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世界の革新的な脱炭素政策:米国カリフォルニア州

ロマン・ジスラー 自然エネルギー財団 上級研究員

2020年8月17日

in English

カリフォルニア州は経済の領域で世界をけん引するだけではない。太陽光発電を中心に自然エネルギーの導入を意欲的に進めている点でも注目すべきである。2045年までにクリーンエネルギー100%を目指して、さまざまな政策を展開している。

<最新情報の追加 >   2020年8月中旬にカリフォルニア州の一部の地域でブラックアウト(停電)が発生した。電力の需要と供給のミスマッチによるものだが、本コラムの後半に「なぜブラックアウトが起きたか」を追加して当時の状況や原因を解説する(8月24日更新)。

自然エネルギーの比率を2030年までに60%へ

 カリフォルニア州政府は州内における電力小売の一定割合を自然エネルギーで供給することを義務付けるRPS(Renewables Portfolio Standard、自然エネルギー利用割合基準)を2018年に改定した。従来の基準では2030年までに50%だったが、それを60%へ引き上げた。さらに2045年までにクリーンエネルギー100%を達成することを新たに付け加えた。クリーンエネルギーには大型水力(RPSの対象外)、原子力、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage、二酸化炭素回収・貯蔵)付きの火力発電も含む。1

 脱炭素に向けた進捗は自然エネルギーのおかげで順調である。2018年にはすべての電力小売事業者がRPSの中間目標である29%以上の電力を対象電源から供給できた。カリフォルニア州の電力の大半を供給する民間電力会社3社では、Pacific Gas and Electric(PG&E)が39%、Southern California Edison(SCE)が36%、San Diego Gas & Electric(SDG&E)が44%に達している。2

 クリーンエネルギーの中でも、太陽光発電が過去10年間に最も目ざましく拡大した。2010年にはほぼ0%の状態だったが、2019年には州全体の発電量の約20%まで増加している(図)。この急成長は州政府による政策支援とともに、太陽光発電のコスト競争力がもたらした。新規のプロジェクトでは1MWh(メガワット時)あたり35~40米ドルが標準的な水準である(1キロワット時あたり4円前後)。3

図:カリフォルニア州のクリーンエネルギーによる発電比率

注: 電源の対象はRPSやクリーンエネルギーの要件と必ずしも一致しない。「太陽光」には太陽光発電と太陽熱発電の両方を含むが、実質的には太陽光発電である。
出典:米国エネルギー情報局(2010~2017年はElectric Power Annual 2011-2018、2018~2019年は Electric Power Monthly with Data for December 2019から引用)


 カリフォルニア州は今後さらに積極的に太陽光発電を促進する計画である。その1つが、州全体を対象に2018年に導入した屋根置き型太陽光発電設備の設置義務である。もともと2016年に4つの都市(ランキャスター市、サンフランシスコ市、サンタモニカ市、セバストポル市)が始めた取り組みである。42020年以降の新築一戸建て住宅は太陽光発電設備の設置が義務付けられた。5太陽光発電の普及を大きく前進させるものになる。6

より多くの自然エネルギーを統合する送電網

 太陽光発電のような変動型の自然エネルギーを常に高い割合で電力系統へ統合することがカリフォルニア州でも課題である。2010年代の前半の時点で、カリフォルニア州の主要な電力系統運用機関であるCAISO(California Independent System Operator、カリフォルニア独立系統運用機関)は、ある問題を予想していた。需要のピークに対して変動型の自然エネルギーの発電量の減少によってインバランス(需給ギャップ)が発生する状況を、1日を通した発電量を示すグラフの形状をもとに「ダックカーブ(アヒルの形をした曲線)」と名付けた。7

 この課題に対応するため、カリフォルニア州では次のような効果的で革新的な施策を実行した。

-  市場統合:(1)地域連系の拡大、(2)CAISOの前日市場における入札下限価格の引き下げ、が重要な施策である。(1)に関してはWestern Energy Imbalance Market(EIM)を2014年に創設した。EIMはリアルタイムの卸電力取引市場で、米国西部では初めての試みである。創設以降も対象の地域を拡大して、市場を運営するCAISOを含む21の需給調整地域で構成する(地図)。8 米国の西部には14州の全域あるいは一部区域にカナダとメキシコの一部を含む広域の電力系統を監視するWestern Electricity Coordinating Council(WECC)がある。EMIは2022年にWECCの対象地域の発電容量の80%以上を占める見込みである。広い範囲に分散する多数の電源を最適に組み合わせることで、変動型の自然エネルギーを効率的に統合するのと同時に、送電網のどの部分がボトルネックになっているかを明らかにして今後の投資に適した場所を示すことができる。9(2)に関しては、CAISOが過去10年間に前日市場の入札下限価格を1MWh(メガワット時=1000キロワット時)あたりマイナス30米ドルからマイナス150米ドルに引き下げた。変動型の自然エネルギーをより多くリアルタイムに入札させるためである。10

地図:Western Energy Imbalance Market(EIM)へ参加中・参加予定の事業者
出典:Western Energy Imbalance Market(2020年7月7日時点)

- 太陽光発電のインセンティブ受給要件:需要家が太陽光発電に投資してインセンティブを受けるためには3つの要件を満たす必要がある。(1)高品質の太陽光発電システムで最高の性能である、(2)需要がピークの時に最適なシステム性能を発揮する(例えば太陽光発電設備は空調のニーズがピークになる時に最適な性能を発揮できる場所に設置)、(3)太陽光発電システムを設置する新築・既築の住居や商業ビルにおいて適切なエネルギー効率の向上がある(新築の場合には現行の標準を上回り、既築の場合には効率を改善する)。これらの要件の特徴は、太陽光発電の純粋な性能にとどまらず、発電した電力の価値(いつ・どこで最も必要とされるか)を加えた点である。さらに前提条件としてエネルギー効率化の役割を明確にした点も注目に値する。11

- 電力貯蔵:2013年にカリフォルニア州の主要な民間電力会社3社に対して、2022年までに1325MW(メガワット)の電力貯蔵設備を調達することを義務付けた(設置は2024年末まで)。送電網、配電網、需要家側、それぞれの目標値も設定した。すでに3社は2018年8月の時点で約1500MWを調達完了もしくは調達承認待ちの状態にある。12

- 電気自動車のオフピーク充電料金:民間電力会社の1つであるSDG&Eでは、夜間や週末・祝日を中心にオフピークの時間帯を対象にした料金プランを導入している。13 さらに先進的なのがパイロットプログラムとして実施中のPower Your Driveである。送電網の負荷を軽減できる時間帯、例えば太陽光発電が過剰に供給できる時間帯に、より低価格で電力を提供する。14 このプログラムの契約件数は定数に達していて、効果があることを示している。

 これらの革新的な施策の組み合わせにより、カリフォルニア州では変動型の自然エネルギーを高い比率で送電網に統合できることを実証した。実際に出力抑制の比率を低く抑えることができている。CAISOのエリア内で2019年に実施した出力抑制は、太陽光と風力の合計でわずか2%だった。15

2045年のクリーンエネルギー100%に向けて

 すでに2030年のRPSの目標(大型水力を除く自然エネルギー比率60%)は達成可能な状態にある。特に民間電力会社3社は向こう10年間の想定必要量の大部分(およそ2/3)の調達を完了している。

 2045年にクリーンエネルギー100%の目標に対しては、大型水力を加える点が大きい。大型水力は通常カリフォルニア州の発電量全体の10~20%を占める。水力の発電量の変動は影響が大きく、降水量が少ない年には発電量の不足をもたらす可能性がある。とはいえ多様でバランスのとれた自然エネルギーを組み合わせれば、他地域からの融通を加えることで対応できる。州外からの自然エネルギーであっても、数値目標に加えることは認められている。カリフォルニア州の周辺には、自然エネルギーの発電比率の高い州がいくつかある。水力発電が豊富なオレゴン州では2019年に62%、ワシントン州では72%に達している。さらにコロラド州、ネバダ州、ニューメキシコ州のように2045年あるいは2050年にクリーンエネルギー100%の目標を掲げる州があり、いずれの州においても原子力発電所は稼働しておらず建設計画もない。16

 一方でクリーンエネルギーの対象になる原子力とCCS付きの火力発電が果たす役割は大きくない。カリフォルニア州では現在2基の原子力発電設備(Diablo Canyon 1・2号機)があるが、2024年と2025年に廃止することが決まっている。今後の新設の予定もない。CCS付きの火力発電については経済性が問われている。

 これらの技術に代わって、蓄電池がいっそう大きな役割を果たしていく。それを象徴する事例が、2019年に公営電力会社のLos Angeles Department of Water and Power(LADWP)が締結した電力購入契約である。400MWの太陽光発電と1200MWhの電力貯蔵設備を組み合わせたプロジェクトを40米ドル/MWh(約4円/kWh)を切る価格で契約した。17

なぜブラックアウトが起きたか

 2020年8月14日から数日間、カリフォルニア州の一部の地域でブラックアウト(停電)が発生した。ただし連続ではなく1日あたり数時間程度である。18いくつかの要因が組み合わさったもので、原因の分析には時間がかかるとみられる。現時点で明らかになっている事実は次のとおりである。19

 このブラックアウトは電力の需要が供給を上回ったために発生した。記録的な猛暑によって空調の利用が増えたことによる。加えて利用可能な電源が通常よりも少なく、供給量が足りなくなってしまった。20

 需要に関しては、電力会社の予測値が低すぎたようである。正確な情報が発信されていれば、デマンドレスポンス(需要抑制)を効果的に実施することができたと考えられる。21

 供給に関しては、2カ所のガス火力発電所が必要な電力を供給できなかった。さらに州内と州外の代替手段も限られていた。 22州内では、競争力のある自然エネルギーへの移行に伴って、旧来型の発電所で利用可能なものが減少していた。今回のようなブラックアウトを繰り返さないためには、洋上風力発電や蓄電池を含めて自然エネルギーをより多様な組み合わせで開発することが必要で、その投資効果も明らかになったと言える。

 州外からの電力供給の点では、太平洋沿岸の北西部の州から水力発電の電力を可能な限り調達した(送電容量を最大限に活用)。しかし南西部のアリゾナ州とネバダ州では同様に電力の需給状況がひっ迫していたために、カリフォルニア州に電力を融通することはむずしかった。23

カリフォルニア州の電力供給体制

 カリフォルニア州では州政府がRPSの目標値と対象を設定する。RPSの運用は規則の管理を含めて、民間電力会社に対してはCalifornia Public Utilities Commission(カリフォルニア州公益事業委員会)、公営電力会社に対してはCalifornia Energy Commission(カリフォルニア州エネルギー委員会)が対応する。

 州内にはさまざまなタイプの電力会社が共存しているが、中心になるのは民間電力会社と公営電力会社の2つである。前者は株式を発行して投資家が所有している。事業構造は垂直統合型ではなく、送電事業には参入しない(CAISOが担当)。後者は自治体が運営して、垂直統合型の事業を実施している。

 電力市場を運営するのはCAISOや公営電力会社のほか、州外の民間電力会社(NV Energy、PacifiCorpなど)が少数ある。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギーで豊かな日本を創ろう!アクション
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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