2020年上半期、世界の電力統計消費の低迷にともなう化石燃料消費の減少と自然エネルギーの拡大

トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長 / ロマン・ジスラー 自然エネルギー財団 上級研究員

2020年9月25日

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 世界的に、今年上半期の電力業界における新型コロナウィルス感染拡大にともなって最大の被害を被ったのは化石燃料であった。原子力も同様に窮地に追い込まれ、その一方で自然エネルギーは拡大を続けている。

 2020年、世界は新型コロナウィルスによるパンデミックに襲われた。社会活動への深刻な影響は広範囲に及んだ。感染拡大を抑えるための自発的ないしは強制的ロックダウンによる措置は、経済活動を低迷させ電力需要低下を招く事態となった。

 汚染物質を多く排出する石炭、ガス、石油などの化石燃料による発電の限界費用は最も高い。そのため、消費の落ち込み時には真っ先に影響が現れる。世界各国では自然エネルギーの導入は加速を続けていて、とりわけ太陽光、風力、水力発電は限界費用が低いため、これら新たな電源の設備容量は最大限に活用され、自然エネルギーによる発電は拡大を続けてきている。

 2020年1月から6月の間は、合計307TWhの需要の減少と、95TWhの自然エネルギーによる発電量の増加によって、化石燃料による発電は極めて大きな打撃を受けた。360TWhに及ぶ化石燃料による発電量の減少は(そのほとんどを石炭が占める)、化石燃料による発電量が約90%減ったことを意味し、とりわけ米国、ヨーロッパ(特にドイツ)、インドにおいて顕著だった。

 
世界全体の発電電力量の増減(2020年上半期、前年同期比)
注:「世界」は全OECD国(イスラエル除く)、アルゼンチン、ブラジル、中国、クロアチア、インド、ルーマニアを含む。合計41か国で、2019年の世界全体の発電電力量の約80% を占める。「化石燃料」は石炭、石油、ガスを含む。「自然エネルギー」は水力、バイオエネルギーと(生物由来)廃棄物、地熱、風力、太陽光及びその他自然エネルギー(潮流、波力、海洋)を含む。「その他」は「合計」に含み、生物由来ではない廃棄物、種別を特定できない電源を含むが、変化が比較的小さい(3TWh減少)ため、非表示としている。
出典:International Energy Agency, Monthly Electricity Statistics – Data up to June 2020 (2020年9月16日ダウンロード)

 
 原子力発電も同様で、特にヨーロッパ、その中でもとりわけフランスでの減少は著しかった。さらに、IAEA(国際原子力機関)によると新規原子炉建設は2基のみにとどまり、3基は運転終了が報告されている。閉鎖された原子炉は米国とフランスのものであった。

 水力による発電量は昨年の方が多かったが、自然エネルギー由来の発電量は、76TWh増加した風力と63TWh増加した太陽光のおかげで拡大を続けている。ヨーロッパ全域における発電量のおよそ半分が自然エネルギー由来となり、また米国では自然エネルギーの電力供給量は原子力より多かったばかりでなく、今年上半期において石炭を上回る電力供給を行うという目覚ましい成果だった。

 新型コロナウイルスによる影響は、自然エネルギー業界にも及んでいるにもかかわらず、拡大は継続している。ポルトガルの電力調達では最近、太陽光の価格は11.14ユーロ/MWh、つまり1.4円/kWhまでとなった。これは、自然エネルギーが補助金なしで急速に発展していること、そして結果的に化石燃料と原子力によるビジネスが成り立たなくなっていることを明示しているよい経済的動向だと言えよう。

 振り返ってみると、原子力発電の最盛期は2006年、石炭火力は2013年、化石燃料全般は2018年であった。2020年にこれらの記録が塗り替えられることはないと予測される。目に見える今日の経済状況が物語るのは、これら過去の記録は永久に過去のものであり続けるということだ。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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