世界の電化目標35%への日本の積極的な関与と賛同を

2026年10月9日

 これまでEUや米国の一部の州等で電化政策が推進されてきたが、中東危機による化石燃料リスクの顕在化を受け、電化の動きが急速に世界的な広がりを見せようとしている。日本は、世界の中で電化率が比較的高く、熱の電化に必要な優れたヒートポンプ技術を有している。まさに、世界の電化をリードできる位置にあり、日本がこうした世界的な動きに積極的に関与すべきことを提言する。

1 世界の電化目標35%に向けた提案

日本政府は、「世界全体の電化率を2035年までに35%」に積極的に関与・賛同するとともに、日本の優れたヒートポンプ技術によって世界の電化目標に貢献することを約束し、日本の高い電化率目標を掲げる。

 2026年6月、COP31に向けて議長国トルコが、世界全体の電化率を「現在の20%強から2035年までに35%に引き上げること」を提案した1。これを受けて、世界では電化の推進に向けた議論が始まっており、今後、電化市場の拡大が期待される。また、こうした動きの背景には、中東危機を受け、化石燃料依存のリスクが改めて顕在化したことが指摘されている。

 日本は、世界の中で電化率が比較的高く、熱利用における電化を推進するための優れたヒートポンプ技術を有している。まさに、世界の電化目標をリードできる位置にあるといえる。多くの国・地域が電化目標に賛同すれば、世界規模で電化市場が拡大し、日本のヒートポンプ技術を活用して世界の電化率向上に貢献することができる。また、日本の最終エネルギー消費の約半分は、熱として利用されており、熱利用の電化は、化石燃料依存のリスクを低減することもできる。

 そこで、日本政府は、COP31に向けて電化目標35%に積極的に関与・賛同するとともに、高い電化率目標を掲げ、目標を実現する電化政策を打ち出すことで、産業競争力を強化して、日本のヒートポンプ技術で世界の電化に貢献していくこと提言する。

2 主要国の電化率

 IEAのデータによる2025年の日本の電化率は36%と、主要な国の電化率と比較しても高い水準にあることがわかる2。2000年以降の電化率の推移をみると、韓国、中国が急速に電化率を向上させて、現状では日本と同水準になっている。その一方で、欧米では電化率の伸びは見られない3。日本は、すでに世界の電化目標35%を超える水準にあり、世界の電化率向上の牽引役としての役割が期待される。

図1:主要国(2025年)及び 世界・EU27(2023年)の電化率

注: IEAの各国データは2025年、IRENAの世界およびEU27平均は2023年。非エネルギー用途は除外。
出典:IEA “Share of electricity in total final energy consumption and weighted average electricity/gas  price ratio by country, 2025” と
IRENA “Transitioning Away From Fossil Fuels” (2026) をもとに自然エネルギー財団作成
 

図2:2000年-2024年の電化率の変化

出典:IEA “Economy-wide electrification rate in selected regions 2000-2024” (2026) をもとに自然エネルギー財団作成

 また、IEAの特別レポート「Electrification」の主要地域別の分析では、現時点でもコスト競争力のある電化技術を最大限活用した場合、日本・韓国地域の電化率は世界全体の電化目標35%を大きく上回り、世界の電化を牽引できるポテンシャルを有していることを示している4。

図3:主要地域別競争力のある電化ポテンシャル

出典:IEA(2026)特別レポート「Electrification」2026/09/22をもとに自然エネルギー財団作成

3 世界の電化政策等の動向

 世界では、スペイン、フランス、中国、EUが電化目標・計画を定めている。特にEUやフランスの電化政策では、その背景に中東危機によって改めて化石燃料リスクが顕在化したことを指摘している5。

 また、COP31議長国の電化目標提案にあわせて、欧州委員会、COP議長国等が、この電化目標35%に向けた国際的なイニシアチブ「Electrify Now」を立ち上げた6。これに加え、欧州委員会が「Electrify Now」政府連合を立上げ、現時点でアルメニア、オーストラリア、ブラジル、カナダ、エチオピア、ドイツ、ヨルダン、ケニア、フィリピン、韓国、シンガポール、トルコ、英国、ウルグアイが参画している(2026/9/24欧州委ウェブサイトで確認)7。

表1:COP31と世界の電化政策

4 電化の意義

 電化とは、化石燃料の燃焼によって得られる熱や動力を、電力で作り出すことである。ヒートポンプをはじめとする電動機器は、一般に燃焼系機器に比べエネルギー効率が高いため、電力が化石燃料由来であっても化石燃料の消費量を削減することができる13。自然エネルギー電力の割合が高くなれば、さらに削減効果は高くなり、より脱炭素化を推進することができる。また自然エネルギーは国産なので、エネルギー自給率も向上する。更に、コスト削減効果について、住宅のガス給湯器をヒートポンプ給湯機に入れ替える場合を試算したところ、設備の導入時の費用はガス給湯器より高くなるが、エネルギー効率が高いため電気代が安くなり、導入費用を考慮してもコストメリットがあるという結果となった14。こうしたことから、電化を進めていくことは次のような意義があるといえる。

【電化の意義】

  • 化石燃料の消費を削減 
  • エネルギー安全保障、エネルギー自給率の向上に貢献 
  • 化石燃料価格の変動リスクを低減し、エネルギーコストなど物価への影響を軽減 
  • 熱や動力を脱炭素化 
  • 自然エネルギー電力の効果を熱や動力に反映

5 日本の最終エネルギー消費における熱利用と電化の課題

 資源エネルギー庁が公表する日本の最終エネルギー消費における電力の割合(電化率)は、28%(2024年度)15となっている。図1のIEAの電化率と異なるのは、それぞれの電化率の算定方法に違いがあるためである。いずれにしても、日本の電化率は比較的高い水準にあるといえる。なお、資源エネルギー庁が公表する最終エネルギー消費には非エネルギー利用分(原料分)が含まれており、非エネルギー分を除くと電化率は31%16になる。

 最終エネルギー消費を熱・動力等の利用形態別にみると、熱として利用された割合は46%となる(電化された熱に関する公表値がないため、自然エネルギー財団において推計17)。最終エネルギー消費の半分弱が、熱として利用されていることになり、このうち、電化された熱は9%、化石燃料の燃焼による熱が37%で、熱の約8割(約4,200PJ)が化石燃料の燃焼による熱である。この化石燃料の燃焼による熱のうち約8割は200℃未満の中低温18で、ヒートポンプが対応できる温度帯なので、この部分の電化を進めていく必要がある。

 一方で、ヒートポンプのさらなる普及拡大には、さまざまな課題があり、その主なものとして以下が挙げられる。

  • 導入時の高い設備投資費用 
  • 設備の設置スペース 
  • 化石燃料系設備へのロックイン(固定化) 
  • 産業用ヒートポンプのエンジニアリング人材・体制の不足

 なお、化石燃料系設備へのロックインは、エネルギー事業者等による囲い込みや故障時の即時対応に加え、既存熱源を前提に経済的技術的な十分な検討がない中で熱源を選択すること等により生じているといえる。

6 予見性を高め積極的な投資行動を促進

 世界の電化率の状況でみたように、日本の電化率は比較的高い水準にあるが、まだまだ電化を進めていく余地は十分にある。その一方で、上述の通りさまざまな課題があり、化石燃料系熱源からの転換需要は乏しく、ヒートポンプの供給サイドの多くは、既存の更新需要への対応が主なものとなっている。このため、化石燃料系からの転換に向けた積極的な投資や体制づくりに動けない状況にある。また、熱を利用する需要サイドにも、電化を進める積極的な動機がなく、電化の障壁についてソリューションが提供される機会も多くない。

 今回の提言では主に熱の電化を対象にしているが、日本の電化にとってもう一つの大きな課題は動力の電化である。特に日本の電気自動車普及率は世界に比して遅れている。乗用車について、2025年の新車販売に占めるEV(BEV+PHEV)の比率をみると、日本では3%未満にとどまっているが、世界平均は約25%、中国は53%、EUは27%、米国は10%であり、日本との差は大きい19。

 日本の電化を加速していくには、電化の意義と目標の共有が重要であり、日本の高い電化率目標とそれを実現する明確な電化政策が不可欠である。とりわけヒートポンプの導入目標とそれを実現するインセンティブによって電化需要を喚起し、企業の積極的な投資行動を促す予見性を高め、産業競争力の強化につなげていくことが重要である。
 

  1. 国連気候変動ウェブサイト「 COP31 Presidency announces new targets on global electrification, cutting waste, resilient cities; press conference transcript 2026/06/09」アクセス2026/09/18、自然エネルギー財団 カロリン・イプトナー「2026年、加速する電化:EUの電化アクションプランと日本への示唆 2026/08/26」
  2. IEA(2026)「Share of electricity in total final energy consumption and weighted average electricity/gas price ratio by country, 2025」IEA、パリ:CC BY 4.0 アクセス2026/09/25、IRENA「Transitioning away from fossil fuels: A roadmap based on renewables, electrification and grid enhancement 2026/05」アクセス2026/09/25
  3. IEA(2026)「Economy-wide electrification rate in selected regions, 2000-2024」 IEA、パリ、ライセンス:CC BY 4.0 アクセス2026/09/25
  4. IEA(2026)「Electrification Special report」 IEA、パリ、ライセンス:CC BY 4.0 アクセス2026/09/25
  5. フランス政府ウェブサイト 「 Présentation du plan d’électrification des usages 2026/04/23」アクセス2026/09/19、欧州委員会ウェブサイトEUR-Lex「ELECTRIFICATION ACTION PLAN 2026/07/17」アクセス206/09/19
  6. 欧州委員会ウェブサイト「 Governments' Joint Statement on the launch of Electrify Now 2026/06/23」アクセス2026/09/19、COP31TURKiYE ANTALYAウェブサイト 「 Governments launch ‘Electrify Now’ to accelerate the electrification of the global economy 」2026/09/24 アクセス2026/06/23
  7. 欧州委員会ウェブサイト「Electrify Now – a global initiative」アクセス2026/09/24
  8. スペイン生態系移行・人口問題省ウェブサイト「El Gobierno aprueba la actualización del Plan Nacional Integrado de Energía y Clima 2023-2030 2024/09/2」アクセス2026/09/18
  9. フランス政府ウェブサイト「 PPE 3 : programmation pluriannuelle de l'énergie」 「 Présentation du plan d’électrification des usages」 「PROGRAMMATION PLURIANNUELLE DE L’ÉNERGIE(2026-2035)」アクセス2026/09/19
  10. Carbon Brief ウェブサイト「Six charts show how clean power was world’s largest source of new energy in 2025 (2026/06/26)」アクセス2026/09/24
  11. 欧州委員会ウェブサイトEUR-Lex「ELECTRIFICATION ACTION PLAN 2026/07/17」アクセス206/09/19、自然エネルギー財団カロリン・イプトナー「2026年、加速する電化:EUの電化アクションプランと日本への示唆 2026/08/26」
  12. COP31TURKiYE ANTALYAウェブサイト「 COP31 35-by-35 Global Electrification Pledge 2026/09/21」アクセス2026/09/24
  13. ヒートポンプは、一般にエネルギー効率が3以上で、電力の発電効率を40%とすると、化石燃料2.5で、3の熱を作り出すことができる。一方、ボイラーの効率は1未満であり、エネルギー効率が0.9とすると、化石燃料3.3で、3の熱を作る。ヒートポンプの方が同じ熱3を作り出すために必要な化石燃料が少ない。
  14. 電力・ガス料金は、電力・ガス取引監視等委員会が公表する電力取引報(2025年度東京エリア)、ガス取引報(2025年度関東エリア)を使用(再生可能エネルギー発電促進賦課金を含む)。設備費用は、ウェブサイトに公表されているヒートポンプ給湯機、ガス給湯器の設置費用(工事費込み)を2026年7月に調査。エネルギー効率は、トップランナー基準を参考に設定。
  15. 資源エネルギー庁ウェブサイト「エネルギー動向(2026年度)第1章第1節 3.エネルギー供給の動向【第11-3-3】電力化率の推移」アクセス2026/09/19
  16. 資源エネルギー庁ウェブサイト「総合エネルギー統計(エネルギーバランス表)2024年度」より自然エネルギー財団算定
  17. 資源エネルギー庁ウェブサイト 「総合エネルギー統計 (エネルギーバランス表)2024年度」 、「エネルギー動向(2026年版)第1章第2節部門別エネルギー消費の動向」、経済産業省ウェブサイト「総合資源エネルギー調査会 次世代エネルギー需給構造小委2022.4.14 (資料1)クリーンエネルギー戦略の策定に向けた検討①(参考)産業部門における熱利用の特徴」等より推計
  18. 上記17. の推計において、家庭部門・業務部門において利用される熱のうちの化石燃料の燃焼による熱および産業部門において利用される熱のうち200℃未満の温度帯が占める割合を約4割と想定した熱により推計(産業部門については、「総合エネルギー統計(エネルギーバランス表)2024年度」における製造業の最終エネルギー消費の「熱」消費量(蒸気)等を考慮)
  19. IEA(2026)「Global EV Outlook 2026, Trends in electric cars」 IEA、パリ ライセンス:CC BY 4.0 アクセス2026/10/05


<関連リンク>
特設ページ 電化・熱の脱炭素化

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
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