公益財団法人 自然エネルギー財団と、ドイツのシンクタンク、アゴラ・エナギーヴェンデ(Agora Energiewende)およびフィンランド・ラッペンランタ工科大学(LUT)は、この度、研究レポート「日本の気候中立への再生可能な道筋:2050年までにエネルギーシステムにおける排出ゼロの達成を目指す(Renewable Pathways to Climate-neutral Japan: Reaching Zero Emissions by 2050 in the Energy System)」を公表いたしました(2021年6月28日改訂)。
なお、自然エネルギー財団は、この共同研究を踏まえて、財団としての脱炭素戦略・政策提言を取りまとめ、同時に公表いたします。
エネルギー・トランジション・モデルによる解析を担当したLUTは、この種のモデリングとしては初めて、日本のエネルギーシステムを全分野・地域にわたり一時間単位で解析しました。LUTのクリスチャン・ブレイヤー教授は、それにより「日本のエネルギーシステムに大量の自然エネルギーを導入・統合していくために必要となる全ての柔軟性、技術を的確に把握することができた。」と述べています。
本研究レポートでは、日本において自然エネルギー100%ベースとしたゼロ・カーボン・エネルギーシステムが、大きなコスト増なく供給できることを明らかにし、自然エネルギーの導入と電化に向けた3段階のロードマップを示しています。
1. <第1段階> 電力部門において、主に自然エネルギーのシェアを少なくとも40%にすることにより、温室効果ガス排出量を2030年までに2010年比で45%削減。自然エネルギー電力の展開は、新たな自然エネルギーへの投資を推進する総合政策パッケージをもとに実施。その結果、フェーズアウト計画に基づき2030年までに全廃される石炭火力に代わって、自然エネルギーの普及が進む。
2. <第2段階> 2045年までに排出量を2010年比で少なくとも90%削減する必要がある。この段階では、自然エネルギーの拡大が続き、電化に拍車がかかる。熱部門は、ヒートポンプによって電化が進み、道路では、電気自動車が普及する。同時に、建築や自動車へのエネルギー基準等の政策が強化され、エネルギー効率が確実に向上する。
3. <最終段階> グリーン水素・グリーン合成燃料によって、主に産業用の高温熱利用から生じる残余のカーボン排出を2050年までに削減。ただし、現在の化石燃料をベースとしたすべてのプロセスが、単純にグリーン水素に移行するわけではない。むしろ多くの場合、コストの面から電化が推奨され、水素がその不足分を補うことになる。したがって今日でも電化が可能な運輸、空調、産業における中低温熱利用では直ちに、化石燃料に依存しない自然エネルギーによる電化を可能な限り優先し、高温熱利用についても電化を検討する必要がある。
グリーン水素は自然エネルギー電力由来となるため、国内で大量のグリーン水素を製造するには、国内の風力タービンやソーラーパネルを大幅に増設する必要がある。そのため、本ロードマップでは、グリーン水素の一部を輸入する想定をしている。
現在日本で議論されている選択肢の1つに原子力があります。本研究レポートでは、長期的な脱炭素化の目標を低コストで実現するには、原子力は不要であることを明らかにしています。早くも2025年には、自然エネルギーが新規および運転期間が延長した原子力発電所の発電コストよりも、安価になる見通しがたっているのです。
ロードマップで示されている3段階には、重複する部分があります。例えば、産業施設の耐用年数は数十年であるため、2030年以前に建設される生産プラントは、最終的に排出ゼロを達成できるように「改修可能な施設」としておく必要があります。
日本は、直ちに行動を起こす必要があります。第6次エネルギー基本計画や、効果的なカーボンプライシング制度などの具体的な規制措置に関する議論が始まりましたが、この議論は日本がどのように2030年の中間目標を達成し、2050年までに気候中立を実現できるのかを見極める上で重要です。2030年までに温室効果ガス排出量を45%削減し、自然エネルギー電力による発電比率を少なくとも40%以上に引き上げるという部門別中間目標を強化することによって、日本は可及的速やかに気候行動の強化を推し進めなければなりません。特に日本のグリーン成長戦略には、経済成長の包括的な活性化プログラムと合わせて、自然エネルギーに基づく気候中立を目指す経済への移行が盛り込まれなければなりません。
【西田裕子 自然エネルギー財団 シニアマネージャー コメント】
「自然エネルギーの導入を加速することが2050年までに気候ニュートラルを達成するために必要不可欠です。2050年自然エネルギー100%は、日本のビジョンであるだけでなく、経済的にも、技術的にも実現可能なのです。」
【パトリック・グライヒェン アゴラ・エナギーヴェンデンデ 所長 コメント】
「世界の技術大国である日本は、自然エネルギーをベースにしたエネルギーシステムへの道を必ずや切り開くことができるはずです。同時に経済大国として、気候中立を推進し世界を牽引するリーダーとなる責務があります。」
■アゴラ・エナギーヴェンデについて
ドイツのアゴラ・エナギーヴェンデは、エネルギー政策に関わるステークホルダーとの対話を中心とするシンクタンク、政策研究所。ドイツ、ヨーロッパ、そして世界中のエネルギー転換を成功させるために、科学的な根拠に基づいた、政策的に可能なアプローチを行うことを旨としています。公共政策・市民組織・企業・学術関係者と協働し、エネルギー転換とその課題や政策取り組みについて、共通理解を築くことを目的としています。アゴラ・エナギーヴェンデは、メルカトル財団と欧州気候基金の助成を受けています。自然エネルギー財団とは2016年より連携を開始し、エネルギー転換に関する専門知識や情報交換の促進を図っています。
www.agora-energiewende.org
■ラッペンランタ工科大学(LUT)について
フィンランドの国立拠点大学のうちの一つ。テクノロジーとビジネスの専門知識を備えた新しいソリューションを提供し、社会と企業の持続可能な再生支援を視している。
ブレア教授が開発したLUTエネルギーシステム・トランジションモデルを用いて、ブレア教授のチームは、欧州をはじめ、世界各地のエネルギーシステムの研究解析を多数実施、発表している。
www.lut.fi/web/en
なお、自然エネルギー財団は、この共同研究を踏まえて、財団としての脱炭素戦略・政策提言を取りまとめ、同時に公表いたします。
エネルギー・トランジション・モデルによる解析を担当したLUTは、この種のモデリングとしては初めて、日本のエネルギーシステムを全分野・地域にわたり一時間単位で解析しました。LUTのクリスチャン・ブレイヤー教授は、それにより「日本のエネルギーシステムに大量の自然エネルギーを導入・統合していくために必要となる全ての柔軟性、技術を的確に把握することができた。」と述べています。
本研究レポートでは、日本において自然エネルギー100%ベースとしたゼロ・カーボン・エネルギーシステムが、大きなコスト増なく供給できることを明らかにし、自然エネルギーの導入と電化に向けた3段階のロードマップを示しています。
レポート概要
自然エネルギーの導入と電化に向けた3段階のロードマップ:1. <第1段階> 電力部門において、主に自然エネルギーのシェアを少なくとも40%にすることにより、温室効果ガス排出量を2030年までに2010年比で45%削減。自然エネルギー電力の展開は、新たな自然エネルギーへの投資を推進する総合政策パッケージをもとに実施。その結果、フェーズアウト計画に基づき2030年までに全廃される石炭火力に代わって、自然エネルギーの普及が進む。
2. <第2段階> 2045年までに排出量を2010年比で少なくとも90%削減する必要がある。この段階では、自然エネルギーの拡大が続き、電化に拍車がかかる。熱部門は、ヒートポンプによって電化が進み、道路では、電気自動車が普及する。同時に、建築や自動車へのエネルギー基準等の政策が強化され、エネルギー効率が確実に向上する。
3. <最終段階> グリーン水素・グリーン合成燃料によって、主に産業用の高温熱利用から生じる残余のカーボン排出を2050年までに削減。ただし、現在の化石燃料をベースとしたすべてのプロセスが、単純にグリーン水素に移行するわけではない。むしろ多くの場合、コストの面から電化が推奨され、水素がその不足分を補うことになる。したがって今日でも電化が可能な運輸、空調、産業における中低温熱利用では直ちに、化石燃料に依存しない自然エネルギーによる電化を可能な限り優先し、高温熱利用についても電化を検討する必要がある。
グリーン水素は自然エネルギー電力由来となるため、国内で大量のグリーン水素を製造するには、国内の風力タービンやソーラーパネルを大幅に増設する必要がある。そのため、本ロードマップでは、グリーン水素の一部を輸入する想定をしている。
現在日本で議論されている選択肢の1つに原子力があります。本研究レポートでは、長期的な脱炭素化の目標を低コストで実現するには、原子力は不要であることを明らかにしています。早くも2025年には、自然エネルギーが新規および運転期間が延長した原子力発電所の発電コストよりも、安価になる見通しがたっているのです。
ロードマップで示されている3段階には、重複する部分があります。例えば、産業施設の耐用年数は数十年であるため、2030年以前に建設される生産プラントは、最終的に排出ゼロを達成できるように「改修可能な施設」としておく必要があります。
日本は、直ちに行動を起こす必要があります。第6次エネルギー基本計画や、効果的なカーボンプライシング制度などの具体的な規制措置に関する議論が始まりましたが、この議論は日本がどのように2030年の中間目標を達成し、2050年までに気候中立を実現できるのかを見極める上で重要です。2030年までに温室効果ガス排出量を45%削減し、自然エネルギー電力による発電比率を少なくとも40%以上に引き上げるという部門別中間目標を強化することによって、日本は可及的速やかに気候行動の強化を推し進めなければなりません。特に日本のグリーン成長戦略には、経済成長の包括的な活性化プログラムと合わせて、自然エネルギーに基づく気候中立を目指す経済への移行が盛り込まれなければなりません。
【西田裕子 自然エネルギー財団 シニアマネージャー コメント】
「自然エネルギーの導入を加速することが2050年までに気候ニュートラルを達成するために必要不可欠です。2050年自然エネルギー100%は、日本のビジョンであるだけでなく、経済的にも、技術的にも実現可能なのです。」
【パトリック・グライヒェン アゴラ・エナギーヴェンデンデ 所長 コメント】
「世界の技術大国である日本は、自然エネルギーをベースにしたエネルギーシステムへの道を必ずや切り開くことができるはずです。同時に経済大国として、気候中立を推進し世界を牽引するリーダーとなる責務があります。」
■アゴラ・エナギーヴェンデについて
ドイツのアゴラ・エナギーヴェンデは、エネルギー政策に関わるステークホルダーとの対話を中心とするシンクタンク、政策研究所。ドイツ、ヨーロッパ、そして世界中のエネルギー転換を成功させるために、科学的な根拠に基づいた、政策的に可能なアプローチを行うことを旨としています。公共政策・市民組織・企業・学術関係者と協働し、エネルギー転換とその課題や政策取り組みについて、共通理解を築くことを目的としています。アゴラ・エナギーヴェンデは、メルカトル財団と欧州気候基金の助成を受けています。自然エネルギー財団とは2016年より連携を開始し、エネルギー転換に関する専門知識や情報交換の促進を図っています。
www.agora-energiewende.org
■ラッペンランタ工科大学(LUT)について
フィンランドの国立拠点大学のうちの一つ。テクノロジーとビジネスの専門知識を備えた新しいソリューションを提供し、社会と企業の持続可能な再生支援を視している。
ブレア教授が開発したLUTエネルギーシステム・トランジションモデルを用いて、ブレア教授のチームは、欧州をはじめ、世界各地のエネルギーシステムの研究解析を多数実施、発表している。
www.lut.fi/web/en