するのではなく、である。
しかし、ヨーロッパでもアメリカでも、このロシア依存問題が別の依存の高まりを注目させ、懸念を生んでいる。 太陽光発電装置、そのための鉱物、EVなどのモーター、バッテリー、そして一部の風力発電部品までについて、中国が主要な供給源となっていることである。
燃料を輸入に依存することに比べれば、これは緊急の危機を起こす問題ではないとは言える。装置の輸入が止まっても発電は継続され、電気自動車は走り続けることができる。しかし、やはりこの依存は産業面で、また経済的に大きな問題である。
ヨーロッパでもアメリカでも、太陽光・風力発電、蓄電池といった産業を発展させ、製造工程で使われる金属や資源を供給するための大きな取り組みが始まっている。
欧州連合(EU)には、エネルギーと産業の自立を加速させるための一連の規制と政策がある。当初のFit-for-554の目標は、気候変動に関する目標であった。ロシアのウクライナ侵攻後、世界的に市場価格を下落させ、ロシアの収入を減らすために、これを加速させるREPowerEU戦略5が開始された。産業の独立性は、重要原材料法6や欧州電池同盟7のような構想に表れている。
米国が「インフレ削減法」と名付けた政策は8、低コストの自然エネルギー供給を増やしてエネルギー価格を引き下げることを目的としているが、同時に中国への依存を減らし、国内の産業発展を支援することを狙っている。
日本は欧州、米国と利害を共有している。
日本はこうした産業分野で強い実績と伝統を持っている。25年前、日本は太陽光発電技術で世界をリードしていたし、最近ではバッテリー産業が目覚ましい。化石燃料に乏しい島国として、輸入燃料への依存を減らし、中国への産業依存を避けることに成功したいという動機は、少なくともヨーロッパやアメリカと同じくらい強いはずだ。
それでも日本は、新しい技術を受け入れ、国内産業を発展させることに躊躇しているように見える。
欧米と同じように、日本もエネルギーの自立とエネルギー技術の自立を目指す強力な取組を開始すべき時だ。怠れば、日本は経済的に弱体化してしまう。